身体の隅々にまで広がる満足感。服部竜也さんの美しいうつわが作り出す極上の時間。

朝起きてコーヒーを沸かす。今日一日の予定を考えながらしばしボーっと湯気の上がるカップを握る、その時間。夕暮れ前の午後。いったん仕事を中断し、とっておきのお菓子に合わせて紅茶を淹れてひと休み。お気に入りのカップとともにゆったりと過ごす時間。こういったコーヒータイム、ブレイクは誰のものでもない自分のための時間という気持ちになれますよね。

そんな大切な時間を、服部竜也さんの作品はより優雅で特別なものへ変えてくれます。どこまでも無駄をそぎ落としたようにシンプルなシルエットのマットな黒いマグ。内側は一片の曇りもなく磨き上げられた銀彩が施されています。この銀色に光が反射してコーヒーの液面までキラキラと輝く様子や、液体を透かして底面に光の筋を映し出す様子は、見ているだけでも心が癒されます。

ああ、きれいだな。思わず見とれてしまうその瞬間に、待ちわびていた温かい液体が喉を通る。じわじわと広がる満足感。大切な時間がより一層いとおしく感じられてしまうほどの特別感。

服部さんの作る作品は隅々までその特別感を醸し出しています。たとえどんな小さな作品であっても。まるで服部さんの手によってひとつひとつ、魔法の呪文をかけられながら送り出されているかのようで毎回作品が届くたびに息を飲み込んでしまう。そしてひとつひとつお店の棚に並べている間も「はあ~~~っ…」とみとれてしまうのです。ひたすら美しい…。こんな小さなカトラリーレストまでが、すべての角まで一辺いっぺん磨き上げられている。テーブルで実際に使われる瞬間のなんとも礼儀正しい印象は、どこまでも気を使って丁寧に作られたものにしか持てない由緒正しさというか、育ちの良さのような品格まで感じてしまう。




銀彩のように特徴的な作品はパッと目を引くので注目されやすいものの、例えば白釉のごくごくシンプルなカップのシリーズでさえ、何気なく棚に並んでいる姿にはハッとさせられます。こういう普通に美しいデザインのものってありそうでないかも…と思いかけてそれは違うと思い知るのです。普通なんかじゃぜんぜんない、と。全体で醸し出す控え目でかつ上品な印象はまぎれもなく細かなディティールの集合のなせる業であって、子細に部分部分を眺めてみれば、あきれるほど丁寧により美しく、より出過ぎたところがないようにと整えられていることに気が付くのです。取っ手の付け根からその側面、テーブルと接するギリギリのキワの処理に至るまで。

この白釉のシリーズが持つ控え目な美しさは、いっそう如実に服部さんの手仕事の確かさ、自分の理想形に対して手間や時間を惜しまない徹底した意志の強さを物語っているようです。見過ごしてしまうほどナチュラルに全体に馴染んでいる細部ですが、本当に調和のとれたデザインというのはそういうものではないかと思わされます。何気なく見えてしまうほど整った姿の陰には、いったいどれほどの手仕事、努力が隠されているのでしょう。

わからないほどうっすらと2段に削られている底面とのつなぎ目、持った時にピタリと指にフィットするカーブと滑りにくい細い溝。用の美をこうまで優雅な形で実現できるものかと、見れば見るほど、手に取れば取るほど深く尊敬の念がわいてきます。本当に、すごい。

先述の自分だけの時間、ではないですがこういうカップでお茶を飲むその時間は、このカップがあることでどれほど充実したものに変わることか。人の手仕事というものの素晴らしさに感謝せずにはいられません。



服部さんといえば、ポットや茶壺などの注器、お茶道具でよくお名前の挙がる方ですよね。実際に使ったときの水切れの良さや取っ手の持ちやすさ、重心のバランスなど使い勝手の良さに関しては見た目の美しさ以上の説得力を持っています。ずっと作り続けている定番の球型ポットにしても、場所をとらないコンパクトな形で水が入って重くなった状態でも持ちやすく、流れるような自然なしぐさでお茶をカップに注ぐことができます。

今回届けていただいたポットは黒、銀彩、古銀彩の3色。はじめて登場した古銀(下の画像3枚目)は燻し銀のようにマットで独特の風合いがなんとも渋く上品です。銀彩を強制的に酸化させた後にヤスリをかけ、摺りガラスのような独特のテクスチャーを生み出しています。平たく言えば銀彩のアンティーク感を先取りしているようなものなのですが、この状態からもやはり使ってゆけばより落ち着いた色合いへと経年変化を楽しめるようで、メラミンスポンジなどで磨けばまた元の状態に戻すことも可能な点は、銀彩と同じです。




美しい姿のお茶道具には思わず背筋もシャン、お茶碗を持つ手もピシッと、所作まで整えてくれる効果が本当にあると思います。自分のための時間を自分で美しく整える。それだけでも心がほぐれる気がしますよね。

楽しみにしていたおやつの時間。美味しいお菓子はもう、ずいぶんとご紹介してきた気がします(笑)。最後に、その時間をより優雅に、心の中まで満たしてくれるうつわたちをお届けしてしめくくりたいと思います。

どうか、至福のおやつの時間を。

◇◇服部竜也さんの作品はコチラのページでご覧いただけます。

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