丁寧なつくりが安心の鉄のフライパン。簡単、かつ正しいお手入れで一生ものに。
丁寧なつくりとシンプルで無駄のないデザインが目を引く羽生直記さんの鉄のフライパン。ビスや継ぎ目、持ち手の細部に至るまで細心の注意をはらって仕上げられており、間近で見るとその丁寧さがよくわかります。上の画像の平ハンドルのフライパンはろばの家オリジナルの別注モデル。この受注会でのみオーダーいただけます。
毎回受注会で質問されるのですが、「鉄のフライパンはくっつく」「お手入れが大変そう」というのが鉄のフライパンへの2大心配要素のようです。
ひとつ目のくっつく、は簡単。たいていの場合、熱し方が足りないのです。油やバターを入れる前によくよくフライパンを熱する。これが最大のポイントです。皆さんが考える以上に熱する必要があると認識してください。油を入れてから熱すると油の温度が先に上がりすぎて上手に調理できません。これさえ気を付ければ使い始めでもまずくっつきません。
二つ目のお手入れも、コツさえ押さえればむしろ油が落ちにくいテフロンよりずっとシンプル。確かに昔は「鉄は錆止めのために使用する度に油を塗っておかなければならない」と言われていたように思います。でも実際にはわたしたちも羽生さんご本人も一度も油を塗って保管したことがありません。第一、油を塗って放置すれば油は酸化していやな臭いがするでしょうしホコリもつきます。あまり衛生的なお手入れ法と思えません。
鉄のフライパンは、以下のポイントさえ守れば錆びたり表面に傷がついたりせず、長く、それこそ一生使い続けられる優秀な道具です。待って待って手にしていただいた方も、これから購入を検討されている方もこれだけは知っておいていただきたい。
1、使ったら熱いうちにお湯と束子(ササラでも可)で洗い、空焚きして完全に水分を飛ばす。洗剤を使う場合は中性洗剤を使用。熱々の状態で冷たい水やステンレスに触れると温度差で底がゆがむので注意してくださいね。
2、水気のある場所、湿度の高い場所に長時間平置きしない(吊り下げて保管するのがベスト)。
3、焦げ付いてしまった時は無理にこすらず、水を張って火にかけ、焦げが柔らかくなったら熱いうちに束子や木べらで優しくこすって落とす。金束子やクレンザーなどは鉄の表面を傷めるので使わない。
4、酸のある食材を長時間入れっぱなしにしない。
以上です。とにかく「使ったらすぐ洗う→火にかけて水分を飛ばす」これが一番のポイントです。もちろん、食べている間や調理途中などしばらくの間放っておくくらいは大丈夫です。冷めてしまうと油汚れが取れにくくなるだけなので、もう一度温めてから洗えば問題ありません。
そして、これも大事なことですが束子はゴシゴシ力を入れてはダメですよ!かくいうワタシも数年前までかなり誤解していて、思いっきり力を入れてゴシゴシゴシゴシ、これでもかとこすっては、あれ?まだとれないなゴシゴシゴシゴシ~~っとやっていたクチなのですが、それは逆効果です。あらゆるブラシは、毛の先端を汚れに垂直にあてるよう設計されています。歯ブラシと同じ原理です。毛が広がってしまうと毛の側面で汚れを落とすことになり、効果がないのです。
実はたわしの正しい使い方に気が付いたのは土井善晴さんの『おいしいもののまわり』というエッセイを読んでいた時で、土井さんが調理場で修業していたころ、ある時ふと気が付いて優しく「きれいになれ」と願いながら鍋を磨くようになり、その途端汚れが楽に落ちるようになった、というような内容の一節がありました。「わ!わたし力入れてたかも…」と焦り、早速台所で実践。束子に力を込めないようにしてみた途端、本当に嘘のように汚れが落ちて、はは~!と恐れ入った次第です。ちなみにこの本、料理を志す方にはぜひ読んで頂きたい名著です。有名な料理家の中には鋭い感性で文章を書く方が沢山いらっしゃいますが、土井さんは辰巳芳子さんと並んで簡潔にしてズバリと核心をついたリズム感のある文章が歯切れよく、料理家としてはもちろん文筆家としても尊敬しています。高山なおみさんの文章も大好きですが、またタイプが違いますよね…と、話がそれてしまいました。
こうして使い込んであげると、鉄はだんだんと黒色が濃くなり、質感も変化してゆきます。真っ黒になるまで使い込んだころには、表面の凹凸に常に微量の油分が浸みこみ、一層くっつきにくくなります。使い込めば込むほど使いやすくなってゆくのですから、どんどんお料理に使ってあげてください。会場では使用前のものと数年使い込んだものとの違いも見比べていただけます。
羽生さんのフライパンを愛用してそろそろ10年。わからないことやお手入れの面での不安など、気になることはなんでもお聞きください。羽生さんのフライパンに関してはかなり詳しくご説明できると思います。
納期は現在のところ1年から1年2か月を見ていただいています。
きっと、楽しみに待っていただく甲斐のあるかけがえのない道具になってくれると思いますよ。
◇◇羽生直記さんのフライパンご予約はコチラから。
*こちらは、2022年に公開された記事をご予約会開催にあわせてリライトしています。