高田谷将宏 陶展Online第一弾「碗、鉢など」
まずは、今回Online第一弾でご紹介するアイテムの見どころを簡単に。以前からずっとご紹介してきている三島の作品の格好良さはもう知られていると思うのですが、他の作品も本当に素晴らしい。ひとつ残らず見ていただきたい、そんな気持ちです。特にこの鉢、碗類は圧巻の存在感です。
◇粉引き
今回特徴的な粉引きの作品(上)。高田谷さんいわく「やさしいぃ粉引き」とのことで、表面がやわらかくしっとりとした焼き上がりの質感で、これはほぼ狙ってこの質感を出しているそうです。「溶け前」と呼んでいましたが「あえて溶かし切らない勇気」とも在廊していた時に説明していて、少し低めの温度となる灰のかかりにくい場所に置き、ガラス化させず柔らかさを残した粉引きです。使い込むと貫入など経年変化が出やすく、味わい、風合いが変化して育ってゆく過程も楽しんでいただけると思います。
こちら(下)も粉引きでしっとりした肌合いです。
◇丸縁、玉縁(たまぶち)
上の粉引きの鉢もそうですが、縁の部分に丸く厚みがあるものです。個人的にママろばは玉縁のうつわが好きで、特に今回の高田谷さんの盛り鉢のように全体にころんと量感のある形にはとてもマッチしているように思えて素敵だなと思います。縁がしっかりしているので盛る時にも安心感があり、気兼ねなく使えるという利点もあります。
◇焼き締め
上の玉縁の鉢もそうですが、今回の展示では前回なかった「焼き締め」も何点か作ってくださいました。釉薬を用いず粘土だけで作られたものでありながら、火の通った焼け跡や土の中から溶け出した成分の変化、薪の灰がかかって浮かび上がる模様など、薪窯のだいご味ともいえる焼き締めですが、高田谷さんの焼き締めはどこか都会的で洗練された雰囲気で、とても魅力的です。
◇刷毛目
刷毛で化粧土や釉薬で模様を描いた作品ですが、以前からずっと色々な高田谷さんの刷毛目を見てきて、今回は特に描いた瞬間の筆の勢いをそのまま焼き上げたかのようなライブ感ある仕上がりが印象的でひたすらカッコよく、そして彼特有のユーモア、チャーミングさも感じます。
◇灰釉
全作品の、おそらく8割程度は灰釉で、高田谷さんがもっとも多く作ってきた作品だと思います。ベーシックですが、今回届いた灰釉の表情の豊かさを見るだに薪窯の奥深さ、面白さが伝わってきます。鉢の底にたまったガラス化した部分の緑がかってキラキラ反射する美しさとか、微妙な釉薬の流れのグラデーションなど、同じ形の鉢でもそれぞれに個性が違い、選ぶ楽しさがあります。
◇鉄釉、掛け分け
数は少ないですが、緑がかった黒色の鉄釉や2色の釉薬を半々にかけた掛け分けなどテーブルに色を添える味のある作品も高田谷さんらしいなと思います。そして黒はお料理が抜群に映えますね。
◇片口
アイテムとしては、今回いろいろな形を作ってくださった片口。盛り鉢のアクセントとしてテーブルでひときわ目を引く存在となってくれます。とあるお客様に「こういう注ぎ口のある鉢ってなにを盛るものなんですか?」と聞かれたのですが、ルールはないというのがわたしの答えでした。本来は汁気のあるものでも取り分けしやすく、また酒器として使われる場合には注器となるので注ぎ口の役割は明確ですが、お料理に使うものは好きなものを好きなように盛りつけてよいとわたしは思っています。
お料理に向き、方向を与えるという意味で非常に日本的なうつわだと思います。昔学生の頃バイトしていた料亭で板前さんに「こっちが前だからね、間違えないでね」と念を押されたことがありますが、向きが決まるだけでも配置にメリハリが出て美しく整えられる気がします。ウチでは胡麻和えやお浸しなど、和え物を盛るのに好んでよく使います。片口、いいですよね。そして、以前からずっとずっと思っていましたが高田谷さんの片口は、特にお酒のお席で活躍してくれます。これに酒の肴を盛りたい!そう思わせるうつわが多いです。酒飲みにはたまらないうつわですね。やっぱり、お酒好きな人がつくるものはお酒に合うんです。
そして今回、7寸以上の大皿、大鉢は絶対に見ていただきたい。どれもこれもすべて残らずDMにしたかったというほど堂々とした風格のあるものが並びました。どーんとお料理を盛りつければ一気に場が華やぐ、そんなおおらかさと品を兼ね備えたうつわばかりです。「早く人を読んでこれをお披露目したい!」そんなワクワク感を与えてくれるのも、うつわの良いところです。ぜひ人の集まるところで使っていただきたいです。
まだまだご紹介しきれないほど素敵な作品ばかりで、本当に困ります。
どうかじっくりご覧くださいませ。秋の夜「これにはあれが似合いそうだな」だなんて盛りたいお料理を想像していただけるのが一番嬉しいです。
◇高田谷将宏 陶展Onlineのページはコチラです。現在「第1弾 鉢、碗」をご覧いただけます。
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