愛らしい子象柄が登場。定番花唐草では霊芝バージョンも新鮮。沼田智也さんの新着作品から。

ろばの家では数少ない絵付け作品。茨城県高萩市ご出身、制作の拠点も高萩に置く沼田智也さんの手によるものです。

お店のあるつくば市から北に100㎞弱のところにある高萩市。毎回なにかしら新作の柄が登場するため、作品を見に高萩を訪ねるのが楽しみで仕方がないのです。その上沼田さんも自慢するように高萩は海も山も美しく(勝手に茨城の南仏と呼んでいます)、夏になると特に行きたくなる場所でもあります。

自粛期間も挟んでしまったこともあり、今回の訪問は前回からかなり間が空いてしまいました。実は上の子象模様も、昨年の秋頃から沼田さんのそば猪口や小皿に登場していたようなのですが、わたしたちにとっては初めての出会い。

なんとまあ、愛らしいこと愛らしいこと…。画像で伝わるでしょうか。子象たちみんな、ちゃんと目も描かれています。絵の具が濃くたまっていてみえにくい子もいますが、よくみるとちゃんと点、で描かれている。その目の雰囲気で表情が微妙に変わって見えます。

沼田さんは単に「象」と呼んでいましたが、一目見た瞬間からその愛らしい姿は「子象」にしか見えず、子象文様と呼ぶことにしました。だって、成象?大人の象の柄は、以前もっと写実的な絵柄で登場していましたし。

そしてなぜだかこの子象、哀愁漂うというか、ポツネンと寂しそうというか、いたいけな姿に思わず拾ってあげなくては…という気持ちにさせられます。多分、ひとりぽっちで描かれているからですね。子象って、母象とセットで見ることが多いですものね。

沼田さんの絵付けのそば猪口や小皿、柄違いで少しずつ集めているという方も多いと思います。

定番の花、蝶、鳥、という柄から始まり、鳥から派生した飛行機、そこから車、船、で陸海空シリーズ。わたしたちが益子の陶器市で陸海空シリーズに出会い、はじめて作品を扱わせていただいた時から、もう何年たってしまったのでしょう…。

沼田さんの筆のいたずらから生まれる新しい柄がシリーズ化され、さらに展開されてゆく様子や、その誕生秘話を聞かせていただくことは、わたしたちにとって最も楽しくて贅沢な時間でもあります。作っている本人から、それを直接聞くことができるなんて!そのワクワクを、沼田さんの作品を手にする方にもお伝えしたい、いつもそう思ってしまいます。

古典柄の雨傘がクラゲになり、クラゲが宇宙人になり、UFO柄まで飛び出したかと思うと新・ゴジラ柄が登場したり。HPでも誕生秘話をご紹介してきました。

さりげなく流行りものも取り入れてしまう遊び心と、古典柄になんらかヌマタ流の解釈、アレンジを加えて密かに「誰か気づくかな?」と何にも言わずに黙ってそうっと並べてみるいたずらっ子ぶり。沼田さん、だな~。

あ、沼田さん、せっかく自粛期間にこもりっきりで制作していたなら、どこかにマスク描いてみたらよかったのに!「よく見るとマスクしてる子象がいる!」なんていうの、面白かったのになあ。後世、「これは沼田智也のコロナ時代の作品ですね。絵付けの中にマスクが登場したのは2020年だけのはずです」なんて専門家にコメントされたかもしれないのに~(笑)。

でも本当に、沼田さんにとって描くもののモチーフはきっと、何でもよいのでしょうね。インスピレーションさえ受けられれば、どんなモチーフでも沼田調に変調できてしまう気がします。

沼田さんは下描きしたり、デッサンを紙に描いてから写して絵付けしたりせず、毎回すべて一発勝負。イメージが決まったら本番の作品に直接一気に描いてしまいます。描いているうちに違う柄に仕上がってしまうことさえあるとか。

今回お邪魔した時に、ろくろを挽いたり絵付けを施したりといった実際の制作にかかる時間よりも、作品を前に「さて、何を描こうか」とモチーフが決まるまでの時間が、もしかすると一番長いのかもしれません…とお話ししていました。

何か特定のイメージが降りてくる、その瞬間までの空白。

いったん降りてきてしまえば、あとはすべて筆の動くままに身体を任せるだけなのでしょうね。その空白の時間はきっと、とある重圧をともなうものであるはずです。描かれている絵柄の面白みや美しさの後ろに、そういった空白の時間の苦しみやバッチリ描き切れた時の喜びや、意図せず生まれた新しい柄に出会えた時のワクワク感など、沼田さんのさまざまな想いが隠れていると思うと、ただ華やかに感じる絵付けの作品を手にした時の見方が少し、変わるような気がしました。

さてさて、今回はあまりに子象が愛らしくて、子象の作品を見つけるたびに「あ、ここにもいた!」と選んでしまったのですが、皆さんに見ていただきたいのは子象文だけではないのです。

沼田さんの定番的な柄はいくつも種類があって、中には古典柄のものが手本となっているものも沢山あります。そして定番の柄にも無数にバリエーションがあり、だからこそ毎回同じ柄を選んでも飽きないのです。変化球が沢山ある、むしろ変化球の方が多い…。

沼田さん特有の淡い筆致が生きる花唐草。

でも今回わたしたち選んできた花唐草は、どちらかというと濃いめにハッキリ描かれたものも多くあります。下は古典柄の霊芝(レイシ)文と呼ばれる柄を沼田さん流にアレンジして花唐草模様に描いていますが、どこかアジアや異国を感じる雰囲気もあって、うつわとしてそこに盛るお料理もどちらにも転べそうな面白さがあります。同じ霊芝の柄でも、いろいろ表情が違うので雰囲気ががらりと変わります。


はじめからアンティークっぽいこなれた感じが出ているところは沼田さんの作品の魅力のひとつだと思うのですが、定番の花唐草も霊芝の花唐草も、もその魅力が全面に出ています。夏のテーブルに、このブルーが加わるだけでふっと涼し気な印象になりますよね。冷たいお料理、いろいろ浮かんできます。

ほかにも、女性か小学生くらいのお子様にもちょうどよい小ぶりの飯椀や小鉢でトンボや魚の模様など夏らしい絵付けがほどこされた作品や、繊細な赤絵の作品など、少しずつ進化する沼田ワールドを存分に楽しんでいただける作品をつくばに持ち帰りました。

往復2時間近くかけて高萩まで出かける甲斐がある!と嬉しくなってしまうようなサプライズ作品も。作っていることさえ知らなかった絵付けのタイル。ヨーロッパの骨董市でほこりをかぶっていそうな掘り出し物感満載のこの作品。ひたすら美しい!キッチンに何げなく置いて鍋敷きに使ったり、窓辺に立てかけて置いたり…。これは今後ぜひ色々なサイズで作っていただきたい。こういう思いもしない作品に出会えるのは、直接訪ねていけることの醍醐味ですよね。ああ、嬉しい。


まだまだ、ここではご紹介しきれない素敵な作品が沢山です。ぜひひとつひとつ、沼田さんの筆の動きを追ってみてください。

沼田智也さんの作品はこちらです。

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