Part.1 ハレなケ #土鍋調理でいつもの料理がハレ仕様に

皆さん、土鍋を何に使っていますか?回答ナンバーワンは、何と言っても「鍋物」でしょうね。そのために土鍋を買うという人がほとんどでしょう。そして、その目的で土鍋を買う人は、たいてい冬の間しか土鍋を使わないようなのです。そうすると必然的に「どこに仕舞う」問題が浮上してしまいます。それで、たっぷり入る土鍋が欲しいけれど、あまり大きいと仕舞うところがなくて大変だから、となるのです。

一方、土鍋を炊飯目的で持つ人も最近増えてきました。そういう人は、土鍋を年中出しっぱなしにしていることになりますが、ご飯を炊くの同時には鍋物が出来ないので、別の土鍋が必要ということになります。今度は「そう何個も土鍋をどうする」問題です。

ここでわたしは提案したいのです。土鍋をただの「厚手のお鍋」と考えてみることを。土鍋を他の、例えば金属のお鍋などと区別して考えるから色んな問題が起きるように思えてしまうのです。もう少し大きいお鍋が欲しいとか、もっと底が広いフライパンが欲しいなどという時に、土鍋や陶器の耐熱ウエアを選択肢に入れて欲しいのです。さらに言えば「もっと美味しく調理したい」という時に、真っ先に候補に挙げて欲しいのです。

土鍋で炊くと美味しいのは、ご飯だけではありません。普通に考えてみて、他の食材は変化がないのにお米だけが美味しく炊けるなんて、おかしいですよね?ゆっくりじわじわと熱が伝道する、遠赤外線効果がある、金っ気を帯びない、といった陶器の特徴は、お米だけでなく全ての食材、特に根菜類やお豆など、でんぷん質を含む食べものを調理するのに極めて効果的なのです。そして、わたくしママろばの経験では、鶏肉や豚のかたまり肉など、加熱の加減によっては硬く仕上がりがちな食材も、陶器だとふっくらジューシーに加熱できるように思います。

「土鍋で炊くととびきり美味しい」と誰もが認めるお米というものは、でんぷん質がアミラーゼという酵素によって甘みに分解されるという特徴があり、そのアミラーゼが最も活発に働くのが40℃~50℃といわれているのです。お米の甘みを引き出すには、沸騰までに10分程度をかけてゆっくり加熱してゆくことが大切で、土鍋はまさにその条件にぴったり。金属の鍋だと熱伝導率が良すぎて甘みが出る前に沸騰してしまうのですね。長く時間をかければ甘みが出るならばと、ずっと弱火で加熱してしまうと、今度は水分が飛ばずにべちゃべちゃの仕上がりになってしまいます。土鍋は保温力が高いので、止めた後も余熱でじわじわと中心まで火を通し、かつ余分な水分を蒸発させてくれるのです。その蒸らし過程の間にお米の粒を壊すことなく、一粒ひと粒ふっくら、シャッキリ炊き上げることができる。よく言う「お米が立つ」というのはそういうことなのです。

同様にお豆やジャガイモなどでんぷん質の、加熱しすぎると粉状になって煮崩れしやすいものも、土鍋の得意分野です。沸騰までゆっくり時間をかけ、完全に火が通る少し手前で火を止め、あとは蓋をしたまま余熱で完全に火を通す、というやり方だと形は保ったまま中まできちんと火を通すことができます。イタリアのマンマ達も「お豆だけは絶対にテラコッタの鍋で炊け」とうるさく言っていました。

以前和宏さんの5合炊きのお鍋を買われたご年配の女性が、お鍋がローストビーフを作るのに最高だったとわざわざ電話をかけてきてくださったことがありました。「有名なメーカーのホーローや鋳物の鍋、とても値の張るステンレスの多重構造のお鍋なども沢山持っているけれど、あんなにローストビーフが上手にしっとりと、かつ香ばしく仕上がったことはない」と言って、どうか制作者の和宏さんにありがとうとお伝えくださいと繰返していたその方は、定番展の時遠くから電車を乗り継いで来てくださったのでした。それはそれは、お料理がお上手そうな方でした。その日は土鍋だけでなく色々と調味料も買ってくださったのですが、ひとつひとつ「これがあればあの料理が上手くできそう」「あれにも便利そう」と、次々に美味しそうな料理名が飛び出していました。あなたの周りにもいませんか?にこやかで、優しい声でお話しをする、ちょっとふくよかでお喋りな女性が。もう、この人の作るお料理は絶対に美味しいだろうな、と少しお話しただけで確信できる、そんなひと。その方はまさにそういう人物でした。

ローストビーフのお話を聞くまでもなく、ウチでも土鍋の威力をいろいろな面から再確認していた頃でした。鶏肉とパプリカをトマトで煮込むイタリアの伝統料理。パプリカがトロトロになるまで煮るので、よく鶏肉が硬くなってしまうお料理なのですが、なぜか土鍋で作ると鶏肉がしっとりジューシーに上がるのです。

そして、その威力は土鍋だけに限ったことではありませんでした。冒頭の画像の耐熱オーブン皿。焼きおにぎりって案外難しくて、表面を焼きつけているうちにお米が乾燥してきておせんべいのようにガリッガリになってしまうことがあるのです。中まで温めようとして焼きすぎてしまうからなのか、火が強すぎるのか、フライパンや焼き網だと加減が難しいなあと思っていたら陶器という手があったのです!じわじわと温度が上がってゆく耐熱陶器は、中がふっくらする前に表面が粗焦げしてしまうという難点をあっさり解決。オーブン皿で作るのはグラタンやパエリア、重ね焼き…くらいにか思っていなかったところが、こういう使い方もあったか!と膝を打ちました。陶器は中身のジューシーさを保つということが、本当に得意なんですよね。

同様に、ただお野菜をくたくたに煮る、ジャガイモや人参をホクホクと蒸かすように少量の水で煮る、などのシンプルなお野菜料理を土鍋で作ってみた時の感動ときたら!…甘い!!!これはもう、ご馳走です。

お客さまが来る時、変に凝った、お料理本と首っ引きにならなければ作れないような横文字メニューにする必要などないのです。ただの肉じゃが、ただのジャガイモの煮っ転がし、カブを炊いたん…。食べ慣れたお料理ですが、土鍋で調理した物をお客さまに出すと「なんでこんなに美味しいの?」と驚かれます。目新しいお料理をセンス良く並べるのも憧れますが、良く慣れ親しんだお料理を美味しく出せる方が、おもてなし上手に見られるような気がするのですがいかがでしょう?

これは、パパろばと二人でお店で昼食を食べる時に本当によくやる野菜のオリーブオイル蒸し。この画像はカブですが、菜花や小松菜、大根なども葉っぱごとザクザク切って、ちょっとだけ塩をしてオイルを回しかけ、蓋をしたら後はストーブの上に放置。ジュジュッと音がしてきたらお箸でざっくりと混ぜてまた蓋をして数分。アツアツを頬張ると、小松菜や菜花の茎がホクホクとして「世の中にこんなに美味しいモノがあったのか」というほど旨い。こういうものを食べるとよくパパろばが「俺こういうのでいいんだけどな~」を繰り返します。こんな、材料はカブと塩とオリーブオイルだけ、というシンプルといえば聞こえがよいが、なんの工夫もないただのお惣菜が十分おもてなし料理として通用してしまうのも、ほっくり仕上げてくれる分厚い土鍋のおかげです。

ほら、とっても美味しそうでしょう?和宏さんの黒い器に白と緑が美しい!わたしもパパろばも、黒い器に緑が映える様子にいつも心を奪われてしまうのです。余ったカブの葉っぱは、さっと茹でてよく水気を絞り、小さく切ってお塩と炒りゴマと一緒に炊きたてのご飯に混ぜ込み菜飯にすると美味しいですよ。ほら、やっぱり黒は緑が引き立つ!

菜飯はおむすびにするとこれまた立派なおもてなし料理に。実は本日、この記事を書いておりますこの日は『ハレもケも』最終日でした。ケのお料理でも十分ハレの食卓を演出できる、という意味と感謝の気持ちを込めて、壷田家から送られてきた高千穂のお米を和宏さんの土鍋で炊いたお米で菜飯をつくり、今日いらしたお客さまに一口おむすびにしてお出ししていました。もちろんお味噌汁も、土鍋で作りましたよ。壷田家では何でも土鍋で作っていました。今日もストーブで温めていたのですが、一日かけっぱなしだと煮詰まってしまいます。土鍋はストーブから下してもずうっと温かいままなので、時間差でやってくるお客さまにアツアツでお出しするのに都合がよく助かりました。

そう、土鍋は、もうひとつの選択肢なのです。大きい、厚手の、料理が上手に仕上がるお鍋。その上温もりのある姿が愛らしい…。冬だけしか引っ張り出さないなんて、勿体ない。毎日、365日、使ってあげましょう。ほらほら、ずうっと棚に仕舞いっぱなしだと、また言われてしまいますよ。あの、有名な決めゼリフ。

「はよ、炊いて~な」、をね。

昨年12月15 日から始まった『ハレもケも』、実店舗では本日が最終日となりました。昨日は「ずっと土鍋が気になっていて…」と女性二人、男性一人という組み合わせで東京から駆けつけてくださったお客さまがいらっしゃいました。二人の女性がそれぞれにスティッチとコロン、どちらにしようか決めかねてお互いに譲り合っていたかと思うと「じゃあ、わたしはこっち!」と思い切って決定。するともう一方の女性が「それならわたしはこっち!」と平和に解決。なんと幸せな土鍋たち。色合いも似ているこの二人(土鍋)、可愛らしい女性お二人に大事そうに抱えられ、一緒の車に乗り込んで、仲良く東京へと旅立ってゆきました。明日ですべての展示が終わってしまう、というその日。ちょうどわたしが「一番気に入っていて、真っ先にお嫁に行くに違いないと思っていたスティッチがこんな後まで残るなんて…。人の好みは本当にそれぞれだね。」とパパろばにため息まじりに話しかけていた、そのセリフを言い終わるか終らないかの内に起こった、ミラクルのようなタイミングの出来事でした。

ほかにも、前半後半と何度か足を運んでくださったお客さまで「今日で終わりと覚えていたので最後にどうしても見たくて」と見納めに来てくださった方もいらしたり…。わたしたち二人だけでなく、こんなにもこの『ハレもケも』が終わってしまうのを寂しく思ってくださる方がいらっしゃる、ということに感動した最終日でした。

こうしてお届けしてきた、壷田亜矢・和宏 暮らす陶 『ハレもケも』の展示は、本日を持ちまして全て終了いたしました。足をお運びいただきました皆さま、本当にありがとうござました。心より、感謝いたします

Onlineでの販売も、明日14日で終了とさせていただきます。あとわずかではございますが、どうかじっくりと、お二人の暮らしがそのままカタチになったかのような生き生きとした姿、お楽しみいだだけますように。

『ハレもケもOnline』のページはコチラです。

この記事をシェアする
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on Google+
Google+

関連記事