momento poetico #9 羽生直記さん

祈りのモビール。羽生さんが今回届けてくださったモビールたちを、ワタシはそう密かに呼んでいるのです。太陽と月、地球と太陽…なんとなく天体を思わせるオーナメントも宇宙的な何かを匂わせるのかもしれませんね。どうして祈りなのか、あまり深く追求されると自分でもわからないのですが、もう、この作品を試しに組み合わせて吊るしてみた瞬間、その響きが頭の中にあったのです。平和のモビールでも、願い事モビールでもなく、”祈りのモビール”。

モビールって動物がオーナメントになっていたり、子供向けのものが多い印象があるのですが、これはもう明らかに子どもの玩具ではありません。実は、モビールの完成形として組み合わせて作っているわけではなく、モビールの棒もオーナメントも、全て自分で好きに組み合わせられるよう単体でバラバラのパーツとして作っているものです。

羽生さんは「自分の好きなものを吊るしてもらったらいいと思うんですよね。ドライフラワーでも、グリーンでも」と、むしろ自分の作ったパーツだけで組んでもらうより、その方が嬉しいとでも言いたそう。展示中は、meinmuk石鹸の大きな石鹸も吊るしてみましたが、ほんの少し揺らすだけでも香りがふわりと立って、とても良い気持ちがしました。

「こういうの、好きそうですね~。」会期がはじまって数日経ってから突然お店に寄ってくださった羽生さんに聞くと「楽しいですね。こういうのがないと、やっていけないです。」と笑っていました。はじめ、まだ展示のタイトルが決まらず便宜的に”役立たず展”だなんて呼び方をしていたら「役立たず展…わたしにとってはよい響き…」とふたつ返事で参加してくださることになった羽生さん。ご自分の過去の作品のことを話す時「ガラクタばかり作ってたんです」とお話ししていたことを思い出します。

好きなものを吊るす…かあ。だから石のオーナメントなんだ、と納得。以前羽生さんが石を使っているのを見て、どこでこんなキレイな石を見つけてくるんですか?と尋ねたら、小田原方面の河原にゴロゴロ落ちているところがあって、と教えてくださいました。わざわざ拾いにゆくのだそうです。…確かにとても、楽しそうです(笑)

丸くすべすべの石がついたコート掛け。キャンドルスタンドは石から生えているようですし、S字のフックも石が入るだけでなんだか生き物のよう。鉄のハードなイメージが、石が入ることで少し和らぐから不思議です。石だって十分ハードなイメージなのに。わたしたちの身の回り、自然に存在するものが与える安らぎが大きいのかもしれません。

石を集めるといえば故ヨーガンレール氏がババグーリ(瑪瑙石のこと)を収集していたことは有名です。ブランド名にまでしてしまったほどですからね。レール氏の瑪瑙石を集めた写真集を見ていると、その複雑な模様が自然にできたものだとは到底信じられません。けれどもまた、人間が作り出せるような模様であるとも思えないのです。Babaghuriの吊り下げるタイプのガラスの花器を羽生さんのモビールに組み合わせてみたら、とても相性が良い。きっと羽生さんが見たら、気に入ってくれるんじゃないかと思いながら、アイビーを挿していました。

何かに追われたりすることなく、用途の制限にも必要以上に圧迫されず、ただ、夢中で鉄を打ち形を生み出すことができる時間は、羽生さんにとってどれだけ心休まる時間なのでしょう。もの静かでとても優しい羽生さん。いつもかなり控えめな印象があります。「ひどい回答ですいません」と申し訳なさそうに出して下さったアンケートのお答えがあまりにも羽生さんらしくて、思わずプリントアウトして作品の横に添えてしまいました。

「比べない」

会期が終了して、会場のレイアウトを変えた時にその紙の行き場がなくて、それでもどうしても片付けられなかったのか、パパろばが羽生さんの石のフックのところに挟んでおいたようでした。

今日「会期中どうしても来れなくて、まだ作品見れてよかった」とかけつけてくださったお客さま。高校生の娘さんと一緒だったのですが、その娘さんがわたしのところにすまなそうにその紙を持ってきてくれました。「ごめんなさい。フックを触ったら紙が落ちてしまって…」

「でも、これ、とても良い言葉ですね。これからずっと、自分に言い聞かせたていこうと思います」と恥ずかしそうに小さな声で伝えてくれました。そして、モビールのパーツをひとつだけ買って帰られました。お母さんが選んだのか、その彼女が選んだのかわかりませんが。でも、きっと彼女はこのモビールが揺れる度に、その魔法のおまじないのような言葉をつぶやくのでしょう。

モビールのことを、役立たずだなんて呼べない感じになってきてしまいましたね。…逆にがっかりされてしまったりして。


momento poetico#9 羽生直記さんへの質問

Q : 最近読んだ中で印象に残ってるいる本や記事、文章があれば教えてください。
A : 最近 本を読めていません…

Q : 今気になっている、読みたい本や写真集などあれば教えてください。
A :子育て本いろいろ でしょうか…。たくさんありすぎて 選べずにいます。

Q : 好きな作家さんのお名前をあげてください。
A : 穂村弘さん
読むとニヤニヤしてしまいます。

Q : 読書をする時は、どんなシチュエーションが多いですか?
A : 電車移動のとき

Q : 自分の人生や生き方に影響を与えたような本、文章、言葉を教えてください。 もしくは、座右の銘としている言葉、お気に入りのフレーズをあげてください。
A :座右の銘なんて 大袈裟なものではないのですが、
親に言われていた

「比べない」でしょうか。

こどものころからなんとなく気分が落ち込む原因はだいたい
まわりと比べているから
だったりすること多くて
今でもこの言葉を 自分に言い聞かせると、
少し楽になったりします。

以上です。
ほんとつまらない回答ですみません…


 

「比べない」

その言葉が救いとなったであろう瞬間が、わたしの人生の中にも沢山あった気がします。そしてもちろん、これからも沢山あるでしょう。もっともっと早く、この魔法のおまじないのような言葉に出会いたかったなあ。チビろばたちには、ここぞという時にちちんぷいぷいしてあげよう。

…子育て本なんて、読まなくっていいと思いますよ、羽生さん(笑)。

羽生さんは、モビールのパーツやオーナメント、シャラシャラとぶつかる音がきれいな雨音チェーン、ジョイントに使える石のフック、スツールやランプなど沢山届けてくださいました。素敵な作品と素敵な言葉をありがとうございます。

羽生直記さんの作品をmomento poetico Onlineページに掲載いたしました。



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