毎日使える、小林慎二さんのスープもシチューも似合う漆のお椀

茨城県鹿嶋市に漆工房を構える小林慎二さん。小林さんはコーヒーカップのほか、汁椀としてつくっているさまざまなデザインの中でも特に現代のテーブルにもマッチするとして人気の高い”まゆ椀”も出展してくださいます。昨年の「あんしんの食卓」展でも多くの方が手に取られました。漆のお椀ときくとどうしてもお吸い物やお味噌汁のイメージが強いと思いますが、この形であればスープやシチューも違和感なくマッチするので毎日使えます。

特別な日に引っ張り出してくるような余所行きの漆ではなく、毎日まいにち気負いなく使えるうつわ、それこそが小林さんの求める漆の姿だと思うのです。

小林慎二さんといえば、ろばの家では「漆のコーヒーカップ」が定番中の定番。このカップも、漆離れが進む現代により身近なアイテムとして日常使いできるものをと、小林さん的にも定番として作るようになったシンプルなデザインです。お茶にもコーヒーにも使っていますが香りは残らないし、とにかく軽くて丈夫。お店でカフェラテのオーダーが入ると、この漆のコーヒーカップでお出しすることもあって、皆さんその軽さに驚かれます。漆は保温性が高く、唇に吸い付くようなや柔らかい口当たりと結露しにくい点からも、温冷問わず飲み物には最高なのです。

あまり知られていないようですが、本当に漆は保温性が抜群です。温かいものは冷めず、冷たいものは冷たいままで長時間保たれます。そのうえ、熱伝導率は低いので熱湯を注いでも手に熱は伝わりません。柔らかなテクスチャーを持つ割れないガラス、とでも言えばイメージしやすいかもしれませんね。こんな理想的な素材が他にあるでしょうか?エベレスト登頂の際に漆のカップを携帯する、と聞いてなるほどと深く頷いてしまいました。金属では凍って怪我をしてしまいますし、漆の軽さ、丈夫さが買われたのでしょう。コーヒーカップという名前を便宜上つけていますが、香り移りも少ないのでフルーツやヨーグルト、それこそアイスクリームカップにしても最適なはず。

でも、何よりも漆を特別なものたらしめているのは、その経年変化の仕方だと思います。上の画像は5年以上使い込んだ白溜めのカップ。実はふたつとも同じものです。左側がその使い込んだもの、右側が工房から届いたばかりの状態です。始めは光沢が鈍いマットな質感ですが、だんだんと透明度が増し下塗りの刷毛目の濃淡が透けて輝きを帯びてきます。特に何かお手入れをしたわけではありません。使い込めば込むほど透明度が増し、透き通るような明るい色合いに変化してゆくということは、漆の楽しみの中でももっとも魅力的に感じられることなのではないでしょうか。

そして今回はじめて届けてくださったのが、小林さんが年季明けの独立当時から作り続けている”ひめ椀”。お子様向けの小さな飯椀と汁椀です。今回はすぐ上のまゆ椀と同じ赤溜めの色で届けてくださいました。2~3週間お時間をいただければ手書きでお名入れもしてくださるので、ご出産祝いやお食い初めのプレゼントに人気です。


実はこのひめ椀、うちのチビろばちゃんも1歳の時から飯椀として愛用していて8歳になった現在も使い続けています。1枚目の画像が新品、下の画像が娘愛用のそのお椀です。ずいぶんと下地の赤味が透けて艶も出てきた様子、写真から伝わるでしょうか。今では自分でご飯をよそう娘は片手できちんと持てる軽いこのお椀が大のお気に入り。ちゃんと使う前に水にくぐらせることを覚えたのでご飯がくっつくこともありません。

このお椀には、一枚のポストカードが添えられていました。「デビュー当時に超アナログで作ったもので、この先も姫椀を扱っていただけるなら傍らに置いといてください。」と小林さん。

…か、かわいい。もしかして、これは小林さんの愛娘さんでは?と尋ねてみたらやはりその通り。この最後の一滴までお味噌汁を飲み干そうと懸命なところもおて手のムチムチ感も懐かしい~。独立してすぐご自身の娘さんに作ってさしあげたひめ椀、今はどんな色に育っているのでしょうか。ウチの娘も最近バスケをはじめ、ご飯を食べる量が急に増えてしまいました。ひめ椀ではもう小さいのではと思うのですが、気に入っているので手放しません。

大丈夫、これだけはちゃんとあなたが大人になって、いつか母親になる日がきたらちゃんと手渡してあげるから(ひえ!その時わたしはおばあちゃんか!?)。万が一ヒビが入ったり割れてしまっても、小林さんはメンテナンスにも応じてくださいます。一生どころか、二代、三代と受け継いでゆくことのできる漆の素晴らしさ、この定番展でもっと多くの方に知っていただきたいと思っています。

定番展では小林さんのコーヒーカップ4色(下の画像左から白溜め、赤溜め、黒、そして朱)とまゆ椀(中)の赤溜めと黒、そしてこのひめ椀の赤溜めをご覧いただけます。

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