丁寧なつくりが安心の鉄のフライパン。簡単、かつ正しいお手入れで一生ものに。

2018年9月の『定番展』の時以来、ご予約のみで販売をさせていただいている羽生直記さんの鉄のフライパン。今回で4回目の受注会となります。昨年末にご予約いただいたフライパンを、先月やっとお届けしたばかりです。半年以上待って手にしたフライパンをどのような思いで使われるのだろう、と想像していたら「あれ最高ね。今までいろいろな鉄製フライパンを試して挫折してきたけど、今度は大丈夫そう。一回油慣らししただけで、次から問題なく使えてるわ」とお客さまから喜びの声をいただき、とても安心しました。だって、その時の記事『ひとつは欲しい、鉄のフライパン。一本いっぽん手で打ったモノの違いは歴然です』でもご紹介した通りの、ママろばの大絶賛ぶりに圧倒されて購入した方も少なからずいらしたはずですから(笑)。やはりその責任は引き受けなければなりません。

自分でお勧めしておいてなんですが、確かにワタシの言い方自体は大袈裟だったかもしれません。でも、そうなってしまうのは仕方がないというか、本当にそう思っているからつい力説してしまうだけのことなのです。「そこまで言うなら」と半信半疑で買われた方の中には「同じようなこと言われて買ったフライパンも、結局くっついてダメにしたからな~」というような経験を話してくださった方がもいらしたのです。…ああ、よかった。嘘つきと思われずに済む、と心からホッとしました。

鉄のフライパンは、以下のポイントさえ守れば錆びたり表面に傷がついたりせず、長く、それこそ一生使い続けられる優秀な道具です。待って待って手にしていただいた方も、これから購入を検討されている方もこれだけは知っておいていただきたい。

1、使ったら熱いうちに流水と束子(ササラでも可)で洗い、空焚きして完全に水分を飛ばす。
2、テーブルやステンレスなどわずかでも水分のある場所に長時間平置きしない(吊り下げて保管するのがベスト)。
3、焦げ付いてしまった時は無理にこすらず、水を張って火にかけ、焦げが柔らかくなったら熱いうちに束子で優しくこすって落とす。金束子やクレンザーなどは鉄の表面を傷めるので使わない。
4、食材を入れっぱなしにしない。

以上です。とにかく「使ったらすぐ洗う→火にかけて水分を飛ばす」これが一番のポイントです。

そして、これも大事なことですが、束子はゴシゴシ力を入れてはダメですよ!かくいうワタシも数年前までかなり誤解していて、思いっきり力を入れてゴシゴシゴシゴシ、これでもかとこすっては???あれ?まだとれないなゴシゴシゴシゴシ~~っとやっていたクチなのですが、それは逆効果です。あらゆるブラシは、毛の先端を汚れに垂直にあてるよう設計されています。歯ブラシと同じ原理です。毛が広がってしまうと毛の側面で汚れを落とすことになり、効果がないのです。実はこの当たり前の事実に気が付いたのは土井善晴さんの『おいしいもののまわり』というエッセイを読んでいた時で、土井さんが調理場で修業していたころ、ある時ふと気が付いて優しく「きれいになれ」と願いながら鍋を磨くようになり、その途端汚れが楽に落ちるようになった、というような内容の一節がありました。「わ!わたし力入れてたわ~」と焦り、早速台所で実践。束子に力を込めないようにしてみた途端、本当に嘘のように汚れが落ちて、はは~!と恐れ入った次第です。ちなみにこの本、料理を志す方にはぜひ読んで頂きたい名著です。有名な料理家の中には鋭い感性で文章を書く方が沢山いらっしゃいますが、土井さんは辰巳芳子さんと並んで簡潔にしてズバリと核心をついた、素晴らしい文章を書かれます。料理家としてだけでなく、文筆家としても尊敬しています。文筆家としては高山なおみさんも大好きですが、またタイプが違いますよね…と、また話がそれてしまいました。

こうして使い込んであげえると、鉄はだんだんと黒色が濃くなり、質感も変化してゆきます。真っ黒になるまで使い込んだころには、表面の凹凸に常に微量の油分が浸みこみ、一層くっつきにくくなります。使い込めば込むほど使いやすくなってゆくなんて、どんどんお料理してみるしかないですよね。ちなみに下の画像左側は未使用状態の鉄の色。右側はろばのウチで5年以上使っているもの(平ハンドルS)で、かなり黒々した色に変わっています。

さて、そのワタシたちが大事に大事に使い込んできたフライパン。皆さんにまたご案内できる機会をいだだきました。会場では使用前のものと使い込んだものの変化を見比べていただけます。

羽生さんとは、理想は年に2回ほどご予約会ができればいいねと話していましたが、お一人で作られているのでオーダーが集中すると半年でも間に合わないことも出てきてしまいます。当時「今のところ、がんばって作っても月に15本、多くて20本くらいしかフライパンを作れません」と聞いた時には、3年前に羽生さんが腕の腱を痛めた時のことを思い出しました。鉄を打っている時には腱鞘炎などになりかけていても気が付かないのだそうです。無理をして長時間作業してしまうと、後から症状が出る。そのため事前に予防することが難しいのです。昨年羽生さんが腱鞘炎になりかけ、納品が大幅に遅れてしまったことがありました。それ以来、一日に制作する数量の上限を自分で決め、その数以上は余裕があっても続行しないよう気を付けることにしたと教えてくれました。フライパンだけを制作しているのであればもう少しまとまった数を制作できるかもしれませんが、ランプシェードをはじめ他にもいろいろな道具を作っているのですから、打って成形する面積の広いフライパンばかりを制作すれば、作家寿命を極端に縮めてしまうことになります。待ってくださっている方がいる中、クラフトフェアなどに出来上がったフライパンを沢山持って行くのも申し訳ないと思い「今後はそういった場でも予約販売(受注制)をとろうと考えています。」と羽生さん。とても共感できました。

納品が遅れてしまった方にお詫びのメールを差し上げた際、遅延にクレームをつけるどころか「待つ時間も楽しみのひとつです。どうかお身体を最優先させてください」と羽生さんの腕の様態を心配してくださる方ばかりで、つくづくよいお客さまに恵まれたとありがたくなりました。

「本当に欲しいものは、すぐに手に入れない方がいいよ。待った分だけ大切にするから」と、結婚したての頃に札幌のバーのバーテンダーさんから言われたことがあります。その方はいつもさりげなく素敵な格好をされていて、とても大人なイメージだったのですが今ようやっと自分たちもそれを実感できる歳になってきました。

待った分だけ大切に。そんな風に思っていただけるようなものをじっくりご紹介してゆけたらいいなと思います。今回の受注会でご予約を頂いたフライパンのお届けは冬も終わるころ。2月下旬までにはお届けできる見込みです。楽しみに待っていただく価値のある、かけがえのない道具になってくれることと思います。

羽生さんのフライパンのご予約はコチラから。
*そのほかの関連記事はコチラです。

*この記事は2019年3月に公開されたものを今回の受注会にともないリライトしたものです。

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