この胡椒を味わうためにカチョ・エ・ペペを作る。この胡椒がないなら作らなくていい。

…そのくらい、お料理を変えてしまう胡椒です。「今まで食べていたものは何だったのか?」これまでの概念を塗り替えられてしまうようなずば抜けた品質により、今や世界中のトップシェフから指名されるMarichaマリチャ。マレーシアのサラワク州サリケイ国立公園で出会ったKuchingクーチング種をはじめ、大手商社がその存在さえ知らずにいた希少な品種の胡椒を世界に知らしめました。ブラック、ホワイト、グリーンという分類だけでなく沢山種類がある(これまでにマリチャがリリースした胡椒は20種類ほど)のですが、そのどれを食べても「ハッ」とさせられるほど明確にクオリティーの差を実感できます。日本でも「胡椒はマリチャしか使わない」と断言するシェフがイタリアン業界のみならず中華、日本料理の世界にも沢山います。そんなお店で素晴らしいディナーが終わり、お店を後にするとき「それにしても、あの胡椒の味が忘れられないよ」とつぶやく人がいてもおかしくないだろうな…そんな想像さえアタマをよぎってしまいます。

胡椒くらいでそんな大げさな…と思うでしょうか?でも、ろばの家で商品説明を読み「そんなに違うんですか?」と半信半疑でひとつ買って帰った人が次に来た時「あれは本当にすごいですね。書いてあった通り今まで食べていた胡椒はなんだったのか、と思いました」と感動を伝えてくれる場面を何度も見てきたのです。特に食通である必要も、香りや味に敏感な繊細な舌を持つ必要もありません。誰もが否応なく気が付いてしまうほどの圧倒的な差。それがマリチャの胡椒なのです。

まず、香りの質が違います。鼻がムズムズしません。むしろ爽快です。スーッと清涼感のある香りは柑橘のピールや山椒の若芽が持つかすかなメントール感に近い。そして辛味。シンプルなブラックにあたるネロ・ディ・サラワクなどかなり鮮烈な辛味ですが、後にスッキリ抜ける感じが心地よい、痛みを伴わない辛さです。そして何よりもマリチャによって教えられた大切なことは「胡椒は香りだけでなく味わいも楽しむものなのだ」ということ。辛い、ピリリとする刺激だけではなく旨味があるのです。それにしても、マリチャの胡椒はどうしてこんなにも他のメーカーの胡椒と違うのでしょうか。マレーシア産の胡椒が珍しいわけでもないのに。

マリチャを立ち上げたのは、イタリアのヴェローナで4世代続くコーヒー焙煎所ジャマイカ・カッフェのオーナー、ジャンニ・フラージ氏。イタリアの飲食業界では「エスプレッソの王様」と呼ばれています。彼のコーヒー豆はそれこそ星つきのリストランテや名だたるバールで使われていますが、一時は豆を使う条件としてはジャンニ自らエスプレッソマシンの調整に行くことと決められていたと聞きます。実は当店でもこのジャマイカ・カッフェのオリジナルブレンドでエスプレッソをいれているのですが、マシンもジャンニが推薦するファエーマというメーカーのエスプレッソマシンe-61というモデルを使っています。さすがに日本までは調整に来てはくれませんでしたが(笑)。ジャンニが登場するインタビューなどを見るとコーヒー屋さんがスパイスも扱うのは昔は比較的当たり前のことだったと話しています。ある時古いインヴォイスを見ていてコーヒー豆とともに胡椒という品目があるのを見つけた瞬間、おばあちゃんが「胡椒はサラワク産のものに限るわ」と話していたことを思い出したそう。コーヒー豆も胡椒も自然の恵み。そして香りが命。ジャンニは再びかつてのようにコーヒー豆とともに胡椒も輸入すべきと考えました。早速信頼する友人とマレーシアに胡椒農場を見学にでかけ、2004年から輸入を開始してマリチャを立ち上げたのですが、その時の話が面白いのです。

当時は胡椒を取り扱うのは大手国際商社のみ。大きな規模の取引ばかりでジャマイカ・カッフェのような家族経営の小さな焙煎所が話を聞きにくるケースなど皆無でした。農場マネージャーは「何トン必要なの?」と量のことしか聞いてきません。ジャンニに興味があったのはクオリティーの話です。どういった品種がどんな畑で育てられているのか、どのように収穫するのか、収穫した後どのような処理をしているのか。けれども何を聞いてもマネージャーは「胡椒は胡椒、違いはないよ」の一点張りだったそう。絶望したジャンニは自分で農場を訪ね歩きます。そしてそこで行われている作業のずさんさに愕然としたようです。同行した友人がその時の様子を語った記事があるのですが、ジャンニがその友人に黒コショウをかがせては「屍だ」、白コショウをかがせては「クソの香りがするだろ?」と次々に毒づいている様子が描かれています。黒コショウを乾燥させるのに日光にさらしっぱなしにしておくのが常で、その間に一部は腐敗し乾燥したものは香りがすっかり焼け飛んでしまってると言うのです。白コショウは完熟した実の薄皮を取るために水に漬けておくのですが、その水が汚かったり漬けた後保存するユタの袋が不衛生だったりと、悪臭のもとになっていました。そんな中、かの有名なシェウ氏に出会います。ジャンニいわく「学校に行ったこともない、おそらく世界一シンプルで無学な男。だが彼だけが現地で唯一胡椒の品質を理解している」…そう。マリチャの黒いパッケージの裏書に必ず登場するSig.Siewシェウさんです。説明の最後に必ず出てくるのです。「この胡椒はすべての加工をシェウさんただひとりの手作業によって行われる、世界に類を見ない方法で作られています」と。この一文だけでもジャンニのシェウさんへのリスペクトがうかがえます。シェウさんなくしてマリチャは存在しえないのですから。

マリチャの胡椒は全て収穫から24時間以内に加工されます。その品種によって、また仕上げるスタイルによって微妙に乾燥させる方法や時間、乾燥温度、薄皮の剥き方などを変え、胡椒本来の風味を封じ込めるために細心の注意を払い、ジャンニが納得のいく品質の胡椒に仕上げるシェウ氏。熟練の勘だけが頼りです。全ての作業をシェウ氏ひとりで…とかかれているくらいですから、当然生産量は限られています。今やすっかり有名になってしまったシェウさん、なんとか優秀なお弟子さんを見つけて欲しいのですが(笑)。こんな風に常に新しい品種を見つけたり新しいやり方を試したりしているので、なかなかちゃんとした情報が伝わらないというのがマリチャの欠点。輸入元に訪ねても「現地に聞いているのですがいつも返事が戻って来なくて」と手を焼いている様子。入荷もまちまち、次にどんな種類の胡椒が届くのかさえ開けてビックリなほど謎の多いメーカーでもあります。それは日本に限ったことではないらしく、一度ロッソ・スクーロ・ディアマンテという、ダークレッドのダイヤモンドという名前のダイヤモンドはなんだろう?とあちこち調べるうちにイタリアでマリチャの胡椒を販売しているショップの情報に行き当たり、思い余って電話してしまったことがあります。その時「ああ、ジャンニはね、ホントそういうの謎だから」とイタリアでも情報が手に入らないのだと漏らしていました。

これまで数回しか当店に入荷してこなかったネ・ビアンコ・ネ・ネロ。白でも黒でもない、という意味です。そんな名前の通り胡椒の色は全体的に薄いグレーで、よく見ると間に黒い粒がいくつか混じっています。これまでは、クーチング種の中でも色の薄いクローンなのだ、とか白コショウと黒コショウとのブレンドなのだ、とかいろいろな説が飛び交っていてイマイチよくわからなかったのですが、よくよく観察してみるだにやはりこれはブレンドなのではないかと判断するに至りました。圧倒的に白コショウが多く、間に混じる黒い粒はかなり少なめです。白はマイルドな辛さですが(そのまま齧ったときの旨味がすごいです)、黒だけ齧ると相当に辛い。でも適当にグラインダーに入れてガリリと挽くと、ものすごくバランスが良いのです。ワタシはこれは、ジャンニが自分で最高と思うバランスでブレンドしているのだ、と睨んでいます。この胡椒、ウチでは長らくその上品さと使いやすさとでダントツナンバーワンの位置を占めてきました。改めて届いたものを久しぶりに味見しても、やっぱり一番好きだな~とパパろば。この胡椒、パティスリー界の大御所ピエール・エルメ・パリのピエール・エルメ氏がホワイトチョコレートを使ったあるお菓子に「マリチャのネ・ビアンコ・ネ・ネロを合わせる。この胡椒でなければならない」と断言して話題になっていました。このエレガントさと華やかな香りはスイーツのアクセントにもちょうど良いのでしょうか。

一度このHPでもご紹介したカチョ・エ・ペペというパスタ料理。チーズとコショウだけで味付けした極々シンプルなパスタでローマの伝統料理ですが、それをこのネ・ビアンコ・ネ・ネロでやったら!!素晴らしく上品で、かつスッキリとしたパスタが出来ました。そしてそして、この写真を撮影するために店内で改めてカチョ・エ・ペペを作ってネ・ビアンコ・ネ・ネロをこれでもかというほどたっぷり挽いて食べたのですが、本当に胡椒が旨い!胡椒自体がハンパなく旨い、のです。これはもう、一度試していただくしかその美味しさを伝えるすべはありません。レシピはコチラですので、ぜひこの胡椒でのカチョ・エ・ペペ、ぜひお試しください。レシピではペコリーノ・ロマーノで、となっていますが簡単に美味しいモノが手に入りませんので(大抵ものすごくしょっぱいです)、パルミジャーノやグラナ・パダーナで代用してかまいません。でも、塊のチーズをおろして使うというところだけは厳守してください。材料はシンプルですが、かなりチーズが沢山入るので(100gのパスタにつき50gのチーズ!)やはりチーズの質が出来上がりの味を左右してしまいます。いくら胡椒をたっぷりかけても、ね。

そして!ネ・ビアンコ・ネ・ネーロがカチョ・エ・ペペに合わせるおススメ胡椒だとするならば、ロッソ・スクーロ・ディアマンテはなんといってもカルボナーラです。あのスモーキーさ、バツンと抜ける辛味は卵の野暮ったさを切ってくれます。あら?カルボナーラのレシピは公開したことなかったんですね。それも今度ご紹介しなければ…。あまりにも長くなってしまうのでカルボナーラのレシピはまた今度!もう十分長いですけどね。。。

現在、こんなにバリエーションが揃ったのははじめてでは?というほどマリチャの胡椒が揃っています。下に現在在庫があるものの特徴を簡単にまとめましたので参考にしてくださいね。ロッソ・スクーロとネ・ビアンコ・ネ・ネロは毎回入荷数が極めて少ないので(100袋程度)入荷早々売り切れてしまいます。一度開封したらぴちっと封をして冷凍庫で保存すれば風味が長持ちしますので、ぜひ数種類常備してお料理によって使い分けてみてください!さらに詳しい説明は個別のページで。

Nero di Sarawak ネロ・ディ・サラワク 90g 1080yen    辛味★★★★★ 基本となるブラックペッパー。スモーキーさはないので使いやすいです。雑味もあるがそれも旨味となっていてパンチがきいている。はじめてマリチャを試す、というかたにはおすすめしています。まずこのスタンダードなブラックで一般の胡椒との差を感じてみてください。

Rosso Scuro Diamanteロッソ・スクーロ・ディアマンテ 90g 1296yen 辛味★★★★ スモーキーさとスッキリ切れる辛味が特徴的なブラックペッパー―。カルボナーラや玉子料理、お肉料理やスモークしたら美味しそうな脂身の多いお料理には最高。お料理がキリッと引き締まります。ブラックペッパーとして使うのにネロの次には何を試そう?という方はぜひこちらを。

Ne’ bianco ne’ neroネ・ビアンコ・ネ・ネーロ 90g 1296yen 辛味★★★ ホワイトペッパーに少量のブラックペッパーをブレンド(恐らく)。非常にバランスがよく上品で華やかな香り。余韻が長い。本来はブラックペッパーで作るカチョ・エ・ペペをこれで作ると格別のお皿に。お魚やデリケートな食材、野菜のスープなどにも合わせられるまろやかさ、けれど切れのよい辛みが特徴。

Camo カーモ 90g 1400yen   辛味★★ ホワイトペッパーを塩水に漬けてから低温オーブンで乾燥しているため若干の塩味がある。とても上品で優しい辛さで丸ごと食べられるため、煮込みなど胡椒も食べるようなお料理やカルパッチョなどにも。

Pepe verde in Salamoia グリーンペッパーの塩水漬け(瓶入り) Net 110g 2760yen 辛味★★★★ これだけでワインが飲めます。刻んでカルパッチョのソースにしたりそのままポテトサラダや揚げ物の衣に混ぜたり。魚介やお肉をソテーするときに肉汁と刻んだこのグリーンペッパーを煮詰めると上質のソースになります。

Timur di Tarai ティムールペッパー(ネパール山椒)90g 1400yen 辛味★ こちらはコショウではなく山椒です。日本の山椒とも中国の花椒とも違った風味でパッションフルーツのような鮮烈な香り。エスニック料理やデザートに。コチラでもご紹介しました。

なんというか鮮度と香りとバランスの鬼という感じのジャンニ。彼のコーヒー焙煎所、ジャマイカ・カッフェのオリジナルブレンドのコーヒー豆も試してみたくなりませんか?彼はもう60歳くらいでしょうか。ブルースのバンドでボーカルをやっていたようで、今でも活動を続けているようです。歯に衣着せぬ物言いでザッパザッパとコーヒー業界を痛烈に批判してゆく様子がインタビューで見られて面白かったです。若々しい!その彼が常に言うのは、Dignita’という言葉。神聖さ、と訳せばよいのでしょうか。毎朝焙煎所に足を踏み入れる度、コーヒーと言う植物の神聖さに胸が震えるのだそうです。コーヒーという、自然の恵みに対して抱く畏怖の念。そのコーヒーを触らせてもらえる幸運に、感謝してしまうのだそうです。「え?有機栽培?そんなの最低限だろ。殺虫剤とか使った畑の豆を運んでこれるか?」とインタビュアーの質問へもばっさり。そしてマレーシアの地で胡椒がたどっている運命を知ったとき「自分が胡椒の神聖さを取り戻さなければ」と強く思ったのだと語っていました。カッコイイですね~。

ジャマイカ・カッフェ オリジナル・ブレンド(豆) 250g 1728yen
ろばの家のエスプレッソやカフェラテはこのお豆を使用しています。チョコレートのような香りと深すぎないローストがとても軽やかで胸焼けしません。お豆がギラギラしていないのも酸化しにくく胃に負担がかからない秘密なのかもしれません。ママろば、自宅では直火にかけられるポット式のモカ(ビアレッティ社。一人用もしくは最大でも二人用がおすすめ)で淹れてもカフェラテなら美味しくはいりますよ。エスプレッソはやはりマシンにはかなわないと思うけれど。。。

*マリチャとジャマイカ・カッフェのページはコチラです。

 

 

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