宮下さんの山桜のカトラリーに小ぶりなサーバーも登場。

昨年の『定番展』でとても話題になった山桜のおしゃもじ。宮下敬史さんの削り仕事の丁寧さが一番よくわかる、美しく優雅な姿と使い勝手の良さで、自分用のとプレゼント用のと、2本以上求める方が多かったのも印象に残りました。おしゃもじやサーバーって、毎日使う、とても身近な道具であるはずなのに、本当に気に入るものに出会うことの少ない、難しいアイテムでもあります。「これは!」と思うモノに出会うと、つい誰かに教えたくなってしまうその気持ち、よくわかります。

『定番』と呼んでいますがこのおしゃもじ、実は従来のモデルとほんの少しずつデザインが変わってきているのです。定番展の時には柄の付け根の部分にあったわずかな段差がなくなり、おしゃもじの掬う面から柄に続くラインが平らに、フラットになっていました。たったそれだけの違いで、こんなにも洗練された印象に代わるものなのかとびっくりしたものです。もちろん、そこを変えたからにはバランスを取るために全体のラインも変えてありました。より美しく、より手になじむように、とミリ単位で改良を繰返し、毎回届くたびに少しずつデザインが違うのです。それは本当にわずかな、言われなければ気が付かない違いかもしれません。でも宮下さんは一度気になりだすと徹底的に調整せずにはすまなくなってしまうのだそうで、ずうっと削り続けて迷宮入りしてしまう日もあるとか(笑)。「これが定番と決めてしまわず改良を繰り返すのが僕の定番です」と宮下さん。

見た目も美しいこのおしゃもじ。なんといっても使いやすい。鍋肌にフィットしてお米粒を残さない絶妙なカーブと、手に吸い付いてくる持ち易い柄。薄くてご飯の返しが楽で、手彫りの跡が米粒もつきにくく作用し…と、良いところを並べたらきりがないくらい。特に炊き立てのご飯に十字に切り目を入れ、1/4ずつひっくり返す際にそのエッジの薄さがいかに重要かということに気が付きます。分厚いものでそれをやろうとすると、せっかくツヤツヤに炊き上がったお米の粒をつぶしてしまうのです。だから、おしゃもじというのは平らにできているんですね。

定番展でも早々に完売してしまい、再入荷のお問い合わせも多かったこのおしゃもじ。今回は、新作のサーバーと一緒にろばの家に届きました。サーバーは2サイズ。Sサイズの小ぶりな方が新作で、これまではおしゃもじと同じ大きさのサーバーしか見たことがありませんでした。このサーバー、窪みが浅めなのでおしゃもじとしても使えます。逆におしゃもじをサーバーとして使うのは難しいので、サーバーの方が一石二鳥でお得!と思いがちですが、実際には、おしゃもじは毎日使うので仮にサーバーとしても使えたとしても、ご飯専用にしてしまう方の方が多いのですが。

さてさて「進化し続けるのが僕の定番」と言い切っていただけあって、今回も何やらサーバーの印象が違う???以前はもっと、キッチリ左右対称だったような…。柄の持ってみた感じもなんだかフラットになった気がする。気のせいから?と思い宮下さんに聞いてみると、


「最近は型をなぞってから、あえてフリーハンドで線を付け加える、ということをやっています。なんだか、ひとつひとつ、カッコイイものを作りたいという衝動をとても強く感じるんです、今は。」

という答えが。特に小ぶりの新作サーバーに関してはまったくのフリーハンドで形を決めているので多少アシンメトリー感が強いかも、ともお話されていました。節や木材の木目、流れなどに合わせて微妙にカーブも変えてゆくので、より一点物という感じが強く出るのかもしれません。それでも、実際に使って使い勝手を確かめ、ミリ単位で改良を重ねてゆくという姿勢は常に同じ。サーバーは、より食べ物を掬いやすくするため先端の角度や厚さを変えて調整しているのだとか。カトラリーもうつわも、だんだんといい感じになってきている手応えがある、と言っていました。「ひとりよがりかもしれないですけど…」と照れくさそうに一言付け加えるところも宮下さんらしい(笑)。

カトラリーのように、数をこなさなければいけない仕事はどうしてもルーティンに陥りがちだと思うのです。それを、一刀一刀、「もっと使いやすく」「もっと美しく」と磨きをかけてゆけるモチベーションを保つのは、本当に至難の業だと思います。宮下さんのように「これが完成形と決めず、常に進化し続ける」という姿勢は実は、そのモチベーションを保つのに最良の選択なのかもしれません。新しく届いたサーバーの、ゆらぐような、でも迷いはないような力強いエッジと、思い思いに伸びやかに広がる木目の線を眺めていると、そんな風に思えてきました。

これは、近いうちに到着する予定の(と大きく期待している)、大きめの木のうつわたちの仕上がりが楽しみでなりません。ずうっと以前から「宮下さんの大き目のカッコイイ作品が見たいです」とお願いしているので、その力強い作品たちの到着をひたすら待っているのです。皆さんも(気長に)楽しみにしててくださいね。

宮下敬史さんのページはコチラです。
*この記事は、2018年9月に公開された『美しい姿の山桜のおしゃもじ。より使いやすく、常に進化し続けるスタイルが定番』という記事をリライトしたものです。重複する内容がございますがご了承ください。

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