365日地豆を調理し続ける伊藤美由紀さんに聞く、在来種の現状。

この本との出会いが、全ての始まりでした。「地豆は、絶滅危惧食品です」…そう警告を発する伊藤美由紀さんの言葉は、不定期でお届けしている当店の『ろばレター』でもご紹介しましたし、Onlineショップのニュースでも簡単にお伝えしました。今回の企画を締めくくる形で美由紀さんの”お豆観”をご紹介しようと書きはじめたら、例によって果てしなく前置きが長くなってしまいましたので前置きだけで別にコンテンツを立てました(笑)。ほんと、いつも表題にたどり着くまでが長すぎてごめんなさい…。

ワタクシのようなお豆初心者がくどくど語っていても説得力がありません。ここはもう年季と気合が違うベテラン中のベテラン、美由紀先生にお任せしてしまいましょう。美由紀さんにはアンケートにお答えいただくほかに、日本における在来お豆の現状についてもお聞きしました。ご紹介するお豆料理の写真に使用されているうつわは全て加地学さんのもの。美由紀さんの私物(かつご自身による撮影)です。お二人の関係は先の記事にて言及しています。それにしても、本当に美由紀さんのお豆料理ってどれもこれも無茶苦茶美味しそう!…”そう”じゃなくて絶対美味しいって言わなきゃいけなかったんだった!ね、加地さん?

では早速伊藤美由紀さんのお豆観と、在来のお豆の現状を聞いて見ましょう。

質問1:『お豆料理』と聞いて頭にうかぶメニューは?
     :すみません。果てしなく浮かんで絞ることができません。

質問2:これまで食べた中で印象に残っている『お豆料理』は何ですか?
     :べにや長谷川商店が遠軽町で開催していた”おかん料理を楽しむ会*”に地元のおかあさん(おばあさん?)がひとりで10数品もつくって持ってきてくれた料理の中の「白花豆のたらこ煮」です。私にはない発想の料理で、しみじみおいしかった。で、会場でざっくりとつくり方を聞き、自分でもつくってみたのですが、その味にはほど遠く…。年配の人の絶妙な豆の煮方、味加減にただただ感服するばかり。
*”おかん料理を楽しむ会”は地域の人々や事前に呼びかけた道内外の参加者に自慢の手料理を持ち寄ってもらい、または会場でつくってもらい、参加者みんなで味わい、語らい、材料やつくり方について聞くなどなど、地域の味の発掘や継承になれば、と年1回開催していた会です(2007年~2012年)。

質問3:ご自身で、もしくはご家庭(子供の頃でも)でお豆料理をされる場合どんなメニューがありますか?
           :すみません。自分で、の場合、これも果てしなくて絞ることができません。以下、実家で、の場合です。私の両親も豆好きですが、母は自分で豆を煮ることはしない人で、わが家の食卓にのぼるのはもっぱら買ってきた煮豆でした。いまは私が、「煮る人」を仰せつかっています。

質問4:突然ですが、あなたはマメな人間だと思いますか?
 
         :豆のことに関してはマメなんでしょうが、その豆にしてもいかに手間を省いて簡単に料理するか、をテーマにしているところがあるので、結局、手抜き、ずぼら大好きなんだと思います。掃除も、部屋を丸く掃くタイプですし(笑)。

質問5:突然ですが、あなたはマメな人間だと思いますか?
           :私が暮らす北海道では非常に多くの豆が生産されています。それは大きく2つに分けられ、1つは作物として農家が大面積の畑で栽培し農協などに出荷・一般に流通するもの、もう1つは農家が家庭で食べるために畑の片隅か庭先で少量つくる自家消費用です。作物としての豆も大豆、小豆、いんげん豆類、花豆と多くの種類がありますが、自家用の豆になるともう把握できないほど多種多彩。というのも、北海道には開拓時代に道外から移住してきた人々が食料にするため、故郷から豆を持ち込んでおり、全国各地をルーツとする豆が代々つくり継がれてきたからです。
 これが「在来種」と呼ばれる豆(地豆とも)で、とくに種類が多いのが「いんげん豆」の仲間。豆としてだけでなく、野菜として未熟な莢もおいしく食べられるため、重宝されたのですね。長年、北海道でつくられてきたことから厳しい気候風土にも順応し、たくましく生き残ってきたのですが…。作物として改良・栽培されている豆と違って収量が少なかったり、形が揃わなかったり、病気に弱かったり、と、つくりやすくはなく、しかもツル性のものが多く放っておくと3mくらいまで伸びてしまうので支柱を立ててやらなくてはなりませんし、花が長い期間に渡って咲き続けるので豆の熟度が揃わずいっぺんに収穫できない、とか、完熟すると子孫を残そうとして莢がはじけやすい、とか、乾燥すると莢が豆をキツく抱いてしまい脱穀しにくい、とか、とにかく手がかかるのです。機械化、大型化が進む、北海道ではどんどんつくる農家が減っていて(最近でこそ、珍しい作物が売れる直売所に出すためにつくる農家もやや増えてはいますが)、いまや絶滅が危惧される状態にあります。
 在来種の豆は色や模様、形の個性的なものが多く、一般的な豆に比べて味が濃く、見て美しい、育てて楽しい、食べておいしい、魅力的な食品です。この地域の宝を絶やすことなく少しでも長くつくり継いでもらえたら、と農家に栽培を呼びかけ、消費拡大に尽力しているのが遠軽町の雑穀商「べにや長谷川商店」です。私は同店との出会いから、ものすご~く微力ながらもせっせと料理して消費し、まわりの人々にも魅力を伝えようと写真を撮ったり、食べ方の提案をしたり、といった「豆活」をしています。
ひとりでも多くの人に「豆のある暮らし」が根づくことを願って。

★このたびの企画展「豆まめしく」では、拙書「地豆の料理」を紹介いただき、ありがとうございました。ろばファミリーさんのお力で、つくば市からじわじわと豆の輪がひろがっていることを実感し、とてもうれしく思っています。


伊藤美由紀さん著『地豆の料理~食卓に並べやすい地豆のアイデアレシピ100』のページはコチラ
*お料理の写真は上から「紫花豆と鶏肉のさっぱり煮」うつわは加地学さん粉引鉢、「枝豆の焼き浸し」加地学さん刷毛目鉢、「豆ごはん」加地学さん飯椀
この記事をシェアする
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on Google+
Google+

関連記事