遠い時代、遠い異国の地で受け継がれてきたラリーキルト。今とは異なる、時間の価値。

古いモノには無条件に惹かれます。中でも時間を経ることによってその美しさや価値を増すようなモノの在り方に憧れます。車も最新の流線型ではなく古い時代の角ばったもの、手巻きの時計、ぐったりと皺だらけになった皮のかばん…。ピカピカの新しいうちはキレイでも、少し古くなると価値が下がってしまうような、高級で最新のモデルではあっても、整えられ過ぎた企画品にどうも魅力を感じられないのです。手入れなど多少の問題や欠点、クセがあってもいいから、生身の人間が想いをこめて作ったようなものにお金をかけたい。何でも手に入る今の世の中、逆にそういう志向を持っている人は多いのではないでしょうか。

昔から古い布が好きで、裁縫は苦手なくせに古布のハギレがマルシェに出ていると束で買ってしまったり、アンティークの着物を買うでもなく一枚一枚眺めてしまったり、今のテキスタイルにはない色合い、デザイン、そして独特の、艶の衰えた落ち着いた質感に魅力を感じます。おばあちゃんの家に遊びに行った時のような懐かしい臭いも。

インドの一地方ではグドゥリーと呼ばれている、ヴィンテージラリーキルトが入荷しました。日本ではとても人気があって沢山流通しています。お子さんがいるお家など、フローリングであっても裸足で暮らすことの多い日本においては床に座れるラグ、しかも自宅で洗えるラグというのは需要があるのでしょう。今、昔風を狙って工場で量産されているものも沢山ありますが、こちらは年代物です。インドのマルシェで山のように積まれた古く粉まみれのキルトの中から選んできた、というものを直接一枚一枚見せていただき、色合いや質感、パッチワークの模様が気に入ったものだけ選ばせていただきました。50年、60年と使われてきたものですから当然ダメージもありますが、自分で使って差支えないというレベルを選ぶ基準としました。仲買人やオークションを通さず直接買い付けていらっしゃるので、相場よりリーズナブルに揃えていらしたのも、嬉しい判断基準となりました。

人の手が作ったうつわや手仕事の道具が好きな方でしたら、きっと上手く今の暮らしの中にとり入れてくれるのだろうと想像します。インドに年3回ほど買い付けに行っているというヒトミさんとお話していて、つい何度も強調してしまったことは「これ、今狙ってもできないよね」ということ。目立たないようにハギをしたものもあれば、目立ちすぎるだろうというほど反対色を合わせていたり。あまりにも突飛な組み合わせ。色合いも柄も、なぜここにこの色、柄の組み合わせ?と首をひねってしまうような適当さ(笑)。きっと、繕ったばかりの頃は周りから浮いていたはず。それが長年使い込まれて、ほころびを繕った跡の生地も古びてきて、ちょうどよい具合に馴染んできている。だから沢山色を使ってあるのにうるさくないのです。日本の刺し子や割き布なんかと、発想は一緒です。


ボロボロになったから、直す。直すことによって、より丈夫になる。狙ったのでは出せない、素朴で飾らないデザイン。そして何より、気が遠くなるほど費やされた、時間、時間、時間…。

これだけ大きな一枚に、こんなにも細かなステッチ。何重にも、色を重ねて。でも、正確には「狙っていないからこその美しさ」というのは間違いだと思うのです。沢山繕い手がある中、やはり、好みや嗜好、センスというのが人によって差を生んでいたはずと。時には、とてもユーモアのある模様も見受けられます。もちろん、繕った跡なのだから模様としてアップリケしているわけではないのですが。でもだからこそ、自分の好みに合うものに出会えるとすごく嬉しい。そして、その繕った人のその時の気分まで想像して、なんだか楽しくなる。偶然出来る形。意図せず生まれた図形を、より生かすためにステッチで強調してみたり。そして、その奇抜な繕いも、時間の洗礼を受けてシックに、こなれた色合いに変化して落ち着き、より魅力的な統一感を見せる。やはり、今のものでは真似できない魅力に満ちています。

ヒトミさんは「現代でも刺繍をほどこしたキルトは作られていますが、ステッチも幅が広いし素材も量産品だし、まったく別物です」と嘆いていました。そして今となっては、この素晴らしい手仕事のキルトの価値が認められ、どんどん人気が高まって、世界中からバイヤーが集うのだと。そのうちに本当に、実際に使われてきた時代物のキルトは手が出ないものになってしまうかもしれません。

唯一無二の手仕事が評価されるのは嬉しい反面、あまり注目され過ぎて市場が枯渇してしまうのは嫌だなあなどと勝手なことを思いながら、今目の前にあるチャーミングなキルトたちを満足げに眺めてしまいます。

時間を短縮することに価値を見出すのではなく、時間をかけることが価値を生み出していた時代。そうしてそれを、商売でもアートでもなく、家族の健康のためにだけ費やせていた時代。そこで費やされた膨大な時間は、どんなアート活動よりも尊くプライスレスです。

素晴らしい手仕事を、ぜひ暮らしの中にとり入れてみてください。今のものにはない安堵感を醸し出してくれると思います。

ヴィンテージラリーキルトはコチラのページから。ぜひ、細部までご覧ください。

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