2023-04-03

え?本当にこれだけでいいの、と心配になるほどシンプル。でも、これがいいんです。

こういうレシピ本を待っていたのです。2020年に10周年を迎えた鎌倉の名店「オステリア コマチーナ」亀井シェフの初のレシピ本。

「誰でもできそうだし、なんでもないもの。
でも、また食べたくなる。
頭じゃなくて、身体が欲する味。
それが僕の目指す料理」

-亀井良真(本書帯より)

シンプルだけれど絶対に美味しい、小細工なしの真っ向勝負。オリーブオイル大匙何杯に塩が…などと本を見ながらでなくても作れる、超がつくほど単純な組み合わせに単純な手順のお料理ばかり。

けれども、ずっと食べ飽きない普遍的な”美味しさ”がそこにはある。何度も繰り返し作って身体で覚えて欲しいようなお料理ばかりです。

アマトリチャーナやプッタネスカ、カーチョエペペといった誰もが名前だけででも知っている、けれども本当に美味しいひと皿には出会ったことがないというような、簡単そうでいて実は難しいパスタ料理。

…この本で、出会えます。とびっきり美味しいレシピに。

パスタのゆで方や簡単な手打ちパスタの作り方も丁寧にコツを教えてくれています。基本中の基本のパスタから、表紙にもなっているお店の人気メニュー、レモンクリームスパゲッティから具なしナポリタンやトマトとバターのリングイネなど隠れファンの多い裏メニュー、リゾットなど、プリモピアットのレシピが約30種に加え、前菜やスープ、主菜などワインのおつまみにもなるレシピが30種以上、さらにコマチーナでも人気のピザやパン、ドルチェなど盛りだくさんの内容です。

さらに、ぜひ読んでいただきたいのがNoteと題された、シェフの独り言的コラム。これが秀逸です。

「塩はできるだけ最初にキメる」「ドレッシングは作りおかない」「僕は手で混ぜるのが好き」「切り方、かなり不揃い」「だしはいらない、水でいい」「僕はいつもギリギリが好き」
などなど、シェフのお料理哲学がギュギュッと詰まった内容です。

手順は簡単ですが、そこはひたすら「ギリギリの限界」を攻めながら十年間同じメニューを作り続けてきたシェフにしか断言できない「これだけは譲れない」ポイントが必ずひとつは隠れています。

シンプルなだけに良い調味料、良い素材を選ぶことは必須。亀井シェフの愛用品には、当店の定番調味料サンテベルトーニのアグロドルチェや、ご近所ヴィアザビオさんのパルミジャーノなども登場して、嬉しい限り。

これなら自分にもできそう、と思えるお料理ばかりなのが嬉しいですが、きっと、一回やっただけでは亀井シェフの味にはならないでしょう…なったら困りますよね?亀井さん?(笑)

この本に紹介されている調味料と全く同じものを揃える必要はありませんが、使うものを変えれば同じ分量、同じ手順通で作っても同じ味にはなりません。一度レシピ通りに試してみた後は、ご自分の好みや調味料の加減に合わせて少しずつ工夫してみてください。

ストイックなようでいて「テキトー」でもいい箇所はちゃんと適当でも美味しくできるんだよと教えてくれているところも亀井シェフらしい。

それから、数は少ないながらも全てがいちいちとんでもなく美味しそうなドルチェのレシピもおすすめです。イタリアンのドルチェとしては「今どき?」と思えるようなスタンダードなドルチェばかりがピックアップされていますが、こちらもぜひ注目していただきたいレシピばかり。ひとつふたつ読むだけで、もう居てもたってもいられない。今すぐ電車に飛び乗って鎌倉に行きコマチーナの扉を叩きたくなってしまいますよ。少なくとも私はなりました…。

「ハ、ハードプリンっていうやつひとつ…いやエスプレッソのパンナコッタも一緒にお願いします!!」

…詳しくは読んでからのお楽しみ、です(笑)。 

亀井良真著 鎌倉オステリア・コマチーナのパスタとつまみ81皿「daily PASTA book」はコチラ

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