シンプルの極みパスタ『赤』はもちろん、パスタ・アル・ポモドーロ。

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イタリアを代表するパスタ料理をひとつだけ選べ、と道行くイタリア人に質問したとしたらまず99%が選ぶであろうお皿がコレではないだろうか。Pasta al Pomodoro-パスタ・アル・ポモドーロ、トマトソースのパスタです。いやいやアーリオ・オーリオだ、いやボロニェーゼだ、と回答者の出身地によって若干の異論は挙がるかもしれない。でも、もう一度こう聞いてみる。「イタリア人にとって代表的なパスタ料理とは何だと思うか」と。そこまで尋ねれば残り1%のひともパスタ・アル・ポモドーロと答え直すに違いない。そのくらい、イタリア人にとって基本の基本、これなくして365日の食卓は成り立たないというほど日常的に親しまれている国民的パスタなのです。仮に今イタリア政府が「パスタ・アル・ポモドーロ禁止令」なるものを発令したら、まず間違いなく革命が起こる。ここまである特定の一皿が強く国民全てに支持されている例は、世界中見回してみても簡単には見当たらないのではなかろうかと思います。これが日本だと何料理にあたるのだろうと考えると首をかしげてしまう。白米に納豆と言えば大阪市民が猛反論するだろうし、大根の味噌汁?サンマの塩焼き?和食の代表とはいえるかもしれないけれど「なくても一生困らない」という日本国民がいても不思議はない。ううん…おにぎり、かな。おにぎり嫌いな日本人っているかしら?…いうやもう、そういうレベルの話じゃないんですよね。どうかな、と疑問符がつく時点でパスタ・アル・ポモドーロと同じ土俵には上がれない、それくらい歴然と決着のついている問題なのです。

そして何よりパスタ・アル・ポモドーロを特別足らしめているのは「誰もがつくったことがある」というその事実。イタリアの成人、男女の別は問わない。学生でも老人でも、自分の食事を用意しなければならないシチュエーションを持ちうる人ならばおそらく一人の例外もなくパスタ・アル・ポモドーロを作れてしまうのです。ココが日本と違うところと思う。日本ではおにぎり一個握った経験がないという中年男性がどれほど多く存在することか!

しかし、それほどまでに誰でも作ることのできる、簡単で普遍的な料理であるにもかかわらず、その作り方、材料、配合はひとによって千差万別。王道のレシピはコレ!と決めるのには異論がありすぎて収拾がつかない。ええ?パスタをゆでて、トマトソースとからめるだけなんじゃないの?お好みでパルミジャーを削ったのかけてさ、と思うなかれ。トマトはフレッシュがいいのかはたまた加熱処理されたホールトマトか、ニンニクは入れていいのか、炒め玉ねぎを入れてもパスタ・アル・ポモドーロと呼べるのか、論争のネタに事欠かない。そろそろ決着をつけねばならない、と思ったかどうかは知らないけれど、2014年1月に行われた国際イタリア料理デーに選ばれたテーマはパスタ・アル・ポモドーロ。全世界に分散する2200名を超えるイタリアンレストランのシェフなどからなる会員を持つItchefという団体が主催し、7回目の開催となった2014年の会場はニューヨークでした。ミラノ、ポンペイのイタリアの都市だけでなくニュージーランド、アラブ諸国、中国、南アフリカの各都市とビデオで同時中継しながら代表シェフが実際に調理して協議をすすめ、最終的にパスタ・アル・ポモドーロの条件としてまとめられた5つの基本ルールはが以下。

1、パスタ:80グラムを基本とする
2、茹で方:『1:1:1』のパスタ黄金律に倣い、100gのパスタに対して湯1リットル、塩は10g(海水程度の塩分を感じるべき)。
パスタが乾いてしまわないよう、水を切りすぎない。ゆで時間の最後の2分間はトマトソースの中で仕上げるというのは鉄則。
3、トマト:夏はフレッシュトマト、冬にはトマトの水煮を湯むきした瓶詰を使用。質の良い水煮は時にフレッシュトマトを上回る。ソースに適したトマトはサンマルツァーノ種、シチリアのチリエジーノ種(チェリートマト)、樹になったまま地上で半干しにされるシチリアのシッカーニョ ディ カルタニセッタ、ヴェスーヴィオのピエンノーロ種を最上とする。
4、オリーブオイル:トマトは酸度が高いためボディのしっかりしたオイルを選ぶ。プーリアのコラティーナ種やオリアローラ、シチリアならばノッチェラーラ、トスカーナならばキエーティのジェンティーレ種。とにかく、デリケートなオイルよりもきっぱり強めの個性を持つオイルの方が合う。
5、パルミジャーノ:入れても入れなくてもよいが、入れる場合はトマトソースの上からかけるのではなく、トマトソースと和える前にパスタの方にあらかじめ和えてからトマトソースとからめること。

出展:IDIC(国際イタリア料理デイ)の公式サイト(英語版)。イベントについてのさらに詳しい記事がご覧になれます。

サイトで公開されているレシピの多くは、トマトの酸味を和らげるために長時間炒め玉ねぎを加えて甘さを出してソースを作っていました。また、玉ねぎを加えていないものでもソースを30分から40分煮込んでコクを出しているようです。また、伝統的な家庭料理のレシピを見るとよく砂糖を少量加えるのがコツ、と書かれています。でも、もともとのホールトマトがそのまま食べられるほどバランスの良い酸味と甘みを持っていれば、そんな作業は不要と思います。はじめてそれを実感させられたのが、このラ・コッリーナのパッサータ(裏漉しという意味)でした。あまりに濃厚で瓶をさかさまにしても落ちてこない。裏漉しだけれど長時間に詰めたような濃度があり、味わいも深い。それなのに、まったく熱が入ったような雰囲気がなく、フレッシュ感を保っている。その矛盾しているような二つの特徴が、これまでにどのトマト缶、びん詰にも見当たらない衝撃的な味わいでした。そのままスプーンではぐはぐ食べても美味しい。上質なオリーブオイルを一滴垂らすと、それはもう立派なお料理でした。

濃厚なのにフレッシュなこの特別なトマトの裏ごしの個性を殺さないためにはどう調理すればよいか?さまざまな手法でパスタ・アル・ポモドーロを試してみるのがこのパッサータを輸入しているインポーター、ヴィナイオータさんの周辺ではやったもので、わたしたちも自宅であーでもないこーでもないと試してみたものでした。今ではあまり考えずに作ってしまいますが、何年も前にそうしたすったもんだの結果一応ここに落ち着いた、というところの調理ポイントを以下に書いてみます。前置きが恐ろしく長くなってしまいましたが、すべては皆さんにこのパッサータの威力を知って欲しいから。上の画像を見て頂くと伝わるでしょうか。スプーンに山盛りして傾けても、落ちてこないほどぽってり濃厚なのです。その最大の魅力を損なわないよう、以下の注意点に留意してまずはシンプルなパスタ・アル・ポモドーロを作ってみてください。その後、アレンジとして「ヴォンゴレ・ロッソ(アサリ入りトマトソース)」へと進んでもらうのが関係者満場一致のおすすめのコースです。イタリアの国民的レシピ、には名前を挙げないかもしれませんが「一番好きなパスタは?」と聞かれたら「ラ・コッリーナのパッサータでつくるヴォンゴレ・ロッソ!!!」とワタシは答えてしまいます。そのくらい、このパッサータと浅利でつくるSpagetthi al vongole rosso は、普遍的な美味しさを持つパスタ料理だと思います。浅利といえばヴォンゴレ・ビアンコ、トマトソースの入らないバージョンの方が有名と思いますが、一度ロッソで食べてみてください。ろばのウチのチビろばくん、チビろばちゃんも大好物。大人だって唐辛子を加えてちょっとだけピリッとさせたりなんかしちゃったらもうたまりません。いつ食べても美味しい飽きのこない定番メニューです。

 

<<シンプルの極みパスタ『赤』パッサータ・アル・ポモドーロの基本レシピとポイント>>

1、パスタ80gに対してパッサータ100g程度(小さ目のレードル2杯)

2、パッサータに塩をしない場合、たっぷりの湯に強めの塩加減(1リットルに15gくらい)
3、パッサータは煮詰めない(軽く温める程度)

以上がポイントです。

手順としては、パスタを少し強めの塩をしたたっぷりの湯で茹でて、その間にソースを用意する。フライパンか鍋にオリーブオイル(パスタ80gに対して大匙2杯程度)お好みで潰したニンニクを加えて弱火で熱し、火を止めてパッサータを加え、オイルと一体化するまでよく混ぜる。パスタが煮上がったら(アルデンテのわずかに手前)1分ほど軽く弱火で熱しながらソースにパスタを絡めて仕上げる。

そして、パスタが皿に盛られた瞬間から食す。これが最も大切なルールです。イタリアに暮らしていた頃、昼食時にパスタを茹でる鍋の前に立つマンマがお皿に盛り付ける前からかなりの大声で「プロンタ ラ パスタ~~~!!(パスタが用意できたわよ~)」と叫ぶのを幾度となく見てきましたが、実際にお皿に盛られる頃にはその声にやや怒気が混じり、盛られて一分を越しても誰も食卓に着かない場合の怒り心頭ぶりときたら、ちょっとした劇場といってもよいほど修羅場化していたのを「これがいわゆるイタリアマンマのDNAかあ」と面白がって見ていました。でも、いざ自分が人様の分までパスタを用意する機会を多く持つようになったときに、やはりものすごい形相で「パスタが冷めるってばあ!!!」とすごんでいたのですから、やけどしてでも茹でたてを食せよというのはイタリアにおけるどんなマナーよりも強く教え込まれる教訓で、外国人だろうとなんだろうと容赦なく染みついてしまうほど強く流布している鉄の掟だということでしょう。

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…さあ、パスタが茹で上がりますよ。フォークのご用意はいいですか?

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