『おやつの時間』を彩る野口悦士さんのうつわ

今年の『おやつの時間』中、明るい色合いと独特のテクスチャーで会場を華やかに彩っている野口悦士さんのお皿の数々。出会ったことのない新鮮な感覚。多くの方に「これはどなたの作品なんですか?」と聞かれました。

全て一点物。一枚いち枚、色も質感も違うのでただ白いテーブルに並べて見るだけでも楽しくなってきます。
霜が張りついたようなフロスト状の表面や、砂糖菓子のような表面の白、うっすらと墨を吹いたような青色は、お皿によって紫がかっていたり、アクアブルーだったり…。

中でも特に鮮烈な印象を与えるのが、一見青銅のようにも見えるこの色。思わず手に取って仔細に眺めてしまう人が沢山いらっしゃいました。野口さんが緑青(りょくしょう)と呼んでいるもので、まさに銅や真鍮などの金属が酸化してできる緑青そのものというイメージの色です。

遺跡の出土品のように、長い長い時の洗礼を受けることでしか発することのできない静かなオーラさえ感じてしまうこの緑青。あまりにも印象的なこの風合いは、実は五回も窯に入れて焼き直さないと出せないという、野口さん独自の手法によって作られています。

古い仏具や装飾品をも連想させ、食器というよりオブジェのような印象を持つかもしれませんが、焼き菓子などを載せるとパッと映える色です。お茶席などで引き立つのは間違いありませんが、むしろさりげなくコーヒーに添えるお菓子に使っても素敵です。


質感、ということで言えば赤色も特徴的で、これもまた時代を経た塗り物のような独特の質感です。お皿として使うのはもちろん、お盆のように茶器を載せても使ってみたくなります。緑青と同じで、一見陶器とは思えない独特の素材感が楽しくて、ついほかの陶器を組み合わせてみたくなってしまうのです。渡辺隆之さんの銀彩を抹茶椀に見立てて野口さんの赤い板皿を組み合わせて置いた一角は、あまりに色合わせがキレイでずっとそのままにしておきたかったほど。



青緑の短冊皿や豆皿に同じく渡辺さんの杯を合わせたり、白南蛮の蓮弁皿を茶托に見立てて服部竜也さんの汲み出しを合わせてみたりと、無限に想像が膨らみます。



この蓮弁皿をはじめ野口さんが白南蛮と呼んでいる明るいグレーは、釉薬を使わず土を焼き上げただけの南蛮焼しめがそのまま白くなったような無垢の質感。釉薬と化粧土の中間くらいのうわぐすりで、この質感も野口さんにしか出せない独特のクールさ、無機的な美しさがあります。焼き物なのに、何か違う素材で出来ているような新鮮な手触りと風合い、出会ったことのないテクスチャー。きっと、これまで使いなれている手持ちのうつわと組み合わせても、テーブルで新鮮な感覚をもたらしてくれるはずです。
豆皿は見事に一枚一枚色が違い、素材感もホーローのようなものがあれば絵の具を塗ったようなものまであり、色違いで同じサイズを揃えたくなります。

こんなにも色々なカラーや質感の作品を作るのに、実は使っている土や釉薬の種類は非常に限られていて、基本的には種子島の赤土ともう一種の土、白、黒2種の釉薬の組み合わせによって表現しているのだそう。そこにほんの少し銅などの鉱物を混ぜる匙加減や、酸化・還元の具合など焼き方によって色やテクスチャーの違いを出しているようで、色々な種類の釉薬を使っているわけではないのです。

「あまり沢山の土や釉薬を使いわけるというようなことがどうにも好きじゃなくて…」と野口さんは話しますが、逆にそれでこんなにも色々な表情が出せることに驚いてしまいます。


釉薬が溶けたところが地図のように見える作品もあれば、夜空にぽっかりと浮かぶ月にも見えてくるプレートがあり、そうなると明るい水色は地球に見えてきて…と、一枚一枚眺めているとイメージが膨らんできます。



それを手にする人が、その中に自分だけのストーリーを感じることができる。その一枚が特別な存在になる。たかだか一枚のお皿が自分の暮らしに新たに加わるだけで、その人の毎日にどれほど豊かな変化をもたらしてくれるのでしょう。

野口さんのうつわでお菓子をいただいていると、その時間がとても特別なものに思えてきます。見るひとの数だけ、異なるストーリーが存在する野口さんの作品。これは何?と気になる一点との出会いがきっとあります。じっくりとひとつひとつ、見つめてみてください。

『おやつの時間Online』野口悦士さんのページはコチラです。

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