【ご予約終了】神々にささげるためのわら細工を、稲を育てるところから。ただただ平和を祈って。


【今期のご予約は終了いたしました】今年もこの季節がやってきました。毎年8月、ご予約のみで承るわら細工のお飾りです。下の画像は『祝結び』。ろばの家の窓や壁に吊るしているだけなのですが、多くの方からどういったお飾りなのか、どこの地方のものなのかなど尋ねられます。特に豪華な感じがするわけではなくシンプルで控え目なお飾りなのですが、なぜかとても堂々とした印象で、見るものを晴れやかで明るい気持ちにしてくれます。

宮崎県西臼杵郡、日之影町にあるわら細工専門の工房『わら細工たくぼ』さんによるもの。とても丁寧なつくりで頑丈にしっかりと結わえられています。手に取ってみていただくとよくわかるのですが、芯までみっちり詰まった藁の密度に驚きます。横からピョンピョン飛び出た短いわら屑などもなく、美しく整えられています。そして、青い藁の清々しい香り!こんな爽快な気持ちになるお飾りに、それまで出会ったことはありませんでした。毎年、年の暮れにお正月飾りを探していてあまり気に入ったものに出会えず、それでも無理矢理「まあこれならそれほど派手じゃないか」というものを妥協して間に合わせで買い、さほど感謝の念もなく飾っていたわたしとしては、こんなにも美しく見ているだけで粛とした敬虔な気持ちが湧いてくるお飾りに出会えたことはある種の衝撃でもありました。

たくぼさんのわら細工は2017年の『やっぱりごはん党』企画で初めて鍋敷きなどを置かせていただいて以来、毎年ご案内しています。『やっぱり、ごはん党』の記事でご紹介したような鍋敷きなどの生活道具はもともとは本業ではなく、主に神事に使われるわら飾りを専門に作っていた工房です。一年中飾っておくことのできる平和飾りや祝結びなどのお飾りはここ数年全国から注文が殺到し、何か月も前から予約しておかないと12月前にお飾りを納品して頂くことができないのです。12月は地元のお正月用のしめ縄作りに追われてしまうので、その前に集中して全国の注文分を制作しているのです。え?それならもっと早くから作り始めればよいのではないか?まだ、稲は成長中ですよ。これから度々訪れる台風の脅威と戦いながら、無事に大きくなってくれればやっと、青刈り(稲穂を収穫する前の刈込)にこぎつけられるのです。無農薬で安全、良質な藁を手に入れるために自分たちで稲から育て、わら細工専用に原料の藁を作る工房は、おそらく全国的にも相当珍しいのではないかと思います。

家業ではあっても兼業であったわらの仕事。サラリーマンの仕事をしながら地元の注連縄だけを冬の間制作してきたお父様の代から現当主の甲斐陽一郎さんが「この仕事を専業にする」と宣言し、高校教師を辞めてわら細工一本にかけてスタートを切ったのが9年前。今でこそ全国から注文が殺到し数量を制限しなければならないほどですが、専業でゆくこと自体不安ではじめは途方に暮れたと話していました。完全予約制でしか注文を受けないのは、どうやっても一日に作れる量に限界があること、ストックして置けないことが理由です。2018年の1月に工房を訪ねた際、わらで縄を綯うところを見せてくださいました。縄を綯うことそのものよりも、藁をしごき、屑を払い仕上がりが美しく揃うよう整える作業に膨大な時間がかかるのだということを教えて頂きました。そして、質の良い藁を手に入れることの難しさも。
上の写真は祝酉。かわいらしい姿でとても人気があり、昨年すぐに完売してしまいその後も一番お問い合わせの多かった形です。昔から神使いといわれ大切にされてきた酉のモチーフは『とりこむ』ということで商売繁盛を連想させ、お店に飾る目的で求める方も多いのです。この酉のねじってある部分などを見ると、いかに美しくささくれができないよう丁寧に整えられているかがわかると思います。

こちらが当店で窓にかけている祝結び。家内安全を願う願掛け飾りでねじりの異なる左縄と右縄の2本の縄が「しっかり結びつく」様を表現しています。今年は今まで小と大の2サイズだけだったのが小より一回り大きな中サイズが登場したので、大だと大きすぎて飾る場所がないという方にもおすすめです。

何よりありがたいのは、ずっと飾って置いてよいということ。松の内で外してしまわなくてもよいだなんて!確かにこんなに手の込んだお飾り、何日かだけ飾ってあとは焼いてしまうだなんて勿体なさすぎです。高千穂郷では神々の宿る地として一年中わらの縁起飾りを飾っておく風習があるので、お正月の「しめ飾り」「しめ縄」と呼ばれるものはここでご紹介しているお飾りたちとはまた違った形をしたものなのです。ここでご紹介している祝結びや平和飾りなどのようなお飾りは厄除けや無病息災を祈って購入するもので、一年中飾っておける縁起物。それでもやはり、あまりに古くなり色褪せたものを取り替えようという時には新年を機に新調するご家庭も多いとのことでした。考え方も取扱い方もとても自由で、特にルールはないとのこと。表裏があるくらいです。自分の家の、好きなところに飾ればよい。甲斐さんに聞くと「縁起ものですから、その人が気持ち良ければ何でもいいんです」と。ちょっと安心しますよね。地元では、下の写真の七五三飾り(七五三でしめなわと読むのだそうです)などのしめ縄がお正月用とされていて、玄関や窓、神棚などに飾るのが一般的なのだそうです(*2021年はこちらのお飾りの入荷要諦はございません。)。

高千穂郷は古事記・日本書紀に記される天岩戸神話を伝える神社などがあるなど日本神話発祥の地として「神々の里」と呼ばれる地域です。「この地方では常に神が宿っているとして、一般の家庭でも一年中わら細工を飾る風習がある」とはじめてこの地方を訪れた際に地元の方が教えてくださいました。そして、独特の風習があり今でも神事が根強く町の人々の暮らしに浸透しているというのです。夜神楽なども有名ですね。けれど、日常的にも例えば失くしものをしたり病気の人が出ると郡司さんに相談に行くなど、ほかの地方ではちょっと聞いたことのない昔ながらの考え方が残っているのですね。確かに、高千穂郷では行く先々どのお店にもしめ縄が飾ってあり、とても不思議な気持ちで見て回りました。でも、そのような話を聞く前から高千穂にいるだけで自然と気持ちが清々しくなってきて、町全体にポジティブな空気が流れているのを全身で感じました。もしかすると高千穂の空気自体が肌に合っているのかもしれません。

どのお飾りも、とても丁寧につくられていますので自然と手に取る時に丁寧な所作になります。こんな風に自然とわき出てくる畏怖の念や神聖な心持ちというのは、実は今の世の中にもっとも不足しているものではないか、とふと思ってしまいました。

毎日、何事もなく平和に暮らしている。その奇跡のような事実に感謝する機会がなかなかないのです。それこそ、突然の事故や病気に見舞われるまで意識することがありません。わたしは無神論者ではありませんが、いわゆる宗教のようなものにはあまり接点を持たないで生きてきました。それでも、ある程度歳をとってくると年老いてゆく親や、子どもたちの健康や、いろいろなことが非常にリアルな重みを持って自分の身にふりかかってくるのを感じられるようになってきます。

仕事や家事、子育てに追われて日々バタバタと暮らしているとその日その日をやり過ごすことで精いっぱいになってしまい、今こうして家族無事に暮らしていられることそのものに感謝することを、つい忘れてしまいます。その感謝すべき対象が、世に言うところの「神」という存在なんだろうなとぼんやりと実感できるようになりました。だからこそ、穏やかに迎えたいお正月には自分の周りを神聖な空気で清めることも大切なのだ、と。そう思えるくらいには歳を重ねてきたということでしょう。

毎日じゃなくてもいい。気が付いた時だけでもいい。神々への感謝の気持ちを忘れないよう、日々若々しく健康に暮らせるよう祈ってみよう。心の中で祈るというシンプルな行為にさえ時間が割けなくなってしまっていたとしたらそれは「少し立ち止まってみた方がいいよ」という警告かもしれません。たくぼさんのお飾りにふと目をやってその警告に耳を傾けられたとき「ああ、ありがたい」と自然に感じられている自分に気が付きます。きっと、お飾りというものはそのためにあるのです。

どうか明日も、平和な一日でありますように。願わくば、世界も平和に近づいてくれますように。

太陽・月・地球、3つの輪がつながる平和を願う飾り物『平和むすび』。

実った稲を根からそのまま使った生命力あふれるしめ縄。「根付く」・「実る」意味深い飾り物『根つき穂つき』(こちらは根っこから穂までまるごと稲穂を使って作られるので、お飾りの形状はひとつひとつ異なります。画像ははじめて届いた時のもので、現在はもう少し縦長のシルエットのものが多いようです)。

今年もまた、本年度分のご予約を開始することができました。今年も昨年からご紹介して好評だった縁(えにし)のほか、新たに瑞穂というシンプルで堂々としたお飾りや一歩一歩ゆっくり歩みを進める祝い亀のお飾りなども新たにご紹介させていただけることになりましたので、ぜひそれぞれのお飾りのいわれもお読みいただけたらと思います。

わら細工たくぼさんのご予約ページはコチラです。

*わら細工たくぼさんの関連記事はコチラ
*この記事は2018年8月に初めて公開されたものを今回のご予約開始にともないリライトしたものとなります。

 

 

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