2023-04-22

地豆は、絶滅危惧食品なんです。もうあと数年でなくなってしまうかもしれない品種もあります。

そう警告を発してきたのは、札幌を拠点にコピーライターとして活躍する伊藤美由紀さん。この『地豆の料理~食卓に並べやすい日本の在来豆アイデアレシピ100~』というレシピブックの著者です。久しぶりに入荷いたしました。わたしにとって不動の「お豆料理のバイブル」です。

プロフィールには「豆の大産地である北海道在住。豆と豆料理の愛好家。北海道遠軽町の雑穀商「べにや長谷川商店」との出会いから在来豆の魅力に開眼。以来、作ってきた豆料理の数は500以上。家庭菜園では在来豆を育て成長過程を愛でる、食べる、加工するを実践。豆のある暮らしを楽しんでいる。豆の魅力を伝えたいと願う豆の写真家でもある。」とあります。

2016年の国際豆年に合わせて出版されたというこの美しい本。実は全くの偶然から、つくば市の図書館で豆レシピを探していて発見しました。まずはその写真の美しさに目を奪われました。でもレシピに出てくるのは、なんだか聞いたことのあるお豆ばかり。これって、べにや長谷川商店さんのお豆を使っているのでは?案の定、本の最後に「在来種の豆を買えるお店」という欄があってべにや長谷川商店の名前がある。

せっかく地豆の企画をするならとご紹介をお願いして2018年にろばの家で行った企画展『豆まめしく』で書籍を販売させていただく運びとなったのです。そして信じられないご縁というか「滅多に東京出張なんて入らないんだけど、急に決まったからこれはつくばに行けということだな、と思って」と、企画展がはじまる1週間前にろばの家に遊びに来てくださいました。それ以来のご縁です。

「本の中の写真は8割方自分で撮ったかな~。ほら、料理している手元とかはさすがに自分じゃ撮れないからプロにお願いしました」伊藤さんからきいてびっくり。これ、趣味のレベルじゃないでしょう…。べにや長谷川商店さんから出ているポストカードのお豆写真も美由紀さんの作品。宝石のように色とりどりで美しい地豆たちへの愛がダイレクトに伝わってきます。

伊藤さんの本に出てくるお豆レシピは、これまで信じていた手順と微妙に違うものもあります。え?戻したお豆を素茹でせずに直接お肉と煮込んじゃっていいの?いんげん豆も水に浸さず調理できるの?何だか目からウロコのレシピが次から次へと飛び出してきます。そして素材の組み合わせ!絶対に自分では思いつかなかったような意外な取り合わせ…でも美味しそう!やってみたい!見るとレシピの行数がどれもこれも少ない。ものすごく簡単で、これなら自分にもできそう、と思えるものばかりです。それでいて、メインのおかずになるような立派なレシピが沢山載っています。

「在来種である地豆は、改良種と違って育てるのに本当に手がかかるから、農家の人はどんどん作るのをやめてしまう。特に高齢者が多いので、長くツルを伸ばして高いところで棹に結ばなければならい地豆を育てるのはキツイ作業なんです。手を挙げっぱなして血が下がり、麻痺してしまうこともあるんですよ。」伊藤さんは、わたしたちが地豆を消費しないと本当にもうあと数年で栽培が途絶えてしまい、この世から姿を消してしまう品種があるのだと教えてくださいました。

「だからいかに手間を省いて簡単に、かつ美味しく作れるか。そこに最も注力しました。」わたしが、美由紀さんが紹介しているレシピは郷土料理など伝統的な手法なのかと質問すると、そう答えてくださいました。あれこれ試行錯誤して独自に編みだしたレシピなのです。

美由紀さんはもともと個人的にお豆が好きでよく調理していたのに、地豆の存在は知らないでいたところ新聞で長谷川清美さんの記事を見つけて興味を持ち、早速知らない名前のお豆を3㎏ずつ10種類ほど取り寄せてみたのだそう。

「箱を開けた時、まずそのビジュアルにやられました。こんなにも美しく、こんなにも色々な形、色のお豆があるなんて…。でも一番驚いたのは味の違いです。どれもこれもこれまで調理していたお豆より味が濃い!びっくりしました。でも、30㎏って結構消費するのが大変でしょう?世界中のお豆レシピを片っ端から試してブログにアップしていたところ、とある編集者の目に止まり声をかけられたのがこの本のきっかけだったの。」

はじめはべにやさんのお豆を調理しては「こんなの作りましたよ~」と写真付きでレシピを送ったりする程度だったのが、レシピがポストカードに採用され、さらには書籍まで出版し…。なるほど、べにや長谷川商店の『豆料理』の裏表紙には、レシピ協力:伊藤美由紀とちゃんと書いてありました。

伊藤さんはgreenshellbeanというIDでInstagramにも地豆料理を投稿されていて、毎日のように美しく美味しそうなお豆料理をアップされていますので、ぜひフォローしてみてください。そのセンスの良さに参ってしまいます。

そしてそして「あれ?このうつわ…加地学さん?」と思ったらやはり!#加地学 うつわ とあります。兄貴~~~!!美由紀さんと「カッコイイよね~~~。本人もカッコイイけど、生き方がね~~~!」とそこでも盛り上がりました。いえいえ、美由紀さん。美由紀さんの地豆にかけた人生も、相当にカッコいいですよ。

ママろば、美由紀さんにお会いした時はその企画展に向けてお豆料理1000本ノックの真っ最中。会うなり質問攻めにしてお豆料理のアドバイスをいただきました。まだまだお豆料理初心者のママろば、きっとこれからも沢山お世話になっちゃいます。皆さんもぜひ、この素晴らしい本(ちょっぴり料理好きの人向きかもしれません)や、べにやさんのお豆本をきっかけに、地豆の楽しさに気付いていただければ、これほど嬉しいことはありません。

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