目に浮かぶ風景をガラスに投影して。抽象画のように幻想的な砂田夏海さんのガラス作品。

先日の入荷にともない、藤原夕貴さんの和菓子セットを販売した時から多くのお問い合わせをいただいておりました砂田夏海さんのガラス作品をオンラインにも掲載いたしました。

2017年に筑波大学芸術専門学群を卒業され、ガラス工房で働きながら2018年から作家活動を開始した砂田夏海さん。現在は東京墨田区にあるシェアアトリエと千葉県のご自宅を往復しながら制作をされています。

花器やアクセサリー、そしてうつわ、小物入れなどの作品はいずれも一点一点表情の違う絵画のような作品で、そこにあるだけで特別な存在感があります。

パパろばが通うワインバーで店主から砂田さんのガラス作品を見せてもらい、直接ご紹介していただいたのがきっかけで話はとんとん拍子に進みました。砂田さんはつくば市内にある高校で美術の教員として働きながら、短期間そのお店でアルバイトをしていたことがあったのです。砂田さんが通っていた筑波大学は、ろばの家がある天久保から歩いても行ける距離。共通の友人もちらほらいたりして、ますますご縁を感じてしまいました。パッと見クールな雰囲気の砂田さん。お話しすると一点、さばさばしてとても話しやすく、なんだか今知り合ったような気がしないほどでした。食べる事やワインもお好きで、パパろばとも話が弾むという珍しい現象に。先に知り合いになったパパろばに砂田さんを紹介していただいた、という経緯があったからかもしれませんね(笑)。

砂田さんにお願いして、作品をあれこれ見せていただきすぐに取り扱いをお願いしたのでした。作家活動を開始して間もないというのに、すでに独自の個性を確立されていて軽い衝撃を覚えました。

砂田夏海、というペンネームのようなお名前もガラスと無縁に思えませんよね。似合いすぎ…。つくば繋がりでご縁をいただけて、なんてラッキーだったんでしょう。

みなさん、ガラス作家さんというと、どうしても吹きガラスの様子を思い浮かべてしまいませんか?

砂田さんの作品は、パート・ド・ヴェールと呼ばれる手法で、型に入れてガラスを溶かしてつくる、陶芸で言うと鋳込みのような作り方をするガラス作品です。記事の最後に、砂田さんに説明していただいた工程をざっくりと説明したものをご紹介しますのでぜひご覧になってみてください。ざっくりですが!と教えてくださった工程でもすでに、気が遠くなるほど複雑です。。。

ガラスに岩絵の具を混ぜて絵画のような表現ができるところが、この手法のもっとも魅力的なところ、と砂田さん。

大学2年の時の課題で「異なる素材を組み合わせる表現」というものがあり、ガラスと日本画に使われる顔料を使ったのがそもそものきっかけだそう。その時に出会った教授がその手法の先駆者であったこともあって卒業後も交流を持ち、現在もいろいろなアドバイスをもらったり、先生の作品から刺激を受けたりしているのだそうです。

そしてその時から、ガラスという素材に急速に惹かれて行ったとお話ししていました。ガラスは、ガラスにしかない透明感、質感、壊れやすさも含めて儚さ、というような特徴があり、どの素材もその代わりを務めることはできません。

砂田さんが「Shijima」と呼んで水面にゆらぐ影のようなイメージで制作している今回届いたシリーズには、霞(黒ベースの色)、小春(桜色ベースの色)の2色を定番としています。その時その時の絵の具の配合などで、ひとつひとつが全く異なる表情を持つことも砂田さんの作品の大きな特徴。

その、色の構成、透明な部分と白く濁る部分の割合、全体的なイメージは、かなり狙って、それこそ絵画のようにその時の季節感や自分の気分で描き分けているのだそうです。

そのうえで、やはり溶けて出来上がってきてみないとわからない偶然性がある。色味に関しても、黒が青っぽく発色したり緑がかって出たり、桜色も微妙にトーンが変わり意図しきれない未知の部分も多い。

混ざりあってできるマーブル模様や、流れなどまでコントロールすることはできないのです。偶然性と必然性の間で生まれる表現だからこそ、より一層儚さが際立つのかもしれません。

今回届いたShijimaシリーズは、特に小春はより淡く、ほとんど白に近い中にかすかに桜色がゆらぐイメージ。夏の海辺で拾った桜貝の模様のようです(画像下のそば猪口左は小春、右は霞)。

霞は逆に、夏の終わりに急に立ち込める雨雲のように、墨色の集まった部分に緊張感を感じられるような色合いが目立ちます。

いかにも夏の終わりを予感させるような透け具合に、砂田さんの描いていたイメージが風景となって見えてきそうです。

今はこの、夏の終わりならではの涼し気な模様、存分に感じてみてください。見る人によってそれは、雲に見えたり、波に見えたり、石の模様に見えたり、はたまた木陰にゆらぐ太陽の影に見えたり…抽象画のように自由なイメージを喚起できる、そんな特別なガラスです。

硝子のうつわは他の素材との組み合わせも楽しい。下に置く陶器の色合いでまた違った表情を楽しめるところも、透ける素材ならではの面白さです。

砂田さんの作品はこちらです。



砂田夏海さんプロフィール

1994 石川県生まれ

2017    筑波大学芸術専門学群構成専攻クラフト領域卒業
ガラス工房「秀緑」キルンワークスタッフ

​2018 iGLASS STUDIO所属

2019 硝子企画舎所属

 


では、パート・ド・ヴェールの工程を簡単に。

下の画像が焼き上がって仕上げを待つ状態です(これがドラ鉢になります)。
磨かれる前の状態でも、美しいだなんて、やはりガラスという素材の特別さなのでしょうか。

①石膏型を作る(ご自身で陶器の粘土をろくろで挽いて原型をつくり、シリコンで型をとって作ります)

②ガラスをつめる
(白(透明)パウダー、岩絵の具を混ぜたパウダー、ざらめくらいの粒度のガラスの3種類を使います)

③ガラスが溶けた時にぴったり噛み合うように、上の型をかぶせる


④重石をのせて、窯で焼く(焼成から冷めるまで3~4日を要す)

⑤窯から出したら石膏を割り、ガラスを取り出す

⑥加工をして仕上げていく(ヤスリをかけてすりガラスのように仕上げる)

この時使う石膏型は、かち割って作品を取り出すため再利用することはできません。つまり、ひとつの作品にひとつの型が使われ、毎回ひとつ取り出すたびに壊さなければならないのです。

陶芸で、鋳込みの作品が型に粘土を流しいれ、いくつも同じ形の陶器を作っていける手法であることに慣れていたワタシたちは、あんぐりしてしまいました。

ふう…。気の遠くなるように長い工程です。

「だから、一度に沢山はつくれないんです。非効率ですからね」
と砂田さん。どうしても材料費や窯などの燃料代などが高くついてしまい、非日常的な価格になってしまう。

将来的には、吹きガラスでも作品をつくり、普段使いできるうつわも量産できるようにしていきたい、とも話していました。

砂田さんの吹きガラス、それはそれで興味がありますが、こうして長い工程を経て作られたパート・ド・ヴェールの作品、唯一無二の個性があり、特別感はむしろポジティブな印象でしかありません。いっそう大切に使いたい気持ちになります。

これからの活躍がますます楽しみな砂田夏海さん。現在アパレル企業とのコラボでガラスのアクセサリーも販売中だとか。気になる方はぜひこちらのページもチェックしてみてくださいね。

 

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