服部竜也さんのうつわ『冬ごもり』
ろばの家の催し物に出ていただくのははじめて。岐阜県土岐市に工房を構える服部竜也さんです。
出展は初めてですが、少し前から少しずつマグカップやプレートなども届けていただいていました。少しずつ、本当に数点届けていただいただけなので、こうしてズラーッと服部さんの作品が並んだところをろばの家で見るのは初めてです。
ポットも各色並び、そこだけ完全に服部ワールドに染まっています。
実は、例年10月に開催している『おやつの時間』。今年は年内には行わず来年1月中旬から開催するのですが、服部さんはそちらにも続けて出ていただくことになっているのです。服部さんは2004年多治見市陶磁器意匠研究所を修了。2012年に現在の土岐で制作を初めたとのことですが、それ以来、ポットやカップはずっと作っているアイテムだそう。服部さんとやりとりしていると何事もテキパキ、言葉遣いも丁寧で明快、とにかく気持ちがよいのです。すべてがキッチリしていないと気が済まないタチなのでしょうね。作品からもそれは十分感じていましたが、お話してすぐに納得がゆきました。
お茶まわりのうつわには特に定評のある服部さん。『おやつの時間』はまさに、ぴったりの場に思えたのです。それが決まっていながらも「耐火土瓶、スープのうつわなどでご協力できると思います!」と『冬ごもり』への参加も快く引き受けてくださいました。
ろばの家に通ってきてくれているお客さまは「あれ?これ、誰ですか?」と、すぐにその土瓶に目をとめます。目立ちますよね、確かに。それにしても、こんなにも細部の細部までビシーッと神経が行き届いていることを、誰もが一目で感じてしまう作品ってすごいですね。
美しい、とは思っていましたがここまで丁寧に作ってあるとは…想像以上の細やかさ。完璧、という使ってはいけない言葉がどうしても浮かんできます。
この、麻紐がびっしりと巻きつけられた真鍮の持ち手も服部さん自作。取っ手は取り外しができるように作られていて、洗いやすいように配慮されています。
一分の隙もない、というか本当にどこからどう眺めても使いやすく、壊れにくく、かつ、美しく仕上げられています。この真鍮の持ち手がはめ込まれている穴には、金属の輪をぴったりとはめ込んであり、取っ手の角度を変えたり取り外したりする時に力がかかっても陶器にヒビが入りにくい作りにしてあるのです。
水を入れて重みが出ても持った時の重心バランスがよく、安定感があります。
洗練されたデザインのうつわは華奢に見えて頼りない気がしてしまうのですが、服部さんのマグやスープカップの持ち手は実際に手で持ってみると驚くほど持ち易い。特に片手のスープカップなどは、片側にこんなに細い持ち手が一本だけなのに、楽に全体を支えることが出来ます。
服部さんのポットは、ボディが球体なので見た目よりも沢山お水が入ります。ポットとお茶の重さを持ち手だけで支えるのに、これだけ繊細でもしっかり持つことができるのは、持ち手の形状と、やはり重心のバランスが良いからなのです。形が美しいだけのものなら沢山あるかもしれませんが、持った時のバランスまで計算されたものはなかなか見つからない気がします。
この、精巧さ。画像から伝わりますでしょうか。水を入れて注いでみると、水切れのよさと注ぎやすさに感動します。
下が定番のまんまるポット。上から黒釉、クリーム、銀彩です。どれもこれも飾って置きたくなるような愛嬌のあるたたずまい。でも、ぜひ使ってくださいね。使いやすさと美しさ、その両立にますます感動してしまいますから。
服部さんからはほかに、クリスマスやパーティーの特別感をさらに倍増してくれるキャンドルスタンドやランプシェードも届いています。服部竜也さんのスタンドは、その美しい姿と繊細なディティールが、置いてあるだけでテーブルに華やかさを添えてくれます。画像からは伝わりにくいですが、暗闇でキャンドルを灯した際、極細の金彩、銀彩ラインがかすかにチラチラと反射して一層美しいのです。ランプも、シェードの内側がなぜ銀彩なのだろうと不思議に思っていたのですが、電球をつけてみるとなんとも光の反射がやわらかく、金属とは違う優しい光なのです。装飾まで、細やかな気遣いと配慮の末のひと筆、と思うとひたすら感嘆してしまいます。
暗くなる前の、灯さないでただそこにある姿でさえ、特別な雰囲気を演出してくれる。服部さんの作品は全て、そんな特別感に満ちていると思います。そこにあるだけで、周りの空気を変えてしまうような。
ひとつひとつの作品に、丁寧に、丁寧に向き合い、細部の細部まで徹底して美しく仕上げられた服部さんの作品。ぜひ、気に入ったものを見つけてください。きっと使うたびに、その思いが伝わってくるはずです。
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