丁寧にお茶を淹れたくなる、若杉集さんの宝物のような急須

はじめはただ、単純にその造形の美しさに惹かれ手にした若杉さんの急須。1ミリのズレもなくピタリと合う蓋や安定感のある持ち手、茶こしの精密さ。お茶を注ぐときの水切れの良さ。実際に使ってみると細部の細部まで丁寧に仕上げられ、また機能的でもあることに驚きました。ただ、若杉さんとお会いしてお話を聞くたびに、急須の美しさの意味がわたしたちの中で変わってゆきました。

若杉さんが益子にやってきた70年代には北郷谷だけでも10軒以上あったという、職人さんによる手漉しの粘土屋さん。高度成長期とともに機械生産の粘土作りに押され職人制度が崩壊してゆく様子に「このままでは各地固有の原土が軽視され益子のアイデンティティーが失われてしまう」と、一年間職人さんの元に通いつめ水簸の現場を撮影し詳細な記録を残しました。

最後の手濾し職人さんが廃業してしまう際、二度と手に入らなくなってしまう益子の原土からなる粘土を2トン買い取った若杉さん。はじめは食器全般を作っていましたが、その貴重な粘土に少しでも価値を持たせようと選んだのが”急須”でした。

耐火度が低く変形しやすいため単体で用いるのは難しいと言われてきた益子の粘土。その粘土だけで焼き締めの急須を作り、さらに自ら歩いて掘り集めた原土を地区ごとに単体で使い、急須にその土の個性を表現することを模索し続けてきた若杉さん。

この急須の美しさを、機能美という言葉だけでは語れなくなってしまいました。その佇まいににふさわしい、心から美味しいと思えるお茶を淹れたくて丁寧に気持ちを込めてお茶を淹れる。この急須を手にとると自然に背筋がシャンとなります。

ろばの家の定番展で、再びこの急須をご紹介させていただけることに感謝せずにはいられません。願わくばこの場が、お茶を丁寧に淹れる時の静かで温かい心持ちと出会えるきっかけとなりますように。

『ろばの家の定番展SUPERSTANDARD vol.2』は11月7日スタート。若杉さんは益子の土100%の急須で参加してくださいます。

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