2023-06-20

ダヴィデ君の”死ぬ前に食べたい”カルボナーラ。

みんな大好き(パパろばも大好き)カルボナーラ。日本ではすっかり市民権を得たポピュラーなソースで、喫茶店(って今は呼ばないかしら。カフェ?)でも食べられる鉄板パスタメニューですよね。

ところがですね。これ、本当に美味しく作ろうと思うと結構難しい。パスタ専門店でも「あ~失敗しちゃってるなあ」と残念になる一皿に出会うことも珍しくありません。玉子に火が入りすぎてもっそもその炒り卵状になってしまっていたり、逆に卵液がゆるすぎてパスタを食べ終わった後にしゃばしゃばのソースが大量に残っていたり…。

わたくしママろば、カルボナーラ発祥の地と言われるローマには滞在8年中のうち一番長く5年ほど住んでいたので原点を見極めようと元祖と呼ばれるトラットリアや評判の老舗にも食べに行ったものですが、お店ごとにあまりに味わいも作り方も違うので「正解はない」というのが本場の実情だと思います。ただ、当時よく遊びに行っていた友人宅のシェアメイトの女の子が生粋のローマっ子で、お昼休みにフォーク一本でちゃちゃっと作ってくれたカルボナーラがあまりに美味しくて…。以来わたしが作るカルボナーラは20年以上彼女のレシピで通してきました。

彼女がわたしに伝授してくれたポイントは以下の3点。

1、玉子は全卵を1人前につき一個使う。
2、にんにくも玉ねぎも入れずにフライパンで熱したグアンチャーレ(ほほ肉のベーコン)から出た脂のみでベースをつくる。
3、ボウルに少し冷ました2とフォークでほぐした卵液、ペコリーノチーズ(もちろんロマーノ)を削ったものを入れて用意したところに、茹で上がったパスタを入れる。一呼吸待って熱々を入れないことがポイント。

もちろん、仕上げにブラックペッパーをたっぷりガリガリ挽いて食べることはカルボナーラと呼ばれていいるからには外せません。炭焼き職人風、ですからね。燻されたように黒々させないと!カルボナーラソースは固すぎず、ゆるすぎず。しっかりソースがパスタに絡んで食べ終わるころにはお皿にソースが残らない、というくらいが理想。

このやり方でやると、まあたいていは失敗しません。塩加減だけ注意すればだいたい美味しくちょうどよい濃度に仕上がります。パパろばはわたしのつくるカルボナーラに目がなくて冷蔵庫にパンチェッタやベーコン(グアンチャーレなんてそうそう手にはいらないですからね)を見つけると「お母さんのカルボナーラが食べたいなあ」とねだってきます(笑)。

20年来の作り方を変えてみようという気になったのは、今年の冬にワインインポーターのヴィナイオータさんの生産者来日イベント、ヴィナイオッティマーナでダヴィデ・スピッラレという生産者の通訳としてお手伝いしていた時に聞いたひと言が決め手でした。来場者からの「死ぬ前に食べたいものはと聞かれたら?」という質問に、ダヴィデが「カルボナーラ」と答えたのです。

「参考までに、どこのレストランのカルボナーラが食べたいの?」と聞かれ
「自分で作ったやつかな」と答えたダヴィデ。

当然レシピ、聞いちゃいますよね。皆さんだって知りたいですよね?

なれなれしくダヴィデ君と呼んでしまいますが、彼はイタリア自然派ワイン界のパイオニアと称される同じヴェネト州のアンジョリーノ・マウレという生産者に弟子入りするような形でワイン造りを始めました。まだ彼が農業学校(高校)の学生でアンジョリーノの手伝いに来ていた頃からなので、かれこれ20年以上の付き合いということになります。高校生だった彼が独立して自分の名前を冠したワイナリーをはじめ、今や師を上回る年もあるのでは?などと評されるほどクオリティーの高いワインを送り出すまでに成長したところを見て誇らしく、ちょっとお腹の出始めたダヴィデ君がもう36歳と聞くだに「自分も歳とるはずだ」と感慨にふけったり…。まるでわが子のように彼を見ている自分に笑ってしまいました。とっても食いしん坊で彼女と毎年互いのお誕生日には星付きレストランに食事に行く、というグルメな彼がそれでも「自分のつくるのが一番」と豪語するカルボナーラ。

人差し指を一本立てて「Attenzione!ちょっと待って。ここ注意だよ」と真剣に語ったレシピです。ではでは、ダヴィデ君の「死ぬ前に食べたいカルボナーラ」レシピ、ご紹介いたしましょう!

パスタは本場風ならブカティーニ。太めのロングパスタでストロー上に穴が空いているため太くても早く茹で上がり便利です。太めのスパゲッティでも。パスタを茹でている間にソースを用意します。

1、パスタを指定時間でゆでる。チーズが塩辛い場合はあまりゆで汁に塩をしすぎないよう調整。グラグラ煮立たせずゆらゆらくらいの火加減で。ゆで汁は全部捨てずにレードル一杯ほど残しておく。

2、黒コショウはフライパンで乾煎りし香りを出す。冷めてから包丁でたたき割る。

3、グアンチャーレを長細い角切りに切り、フライパンで弱火にかけじっくり脂を染み出させる。こんがりしてきたら半量は熱いうちにキッチンペーパーにあげ油を切り、カリカリベーコン状態にしてさます。フライパンの半分はそのまま熱して白ワインを少量回しかけ、少しだけ冷ます。

4、ボウルにソースを作る。玉子は卵黄のみを一人前につき2個。ペコリーノロマーノチーズを削る。
Attenzione!チーズはフレッシュすぎずかつ熟成しすぎていない硬さのものを選んで。チーズを卵黄とまぜてソースを作る。そこに2のコショウの半量、3のグアンチャーレもフライパンの油ごと混ぜる。

Attenzione!ソースの硬さはヨーグルトくらいが目安。ここが最大のポイントだそう。濃度はチーズの量で調節します。別に上からかける分のチーズも削っておく。この段階で食べてちょうどよい塩味に調整しておく。後でチーズがかかる分の塩分はパスタが足されソースが薄まるることで相殺されます。

5、卵液ソースのボウルに茹で上がったパスタの水気を切り、ひと呼吸おいてから入れて手早く混ぜる。パスタの表面が乾いた感じに見えたら大匙1杯ずつゆで汁を加え、なめらか艶やかに整える。

6、パスタを盛りつけた上から削ったペコリーノ、カリカリグアンチャーレ、砕いたコショウをたっぷりかけて出来上がり。下の画像の量では全然足りません。真っ黒?というぐらいたっぷりかけても美味しいのがマリチャの胡椒のすごいところです。ちなみに、ダヴィデ君もこのマリチャのネロを使っています。

Buonappetito!ほらほら、冷めないうちに!

ダヴィデ君の死ぬ前に食べたい理想のカルボナーラをつくるセットはコチラ(まもなく販売予定です)。
*兄弟子ダニエレ君も絶賛のジャコモサントレーリのブカティーニ、マリチャのブラックペッパー、ヴィアザビオさんのペコリーノロマーノの最強セットです。

*ダヴィデ君のワインはつくばのブドウ酒蔵ゆはらさんやママろば、パパろばの古巣札幌のインのMARUYAMAYAさんで購入できます。彼が骨折してしまった時のあばら骨の名前がついたL1(エッレウノ)というスパークリングワインや看板ワインのルーゴリなどカルボナーラにうってつけの1本、見つかりますよ。

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