長く使い続けられる、宮下さんの山桜のおしゃもじ&サーバー。

2018年の『定番展』以来、すっかり定番化した山桜のおしゃもじ。宮下敬史さんの削り仕事の丁寧さが一番よくわかる美しく優雅な姿と使い勝手の良さで、自分用とプレゼント用にと、2本以上求める方もいるほど絶大な信頼を置かれている存在です。おしゃもじやサーバーって、毎日使う身近な道具であるはずなのに、本当に気に入るものに出会うことの少ない難しいアイテムでもあります。「これは!」と思うモノに出会うと、つい誰かに教えたくなってしまうその気持ち、よくわかります。

『定番』と呼んでいますがこのおしゃもじ、以前のモデルとほんの少しずつデザインが変わりながら今の形にたどり着きました。定番展の時には柄の付け根の部分にあったわずかな段差がなくなり、おしゃもじの掬う面から柄に続くラインが平らに、フラットになっていました。たったそれだけの違いで、こんなにも洗練された印象に代わるものなのかとびっくりしたものです。もちろん、そこを変えたからにはバランスを取るために全体のラインも変えてありました。より美しく、より手になじむように、とミリ単位で改良を繰返し、毎回届くたびに少しずつデザインが違うのです。それは本当にわずかな、言われなければ気が付かない違いかもしれません。でも宮下さんは一度気になりだすと徹底的に調整せずにはすまなくなってしまうのだそうで、ずうっと削り続けて迷宮入りしてしまう日もあるとか(笑)。「これが定番と決めてしまわず改良を繰り返すのが僕の定番です」と宮下さん。

見た目も美しいこのおしゃもじ。なんといっても使いやすい。鍋肌にフィットしてお米粒を残さない絶妙なカーブと、手に吸い付いてくる持ち易い柄。薄くてご飯の返しが楽で、手彫りの跡が米粒もつきにくく作用し…と、良いところを並べたらきりがないくらい。特に炊き立てのご飯に十字に切り目を入れ、1/4ずつひっくり返す際にそのエッジの薄さがいかに重要かということに気が付きます。分厚いものでそれをやろうとすると、せっかくツヤツヤに炊き上がったお米の粒をつぶしてしまうのです。だから、おしゃもじというのは平らにできているんですね。

使う前に5分ほど水につけて置くと、よりご飯がくっつきにくく快適に使えます。

おしゃもじと同様に愛用しているのが山桜のサーバー。LとSの2サイズ展開。いずれも窪みが浅めなのでおしゃもじとしても使えます。

わたしは断然おしゃもじの方がご飯をよそいやすい、と思うのですがパパろばはご飯にもサーバーの方が使いやすい、と言うので個人的な好みはあると思います。

おしゃもじをサーバーとして使うのは難しいので、サーバーの方が一石二鳥でお得!と思いがちですが、実際にはどちらかをご飯専用にしてしまう方が多いので、サーバーをご飯にもおかずにも、と使っている人は少ないかもしれません。

「進化し続けるのが僕の定番」と言い切っていただけあって、サーバーも届く度に少しずつ印象が変わりながら今の形になっています。前回入ってきた時はかなり変わった印象でした。以前はもっとキッチリ左右対称だったような…。柄の持ってみた感じも違う気がする。気のせいから?と思い宮下さんに聞いてみると、


「最近は型をなぞってから、あえてフリーハンドで線を付け加える、ということをやっています。なんだか、ひとつひとつ、カッコイイものを作りたいという衝動をとても強く感じるんです、今は。」

という答えが。特に小ぶりのサーバーに関してはまったくのフリーハンドで形を決めているので多少アシンメトリー感が強いかも、ともお話されていました。節や木材の木目、流れなどに合わせて微妙にカーブも変えてゆくので、より一点物という感じが強く出るのかもしれません。それでも、実際に使って使い勝手を確かめ、ミリ単位で改良を重ねてゆくという姿勢は常に同じ。サーバーは、より食べ物を掬いやすくするため先端の角度や厚さを変えて調整しているのだとか。カトラリーもうつわも、だんだんといい感じになってきている手応えがある、と話していました。「ひとりよがりかもしれないですけど…」と照れくさそうに一言付け加えるところも宮下さんらしい(笑)。

宮下さんの木のカトラリーの最大の特徴は、やすりをかけずに細部までナイフで仕上げているところ。やすりをかけてなめらかにすれば一見すべすべに思えますが、表面積を増やすことになり水が浸みやすくなってしまうのです。それが劣化を早める。よおくエッジを見ると、曲線ではなく無数の直線によってラインを形づくっているのがわかります。その手数の多さに気が遠くなってしまいそうです。「手はかかるけど、絶対こっちの方が長持ちするから」。宮下さんのナイフの一投一投に、その思いが込められているのだなあと思うと、愛用のスプーンやナイフのエッジを眺め得られるたとえようのない温かさ、安心感に納得がゆくのです。木のカトラリーの温かさは、単純に金属と比べたときの温度感ではないのかもしれません。

カトラリーのように、数をこなさなければいけない仕事はどうしてもルーティンに陥りがちだと思うのです。それを、一刀一刀、「もっと使いやすく」「もっと美しく」と磨きをかけてゆけるモチベーションを保つのは、本当に至難の業だと思います。宮下さんのように「これが完成形と決めず、常に進化し続ける」という姿勢は実は、そのモチベーションを保つのに最良の選択なのかもしれません。一本いっぽん異なるゆらぐような、でも迷いはないような力強いエッジと、伸びやかに広がる木目の線を眺めていると、そんな風に思えてきました。

宮下敬史さんのページはコチラです。
*この記事は、2018年9月に公開された『美しい姿の山桜のおしゃもじ。より使いやすく、常に進化し続けるスタイルが定番』という記事に最新の情報を加えリライトしたものです。重複する内容がございますがご了承ください。

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