塩を使いわけるだけで、こんなにもお料理に差がでてしまうとは。

ろばのウチでお料理に使っているのは主にこの3種類のお塩です。ほかに韓国の海塩やシチリアのトラーパニのもの、フランスのゲラント産のフルール・ド・セルなども使いますが、毎日の食事の用意はほぼこの3つで間に合ってしまいます。

新潟県の最北に位置する“(旧)さんぽく町”(現在の村上市)は、緑の山々と紺碧の海に恵まれた自然あふれるところ。名勝天然記念物”笹川流れ”に代表されるように美しい海岸線が続き、豊かな山を背景に四季折々の絶景を楽しむことができます。水質が良い事から、塩作りも盛んに行われています。 その辺りには何軒も塩工房があるらしいのですが、残念ながらまだ訪問できていません。一度柏崎市まで出かけた時に「せっかく新潟にいるのだから笹川流れまで足をのばそうか」と調べてみるとまだ100㎞以上も北上しなくてはならず、時間がなくてあきらめたことがありました。

ろばの家でオープン以来扱わせて頂いているお塩で、定番中の定番調味料。もしかすると、もっとも大切な調味料かもしれません。もう、塩の花や藻塩がないとできないメニューがあるというのが全然大袈裟な話ではないのです。あまりにもこのお塩の味に慣れ過ぎていて、違うところでお料理しなければならない時などいつもの感覚でパッパッと味付けしてしまい「しょっぱっ!!」と慌ててしまったことが何度もありました。ミネラル分が豊富で甘みも強いので、他のお塩で同じ量を使ってしまうとかなり角の立ったお味になってしまうのです。

新潟で最も美しく清らかな海と言われている“笹川流れ”。透明度の高いこの海水を何度もさらしの布に通し、海のアクや石灰を丁寧に取り除きます。昔ながらの製法通り大量の薪で15時間以上、じっくり時間をかけて煮詰めると、海の恵みをいっぱいうけた塩の結晶が誕生します。さらに、伝統的に使われてきた藁の“ツト”に丸一日置き、えぐみのない美味しい塩が出来上がるのです。大変な重労働だそうですが、現社長の小林久さんは徹底して製法にこだわり、薪や藁ツトなど、時間はかかっても丁寧に塩を結晶化できるやり方を通しているのだそう。その小林さんは定年間近にテレビで沖縄の製塩の現場を見て興味を持ち、これなら楽しく仕事ができそうだと思ってはじめた、というのですからそのバイタリティーに驚いてしまいます。

さて、この3種類のお塩、どう違うかと言うと同じ笹川流れの海水100%で、同じ薪、ツトを使っていても全く製法が違います。玉藻塩は、海藻ホンダワラを使った、香りのあるめずらしいお塩。天日干しした玉藻(海藻ホンダワラの一種で、風船のような小さな玉がついていることから、昔から玉藻と呼ばれています。海藻も笹川流れ産の玉藻を使用)を煮出してエキスを抽出し、海藻のエキスと海水を炊き合わせたもの。大変にヨード分が豊富で、身体にも良いのが玉藻塩です。しっかりとした強さの中に優しい旨味、味わいが広がります。

一方塩の花は、フランスなどでもフルール・ド・セル(訳語もまさに塩の花)といって珍重されるもので、一番塩のことです。薪を焚きつづけて15時間、ようやく塩が生まれる瞬間にふぅ~っと浮いてきた塩の花。高貴に輝く結晶を一握りすくい集めたものです。まず、その甘みとまるい塩味に驚きます。料理の仕上げに使いたい、サクサクとした歯触りも新鮮な一番塩。薄いフレーク状ですが指でひねると簡単に細かくなり、粗さを自由に調節できるのも特徴です。旬の野菜など素材の持ち味を生かしてあげたい時、この塩の花のクリアでまろやかな味わいが素材そのものの旨味を引き出します。天ぷらや焼いたお肉など、仕上げのかけ塩ではなく調理に使う場合には、塩分を足すのではなく素材そのものの旨味を倍増させる、という感覚で使ってみてください。カブやきゅうりなど、ただ切ってこの塩の花をパパッと振ってからざっくりと混ぜ、待つこと3分。野菜からじわじわと出た水分と塩の花が混じった液体を、ぜひ舐めてみてください。たったこれだけの料理なのに、お客さまに出すと「何で味付けしてあるんですか?」と聞かれるほど複雑な味わいになりますよ。夏のトマトにもお勧めです。くれぐれも、塩で揉んで水気を絞ってしまわないように!染み出たジュースもご馳走です。

その後さらに時間をかけて薪で煮詰めて得られるものが「笹川流れの塩」で、塩の花の淡くまろやかな塩味よりももっとしっかり切れのある塩味を持ちます。ミネラルも豊富で、あらゆる調理に使えます。

わたしは単純に塩の花は仕上げ、もしくは野菜などひと塩して旨味を引き出す時によく使います。藻塩はもっとミネラル分が生かされるもの、山菜など苦みや香りの強い、個性のはっきりしたお野菜や魚介によく使います。よりクリアに、素材の味をストレートに出してあげたい時には塩の花、旨味と旨味をからめてさらに複雑味を与えたいときには玉藻塩、という風に使い分けています。わかりやすいのは素材の色で、白っぽい淡色の食材には塩の花、色の濃い食材には玉藻塩、という視覚的な分類で、かなりの確率で効果的な味付けとなります。たとえば、同じおにぎりでも白飯なら塩の花、玄米なら玉藻塩、というように使いわけるとわかりやすいですよね。

今、店頭ではお豆フェアーを行っているのでお店でお豆のスープをご用意していたのですが、青えんどうのスープなど調理に使った調味料は塩、オリーブオイル、だけでした。あ、玉ねぎも入っていましたね。お客さまにレシピを聞かれ材料を教えると「え?本当にお塩だけですか?」と驚かれたり、「家で作ってもこんなに美味しくならないんですけど」と言われることも多いのですが、決してわたしがお料理上手なのではなく、ひとえにこのお塩たちのお蔭だと確信しています。お塩としては高価な部類であるのには違いありませんが、他に余計な調味料がいらない分かえって経済的だと思いますよ。

今回薪の価格の高騰など原材料の価格値上がりを受け、次回入荷分より8%だけ値上がりするというご連絡をうけています。価格が変更となってもすでにお使いの方は続けて使ってくださるに違いないと安心しているのですが、まだ使ったことのない方がいらっしゃるのでしたらぜひ値上がり前に一度試してみていただきたいのです。お塩ひとつで、こんなにも劇的に料理の味が変わるのか、と目からウロコ。格段と腕が上がったように感じますよ。

日本海企画『笹川流れの塩』はコチラ

 

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2019-04-14 | Posted in ろばの家の定番調味料No Comments » 

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