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この胡椒を味わうためにカチョ・エ・ペペを作る。この胡椒がないなら作らなくていい。

…そのくらい、お料理を変えてしまう胡椒です。「今まで食べていたものは何だったのか?」これまでの概念を塗り替えられてしまうようなずば抜けた品質により、今や世界中のトップシェフから指名されるMarichaマリチャ。マレーシアのサラワク州サリケイ国立公園で出会ったKuchingクーチング種をはじめ、大手商社がその存在さえ知らずにいた希少な品種の胡椒を世界に知らしめました。ブラック、ホワイト、グリーンという分類だけでなく沢山種類がある(これまでにマリチャがリリースした胡椒は20種類ほど)のですが、そのどれを食べても「ハッ」とさせられるほど明確にクオリティーの差を実感できます。日本でも「胡椒はマリチャしか使わない」と断言するシェフがイタリアン業界のみならず中華、日本料理の世界にも沢山います。そんなお店で素晴らしいディナーが終わり、お店を後にするとき「それにしても、あの胡椒の味が忘れられないよ」とつぶやく人がいてもおかしくないだろうな…そんな想像さえアタマをよぎってしまいます。

胡椒くらいでそんな大げさな…と思うでしょうか?でも、ろばの家で商品説明を読み「そんなに違うんですか?」と半信半疑でひとつ買って帰った人が次に来た時「あれは本当にすごいですね。書いてあった通り今まで食べていた胡椒はなんだったのか、と思いました」と感動を伝えてくれる場面を何度も見てきたのです。特に食通である必要も、香りや味に敏感な繊細な舌を持つ必要もありません。誰もが否応なく気が付いてしまうほどの圧倒的な差。それがマリチャの胡椒なのです。

まず、香りの質が違います。鼻がムズムズしません。むしろ爽快です。スーッと清涼感のある香りは柑橘のピールや山椒の若芽が持つかすかなメントール感に近い。そして辛味。シンプルなブラックにあたるネロ・ディ・サラワクなどかなり鮮烈な辛味ですが、後にスッキリ抜ける感じが心地よい、痛みを伴わない辛さです。そして何よりもマリチャによって教えられた大切なことは「胡椒は香りだけでなく味わいも楽しむものなのだ」ということ。辛い、ピリリとする刺激だけではなく旨味があるのです。それにしても、マリチャの胡椒はどうしてこんなにも他のメーカーの胡椒と違うのでしょうか。マレーシア産の胡椒が珍しいわけでもないのに。

マリチャを立ち上げたのは、イタリアのヴェローナで4世代続くコーヒー焙煎所ジャマイカ・カッフェのオーナー、ジャンニ・フラージ氏。イタリアの飲食業界では「エスプレッソの王様」と呼ばれています。彼のコーヒー豆はそれこそ星つきのリストランテや名だたるバールで使われていますが、一時は豆を使う条件としてはジャンニ自らエスプレッソマシンの調整に行くことと決められていたと聞きます。実は当店でもこのジャマイカ・カッフェのオリジナルブレンドでエスプレッソをいれているのですが、マシンもジャンニが推薦するファエーマというメーカーのエスプレッソマシンe-61というモデルを使っています。さすがに日本までは調整に来てはくれませんでしたが(笑)。ジャンニが登場するインタビューなどを見るとコーヒー屋さんがスパイスも扱うのは昔は比較的当たり前のことだったと話しています。ある時古いインヴォイスを見ていてコーヒー豆とともに胡椒という品目があるのを見つけた瞬間、おばあちゃんが「胡椒はサラワク産のものに限るわ」と話していたことを思い出したそう。コーヒー豆も胡椒も自然の恵み。そして香りが命。ジャンニは再びかつてのようにコーヒー豆とともに胡椒も輸入すべきと考えました。早速信頼する友人とマレーシアに胡椒農場を見学にでかけ、2004年から輸入を開始してマリチャを立ち上げたのですが、その時の話が面白いのです。

当時は胡椒を取り扱うのは大手国際商社のみ。大きな規模の取引ばかりでジャマイカ・カッフェのような家族経営の小さな焙煎所が話を聞きにくるケースなど皆無でした。農場マネージャーは「何トン必要なの?」と量のことしか聞いてきません。ジャンニに興味があったのはクオリティーの話です。どういった品種がどんな畑で育てられているのか、どのように収穫するのか、収穫した後どのような処理をしているのか。けれども何を聞いてもマネージャーは「胡椒は胡椒、違いはないよ」の一点張りだったそう。絶望したジャンニは自分で農場を訪ね歩きます。そしてそこで行われている作業のずさんさに愕然としたようです。同行した友人がその時の様子を語った記事があるのですが、ジャンニがその友人に黒コショウをかがせては「屍だ」、白コショウをかがせては「クソの香りがするだろ?」と次々に毒づいている様子が描かれています。黒コショウを乾燥させるのに日光にさらしっぱなしにしておくのが常で、その間に一部は腐敗し乾燥したものは香りがすっかり焼け飛んでしまってると言うのです。白コショウは完熟した実の薄皮を取るために水に漬けておくのですが、その水が汚かったり漬けた後保存するユタの袋が不衛生だったりと、悪臭のもとになっていました。そんな中、かの有名なシェウ氏に出会います。ジャンニいわく「学校に行ったこともない、おそらく世界一シンプルで無学な男。だが彼だけが現地で唯一胡椒の品質を理解している」…そう。マリチャの黒いパッケージの裏書に必ず登場するSig.Siewシェウさんです。説明の最後に必ず出てくるのです。「この胡椒はすべての加工をシェウさんただひとりの手作業によって行われる、世界に類を見ない方法で作られています」と。この一文だけでもジャンニのシェウさんへのリスペクトがうかがえます。シェウさんなくしてマリチャは存在しえないのですから。

マリチャの胡椒は全て収穫から24時間以内に加工されます。その品種によって、また仕上げるスタイルによって微妙に乾燥させる方法や時間、乾燥温度、薄皮の剥き方などを変え、胡椒本来の風味を封じ込めるために細心の注意を払い、ジャンニが納得のいく品質の胡椒に仕上げるシェウ氏。熟練の勘だけが頼りです。全ての作業をシェウ氏ひとりで…とかかれているくらいですから、当然生産量は限られています。今やすっかり有名になってしまったシェウさん、なんとか優秀なお弟子さんを見つけて欲しいのですが(笑)。こんな風に常に新しい品種を見つけたり新しいやり方を試したりしているので、なかなかちゃんとした情報が伝わらないというのがマリチャの欠点。輸入元に訪ねても「現地に聞いているのですがいつも返事が戻って来なくて」と手を焼いている様子。入荷もまちまち、次にどんな種類の胡椒が届くのかさえ開けてビックリなほど謎の多いメーカーでもあります。それは日本に限ったことではないらしく、一度ロッソ・スクーロ・ディアマンテという、ダークレッドのダイヤモンドという名前のダイヤモンドはなんだろう?とあちこち調べるうちにイタリアでマリチャの胡椒を販売しているショップの情報に行き当たり、思い余って電話してしまったことがあります。その時「ああ、ジャンニはね、ホントそういうの謎だから」とイタリアでも情報が手に入らないのだと漏らしていました。

これまで数回しか当店に入荷してこなかったネ・ビアンコ・ネ・ネロ。白でも黒でもない、という意味です。そんな名前の通り胡椒の色は全体的に薄いグレーで、よく見ると間に黒い粒がいくつか混じっています。これまでは、クーチング種の中でも色の薄いクローンなのだ、とか白コショウと黒コショウとのブレンドなのだ、とかいろいろな説が飛び交っていてイマイチよくわからなかったのですが、よくよく観察してみるだにやはりこれはブレンドなのではないかと判断するに至りました。圧倒的に白コショウが多く、間に混じる黒い粒はかなり少なめです。白はマイルドな辛さですが(そのまま齧ったときの旨味がすごいです)、黒だけ齧ると相当に辛い。でも適当にグラインダーに入れてガリリと挽くと、ものすごくバランスが良いのです。ワタシはこれは、ジャンニが自分で最高と思うバランスでブレンドしているのだ、と睨んでいます。この胡椒、ウチでは長らくその上品さと使いやすさとでダントツナンバーワンの位置を占めてきました。改めて届いたものを久しぶりに味見しても、やっぱり一番好きだな~とパパろば。この胡椒、パティスリー界の大御所ピエール・エルメ・パリのピエール・エルメ氏がホワイトチョコレートを使ったあるお菓子に「マリチャのネ・ビアンコ・ネ・ネロを合わせる。この胡椒でなければならない」と断言して話題になっていました。このエレガントさと華やかな香りはスイーツのアクセントにもちょうど良いのでしょうか。

一度このHPでもご紹介したカチョ・エ・ペペというパスタ料理。チーズとコショウだけで味付けした極々シンプルなパスタでローマの伝統料理ですが、それをこのネ・ビアンコ・ネ・ネロでやったら!!素晴らしく上品で、かつスッキリとしたパスタが出来ました。そしてそして、この写真を撮影するために店内で改めてカチョ・エ・ペペを作ってネ・ビアンコ・ネ・ネロをこれでもかというほどたっぷり挽いて食べたのですが、本当に胡椒が旨い!胡椒自体がハンパなく旨い、のです。これはもう、一度試していただくしかその美味しさを伝えるすべはありません。レシピはコチラですので、ぜひこの胡椒でのカチョ・エ・ペペ、ぜひお試しください。レシピではペコリーノ・ロマーノで、となっていますが簡単に美味しいモノが手に入りませんので(大抵ものすごくしょっぱいです)、パルミジャーノやグラナ・パダーナで代用してかまいません。でも、塊のチーズをおろして使うというところだけは厳守してください。材料はシンプルですが、かなりチーズが沢山入るので(100gのパスタにつき50gのチーズ!)やはりチーズの質が出来上がりの味を左右してしまいます。いくら胡椒をたっぷりかけても、ね。

そして!ネ・ビアンコ・ネ・ネーロがカチョ・エ・ペペに合わせるおススメ胡椒だとするならば、ロッソ・スクーロ・ディアマンテはなんといってもカルボナーラです。あのスモーキーさ、バツンと抜ける辛味は卵の野暮ったさを切ってくれます。あら?カルボナーラのレシピは公開したことなかったんですね。それも今度ご紹介しなければ…。あまりにも長くなってしまうのでカルボナーラのレシピはまた今度!もう十分長いですけどね。。。

現在、こんなにバリエーションが揃ったのははじめてでは?というほどマリチャの胡椒が揃っています。下に現在在庫があるものの特徴を簡単にまとめましたので参考にしてくださいね。ロッソ・スクーロとネ・ビアンコ・ネ・ネロは毎回入荷数が極めて少ないので(100袋程度)入荷早々売り切れてしまいます。一度開封したらぴちっと封をして冷凍庫で保存すれば風味が長持ちしますので、ぜひ数種類常備してお料理によって使い分けてみてください!さらに詳しい説明は個別のページで。

Nero di Sarawak ネロ・ディ・サラワク 90g 1080yen    辛味★★★★★ 基本となるブラックペッパー。スモーキーさはないので使いやすいです。雑味もあるがそれも旨味となっていてパンチがきいている。はじめてマリチャを試す、というかたにはおすすめしています。まずこのスタンダードなブラックで一般の胡椒との差を感じてみてください。

Rosso Scuro Diamanteロッソ・スクーロ・ディアマンテ 90g 1296yen 辛味★★★★ スモーキーさとスッキリ切れる辛味が特徴的なブラックペッパー―。カルボナーラや玉子料理、お肉料理やスモークしたら美味しそうな脂身の多いお料理には最高。お料理がキリッと引き締まります。ブラックペッパーとして使うのにネロの次には何を試そう?という方はぜひこちらを。

Ne’ bianco ne’ neroネ・ビアンコ・ネ・ネーロ 90g 1296yen 辛味★★★ ホワイトペッパーに少量のブラックペッパーをブレンド(恐らく)。非常にバランスがよく上品で華やかな香り。余韻が長い。本来はブラックペッパーで作るカチョ・エ・ペペをこれで作ると格別のお皿に。お魚やデリケートな食材、野菜のスープなどにも合わせられるまろやかさ、けれど切れのよい辛みが特徴。

Camo カーモ 90g 1400yen   辛味★★ ホワイトペッパーを塩水に漬けてから低温オーブンで乾燥しているため若干の塩味がある。とても上品で優しい辛さで丸ごと食べられるため、煮込みなど胡椒も食べるようなお料理やカルパッチョなどにも。

Pepe verde in Salamoia グリーンペッパーの塩水漬け(瓶入り) Net 110g 2760yen 辛味★★★★ これだけでワインが飲めます。刻んでカルパッチョのソースにしたりそのままポテトサラダや揚げ物の衣に混ぜたり。魚介やお肉をソテーするときに肉汁と刻んだこのグリーンペッパーを煮詰めると上質のソースになります。

Timur di Tarai ティムールペッパー(ネパール山椒)90g 1400yen 辛味★ こちらはコショウではなく山椒です。日本の山椒とも中国の花椒とも違った風味でパッションフルーツのような鮮烈な香り。エスニック料理やデザートに。コチラでもご紹介しました。

なんというか鮮度と香りとバランスの鬼という感じのジャンニ。彼のコーヒー焙煎所、ジャマイカ・カッフェのオリジナルブレンドのコーヒー豆も試してみたくなりませんか?彼はもう60歳くらいでしょうか。ブルースのバンドでボーカルをやっていたようで、今でも活動を続けているようです。歯に衣着せぬ物言いでザッパザッパとコーヒー業界を痛烈に批判してゆく様子がインタビューで見られて面白かったです。若々しい!その彼が常に言うのは、Dignita’という言葉。神聖さ、と訳せばよいのでしょうか。毎朝焙煎所に足を踏み入れる度、コーヒーと言う植物の神聖さに胸が震えるのだそうです。コーヒーという、自然の恵みに対して抱く畏怖の念。そのコーヒーを触らせてもらえる幸運に、感謝してしまうのだそうです。「え?有機栽培?そんなの最低限だろ。殺虫剤とか使った畑の豆を運んでこれるか?」とインタビュアーの質問へもばっさり。そしてマレーシアの地で胡椒がたどっている運命を知ったとき「自分が胡椒の神聖さを取り戻さなければ」と強く思ったのだと語っていました。カッコイイですね~。

ジャマイカ・カッフェ オリジナル・ブレンド(豆) 250g 1728yen
ろばの家のエスプレッソやカフェラテはこのお豆を使用しています。チョコレートのような香りと深すぎないローストがとても軽やかで胸焼けしません。お豆がギラギラしていないのも酸化しにくく胃に負担がかからない秘密なのかもしれません。ママろば、自宅では直火にかけられるポット式のモカ(ビアレッティ社。一人用もしくは最大でも二人用がおすすめ)で淹れてもカフェラテなら美味しくはいりますよ。エスプレッソはやはりマシンにはかなわないと思うけれど。。。

*マリチャとジャマイカ・カッフェのページはコチラです。

 

 

 

「明日死んだとしても悔いはない」毎回そう思って轆轤に向かうんだ。

「行っちゃったね。」「うん、行っちゃったね。嵐みたいだった…。」ハイエースで走り去る加地学さんをパパろばと二人で見送って、しばし呆然。4mのテーブル一面にドカドカと積み重ねてもまだ置ききれず、大きなバナナの箱5~6個にも新聞に包まれた作品が詰まったままだ。でも何もできない。手に着かないのです。あらかじめ「来るぞ来るぞ、すごいのが」と構えていたのにも関わらず、やはり相当のエネルギーが必要でした。一年ぶりの再会。またしても加地さんは、ワタシたちみんなにガッツリと喝を入れてワハハと去っていったのでした。誰もが圧倒されてしまうのです。彼のスケールに。全身全霊で生を謳歌する貪欲さと、心の底から命を讃える真摯さ。それら全てを惜しげもなくさらけ出してしまう、子どものように無防備で無垢な魂…。はじめて彼に会った人はドン引きしてしまうのではとすら思う。でも彼の作品の前に立つとすぐに納得してしまうのです。「ああ、こんな人だから…」と。前回の記事にもそれに近いことを書きましたが、正確な表現ではありません。こんな人だからこんな作品になるのではなく、こんな作品を作るために「こうあらねば」と生きているのです。意識的に。どこまでもタフに。彼と話していると、人の心を動かせるほどのものというのは、偶然や成り行きだけで簡単に生まれてくるものではないのだと実感してしまいます。加地さんの作品にはじめて出会ったときの衝撃をつづった記事もぜひお読みください。あの時とまったく同じ新鮮さで、今回の作品たちにもガツンとやられてしまいました。

生きるとか死ぬとか、大袈裟な単語ばかりで重たく感じるかもしれませんね。でもそれは実際に彼の口から聞いていないからです。お話が面白く人を飽きさせない加地さんはサービス精神旺盛。周りを笑わせてばかりです。宇宙のなりたちからサルが人へと進化することができた理由、下品にならない程度に下ネタも紛れ込ませ(笑)、次から次へと話題が切り替わります。でも抱腹絶倒の笑い話の合い間にふと「モノを作って生きていられることへの感謝の気持ち」や、時にはストレートに「もっと生きていることに感謝しなくちゃ!」というメッセージを、サブリミナルのように随所に挟みこんでくるのです。カレーが好きでインド料理屋でバイトをするうちにどうしてもインドへ行きたくなり、3ヶ月インドを放浪したこと。ヨガの聖者を訪ねて向かった山奥で盗難に遭い、無一文になったこと。バス代だけをなんとか工面してデリーに戻りさらに旅を続け…ど聞いているだけでドキドキしてしまう冒険話も飛び出します。加地さんが到着した金曜日の夜はろばの家で歓迎会を開き、笠間の船串篤司さん、Keicondoさんのほか、うつわとは全く関係ない業界の友人たちも合流して楽しいひと時を過ごしました。インドの話に差し掛かったころには加地さんに初めて会った友人たちまで、次のひと言を固唾を飲んで待っている状態に。彼が話にオチをつけるとドッと笑いが起こる。涙を流して笑い転げている人までいます。誰もが、加地さんの話に引き込まれ彼から目が離せないでいるのです。まるで魔法にかかったかのように。

実は大人たちが集まってくるまでウチのチビろばたちも一緒に食事していたのですが、加地さんはチビたちの心までわしづかみにしていました。おかしな話があって、チビろばちゃん(6歳)と一緒に遊んでいてくれた加地さんがなぜか急に「え?君バナナ好きなの?ホントに?ちょっと待って…おいでおいで」と言い出して、外に停めてあるハイエースへと彼女を招き入れました。次の瞬間、頬を紅潮させたチビろばちゃんが両手で抱えきれない程大きなバナナの房を持って現れたのです。わたしも初めて見るような巨大な房。20本ほどあったでしょう。もうチビろばちゃんは大興奮!それから5分ほど話していたと思ったらまた加地さんが「え?何?君、みたらし団子好きなの?本当?ちょっと待ってて!」とまたハイエースに消えてゆきました。わけがわからないといった風にきょとんとするチビろばちゃんと「え?まさか?まさか?」と口に手をやる兄ろばくん(11歳)。「お兄ちゃんには内緒だって!」と息をはずませ、手に大きなみたらし団子を持って現れた彼女の得意そうな顔と言ったら!兄ろばくんは妹の大好物が本当にみたらし団子であることを知っているだけに「え?え?嘘でしょ?なんで本当にお団子まで出てくるの?単なる偶然?」といぶかしそうにしています。「ママ教えたんでしょう?」とでも言いたげなので「知らないよ、何も言ってないよ」とワタシまで大慌て。もちろん単なる偶然に違いないのですがあまりにドンピシャリだったのでおかしくて…。言うまでもないことですが、それ以来ウチのチビたちの間では加地さんは「魔法使い」「四次元ポケット」…伝説のヒーローです。毎日毎日「加地さんのバナナ食べる~」と言ってはあの日の不思議な体験を繰返し話して聞かせてくれるのでした。”カッチーマジック”…ウチではすでにそう呼ばれています。

死を身近に感じてしまうようなインドという国。そこで暮らす人々の逞しさや生のリアルさに触れ、これまでの人生観を根本から見つめ直すことになった加地さん。日本に降り立った瞬間「俺はモノを作って生きてゆく」と決めたのだそう。そう決意した直後何の気なしに母親に着いて行った先がたまたま陶芸教室だった、と。「あの時変な薬飲まされてさ、身ぐるみ剥がされてインドの山奥に放り出されていなかったら、今こうして土こねたりしてなかったかもしれないよね。そう思うと感謝しなくちゃいけないくらいだよね。」とまたワハハと笑う。加地さんにかかったら、何だって感謝の対象なのだ。

「山に入って自分で木を切り倒しているとね、どうしたって胸に迫るモノを感じちゃうよね。俺なんかより長く生きてきたような樹齢の高い木がさ、ズーンと倒れてくるところを見たことあるかい?手を掌わせることしかできないよ。あんなの見ちゃうとさ、下らないもの作ってちゃ申し訳ないって本気で思うのさ。命をいただいているんだからさ。」北海道弁丸出しで話す加地さんの言葉は、そのひょうきんさとは裏腹に重く胸にのしかかってくる。同じ大きさに切りそろえられた薪を買ってきたのでは中々味わえない感覚だとも話していました。ワタシは木が倒れてくるところを間近で見たことがありません。でも加地さんのそんな話を聞いてしまったら、アタマの中にこだまするザザーッという音を忘れることができなくなってしまいました。シンとした森に響く、今まさに死に絶えようとしてゆく大木の、声にならない声。

「だからコッチもね、死ぬ気でやるしかないよね」その話の流れだったか、また違う生と死の話題だったか…。「本当に俺はね、明日死んでも悔いはないっていう気持ちで毎回轆轤に向かってるんだよ」という冒頭のセリフが吐き出されたのでした。スッと自然に、何気ないことのように話すので前後の文脈を忘れてしまったくらいです。加地さんが送ってくれたラム肉のしゃぶしゃぶが飛びきり美味しく、また合わせたパーチナのロゼも絶妙で、飲みすぎていただけかもしれませんが(笑)。確かかなり重たい話題だったと記憶しています。身近にいた幼い少女の突然の死について話していた時だったかもしれません。大切なひとの死というものは、こんなにも強く生の輝きを照らし出してしまうものかと思い知ったのだという。落ち込んでなんていられなかった。だって、こんなしょうもない俺なんかが生かしてもらってるんだぜ?「だから朝目が覚めるじゃない?毎朝。ああ、今日もまだ死んでない。ありがとうございます」って本気で感謝しちゃうんだよね。それで「よおし、作るぞ!一分も無駄になんてしてらんないさ」と工房に飛んでいくんだよ、と。

重々しい話をしながら、すぐ横で加地さんのうつわを手に取っている友人に「こんな重たいうつわさ、使いにくいだろうなって思うだろ?それがね、そうじゃないんだよ~。」どんな理由が飛び出すだろうと黙って説明を待つその友人に加地さんはただ「それが、マ~ジック!」とだけ言ってニヤリと笑ったのだとか。加地さんのそのセリフは誰も聞いていなかったのだけれど、翌日その彼はろばの家に戻ってきて「あのオジサン、変ですよね。でもなんかとりあえず買わなくちゃと思って」と赤っぽい焼締めの飯椀を選んで帰って行きました。なぜか買う気のなかった黒い徳利まで「これ、カッコイイっすね。」と一緒に握りしめて。彼は普段どちらかというと薄くて軽い作りのうつわを好んでいたのですが(笑)。彼だけではありません。その晩加地さんを囲んでいた人は皆、後からもう一度じっくり作品を見たいと言って戻って来てくれました。まるでまだ話を聞きたりないのだとでも言うみたいに。もうそこに、彼の姿はないというのに。ワタシたちはみな聴きとってしまう。その、無骨なまでに荒々しく、生の力をみなぎらせている土の塊が発する息吹を。「生きているんだ」という、歓喜の雄叫びを。






神様(そしてもちろん船串さん)、加地さんに出会わせてくれてありがとうございます。ワタシたち二人は彼と同時代に生き、直に言葉を受け取り、そして自分の手で実際にこの土の塊たちに触れることができる…その事実に心の底から感謝しています。ワタクシままろばがこんなにも、ちょっと(かなりか?)はずかしいくらい真剣に、彼の生き様を言葉でも伝えたいともがいてしまうのは、とにかくひとりでも多くのひとに彼の作品を手にして欲しいからなのです。ただこの特別な感覚を共有したいだけのです。あとはもう、言葉なんて必要ありません。

加地さんが命を絞り出すようにして生み出した迫力の作品。今回掲載したものだけでも150点以上。それでも今並んでいる半分くらいです。とても一度にご紹介できる量ではありません(笑)。まずは第一弾として比較的小ぶりなもの、碗を中心にご覧ください。加地さんはすべて碗、とひとくくりに同じ名で呼んでしまうようですが、小鉢として使えるものも飯碗も、カップも含まれます。使う人の見立て次第でどのように使ってもらってもよいのです。小ぶりなものが多いはずなのに、画面から飛び出そうなほど力が有り余っている様子、伝わるでしょうか。…それにしても、ものすごいボリュームです。ずっと見つめていたらそれこそ魔法にかかってしまうかもしれません。なんてったってほら、カッチーマジックですからね(笑)。どうかご注意を。

*こちらの記事は2018年4月に公開されたものです。『ろばの家の定番展』には加地さんはめし碗で参加いただきます。文中の画像は出展される作品とは別のものになりますので関連記事としてご覧ください。

 

 

 

 

 

365日地豆を調理し続ける伊藤美由紀さんに聞く、在来種の現状。

この本との出会いが、全ての始まりでした。「地豆は、絶滅危惧食品です」…そう警告を発する伊藤美由紀さんの言葉は、不定期でお届けしている当店の『ろばレター』でもご紹介しましたし、Onlineショップのニュースでも簡単にお伝えしました。今回の企画を締めくくる形で美由紀さんの”お豆観”をご紹介しようと書きはじめたら、例によって果てしなく前置きが長くなってしまいましたので前置きだけで別にコンテンツを立てました(笑)。ほんと、いつも表題にたどり着くまでが長すぎてごめんなさい…。

ワタクシのようなお豆初心者がくどくど語っていても説得力がありません。ここはもう年季と気合が違うベテラン中のベテラン、美由紀先生にお任せしてしまいましょう。美由紀さんにはアンケートにお答えいただくほかに、日本における在来お豆の現状についてもお聞きしました。ご紹介するお豆料理の写真に使用されているうつわは全て加地学さんのもの。美由紀さんの私物(かつご自身による撮影)です。お二人の関係は先の記事にて言及しています。それにしても、本当に美由紀さんのお豆料理ってどれもこれも無茶苦茶美味しそう!…”そう”じゃなくて絶対美味しいって言わなきゃいけなかったんだった!ね、加地さん?

では早速伊藤美由紀さんのお豆観と、在来のお豆の現状を聞いて見ましょう。

質問1:『お豆料理』と聞いて頭にうかぶメニューは?
     :すみません。果てしなく浮かんで絞ることができません。

質問2:これまで食べた中で印象に残っている『お豆料理』は何ですか?
     :べにや長谷川商店が遠軽町で開催していた”おかん料理を楽しむ会*”に地元のおかあさん(おばあさん?)がひとりで10数品もつくって持ってきてくれた料理の中の「白花豆のたらこ煮」です。私にはない発想の料理で、しみじみおいしかった。で、会場でざっくりとつくり方を聞き、自分でもつくってみたのですが、その味にはほど遠く…。年配の人の絶妙な豆の煮方、味加減にただただ感服するばかり。
*”おかん料理を楽しむ会”は地域の人々や事前に呼びかけた道内外の参加者に自慢の手料理を持ち寄ってもらい、または会場でつくってもらい、参加者みんなで味わい、語らい、材料やつくり方について聞くなどなど、地域の味の発掘や継承になれば、と年1回開催していた会です(2007年~2012年)。

質問3:ご自身で、もしくはご家庭(子供の頃でも)でお豆料理をされる場合どんなメニューがありますか?
           :すみません。自分で、の場合、これも果てしなくて絞ることができません。以下、実家で、の場合です。私の両親も豆好きですが、母は自分で豆を煮ることはしない人で、わが家の食卓にのぼるのはもっぱら買ってきた煮豆でした。いまは私が、「煮る人」を仰せつかっています。

質問4:突然ですが、あなたはマメな人間だと思いますか?
 
         :豆のことに関してはマメなんでしょうが、その豆にしてもいかに手間を省いて簡単に料理するか、をテーマにしているところがあるので、結局、手抜き、ずぼら大好きなんだと思います。掃除も、部屋を丸く掃くタイプですし(笑)。

質問5:突然ですが、あなたはマメな人間だと思いますか?
           :私が暮らす北海道では非常に多くの豆が生産されています。それは大きく2つに分けられ、1つは作物として農家が大面積の畑で栽培し農協などに出荷・一般に流通するもの、もう1つは農家が家庭で食べるために畑の片隅か庭先で少量つくる自家消費用です。作物としての豆も大豆、小豆、いんげん豆類、花豆と多くの種類がありますが、自家用の豆になるともう把握できないほど多種多彩。というのも、北海道には開拓時代に道外から移住してきた人々が食料にするため、故郷から豆を持ち込んでおり、全国各地をルーツとする豆が代々つくり継がれてきたからです。
 これが「在来種」と呼ばれる豆(地豆とも)で、とくに種類が多いのが「いんげん豆」の仲間。豆としてだけでなく、野菜として未熟な莢もおいしく食べられるため、重宝されたのですね。長年、北海道でつくられてきたことから厳しい気候風土にも順応し、たくましく生き残ってきたのですが…。作物として改良・栽培されている豆と違って収量が少なかったり、形が揃わなかったり、病気に弱かったり、と、つくりやすくはなく、しかもツル性のものが多く放っておくと3mくらいまで伸びてしまうので支柱を立ててやらなくてはなりませんし、花が長い期間に渡って咲き続けるので豆の熟度が揃わずいっぺんに収穫できない、とか、完熟すると子孫を残そうとして莢がはじけやすい、とか、乾燥すると莢が豆をキツく抱いてしまい脱穀しにくい、とか、とにかく手がかかるのです。機械化、大型化が進む、北海道ではどんどんつくる農家が減っていて(最近でこそ、珍しい作物が売れる直売所に出すためにつくる農家もやや増えてはいますが)、いまや絶滅が危惧される状態にあります。
 在来種の豆は色や模様、形の個性的なものが多く、一般的な豆に比べて味が濃く、見て美しい、育てて楽しい、食べておいしい、魅力的な食品です。この地域の宝を絶やすことなく少しでも長くつくり継いでもらえたら、と農家に栽培を呼びかけ、消費拡大に尽力しているのが遠軽町の雑穀商「べにや長谷川商店」です。私は同店との出会いから、ものすご~く微力ながらもせっせと料理して消費し、まわりの人々にも魅力を伝えようと写真を撮ったり、食べ方の提案をしたり、といった「豆活」をしています。
ひとりでも多くの人に「豆のある暮らし」が根づくことを願って。

★このたびの企画展「豆まめしく」では、拙書「地豆の料理」を紹介いただき、ありがとうございました。ろばファミリーさんのお力で、つくば市からじわじわと豆の輪がひろがっていることを実感し、とてもうれしく思っています。


伊藤美由紀さん著『地豆の料理~食卓に並べやすい地豆のアイデアレシピ100』のページはコチラ
*お料理の写真は上から「紫花豆と鶏肉のさっぱり煮」うつわは加地学さん粉引鉢、「枝豆の焼き浸し」加地学さん刷毛目鉢、「豆ごはん」加地学さん飯椀

 

船串薫(caya)さんのお豆観。


上の写真はcayaさんの「米ぬか入りミックス大豆のグラノラ」、今回の『豆まめしく』中でパパろばがハマってしまった大豆菓子(?)。昨年の『おやつの時間』で激ハマりだった「4coconuts チョコバナナケーキ」に次ぐ勢いで食べていました。売り切れると「次いつ来るの?」「あ~薫さんのグラノラ食べたい」などとうるさいことうるさいこと…。でもこれ、皆さん結構ハマっていましたね。わたしも実はグラノラ自体結構好きなのですが、これはもう別格でした。あのザコザコしたフレーク感、しつこくない自然な甘さ、煎った大豆のサクサクした歯ごたえ…。有機栽培のナッツやドライフルーツも程よいアクセントですが、煎った大豆や米ぬかからどうしてこんな芳ばしい味わいになるのか不思議でした。cayaさんのお菓子は本当に、食感が楽しい。グラノラに限らず、噛むリズムや齧った時の音…理屈抜きに身体全体で楽しめちゃうお菓子ばかりです。わたくしママろばがハマったのは「娘来た小豆のボウル」。お正月に薫さんが笠間稲荷の夜店に出店していたときに購入して「これは傑作!」と感動。これもまた食感が命のお菓子でした。お客さまに何度も「嫁来たって言うんですよ、このお豆。」と”むすめ”を”よめ”と言い間違えて説明していたようなのですが、娘が急に里帰りしてきてから用意しても煮えあがる、という由来を考えれば”嫁きた!”はないですよね。間違って教えちゃったお客さま、ごめんなさいね。正しくは娘来た、です。薫さんはcayaを立ち上げる際”出来る限り地粉や在来種など地元に根差した農作物を使って身体に優しいお菓子をつくる”というコンセプトではじめただけあって作物にはとってもお詳しい。生産者の農家さんを実地に訪ねたり自分で野生のハーブや果実を採取したりと、あちこち飛び回って伝えてゆきたい素材をかき集めています。もともと使っていたお豆の農家さんが、べにや長谷川商店さんの地豆のガイドブックに載っていたり、今回の『豆まめしく』にはぴったりすぎるキャストでした。現在”地豆プロジェクト”という公開グループの活動にも参加して、在来種の普及に努めていらっしゃいます。ちなみにこの”地豆プロジェクト”は、茨城県常陸太田市在来の豆を使い、加工、販売、豆に関すること全般を考えていこうというグループだそうで、興味のある方なら誰でも参加できるようですよ。

さてさて、そんなcayaの薫さん、お豆にまつわるお話がさらっと済むはずはありません。cayaという屋号の由来になったという生まれ育った茅葺屋根の古いお家。質問4にあるエピソードの”大豆の枝や鞘で火を焚き、囲炉裏に下がっている吊る鍋で煎った大豆を黒い一升枡に入れ家長である父が家中を回る。その後を兄弟4人でぞろぞろとついて歩く”というくだりは、体験したことのないワタシの中にまで白黒で蘇ってきそうなほどノスタルジーをそそられます。旦那様である陶芸家の船串さんが一度「あの人の野生児ぶりは筋金入りだから。兄弟で遊んだときのオセロは葉っぱだったって言ってたよ」と話していました。子どものゲームの話をしていて飛び出したエピソードでしたが、それはむしろわたしにはとても豊かな光景に思えました。薫さんが消えゆく在来種を守ろう、伝えようとするそのパワーの源には、作物だけでなく日本が失いつつある日本本来の田舎風景、茅葺屋根に代表される日本人の原点…そんな大切な原風景を忘れまいとする必死の抵抗もあるのではないか…。そんなことまで想像してしまうと、ママろばちょっと胸が熱くなってしまいます。毎日地豆料理を作り、毎日インスタにアップすることを継続している伊藤美由紀さんもそうですが、自分に課せられた使命のようなものを持っている人の力は本当に強い。それを意識しているとしていないとに関わらず。ああ、またママろばの前置きが長くなってしまった…。

では、そんなcayaさん…船串薫さんのお豆観は?

質問1:『お豆料理』と聞いて頭にうかぶメニューは?
     :浸し豆、ぜんざい、おはぎ、チリコンカン、ファラフェル

質問2:これまで食べた中で印象に残っている『お豆料理』は何ですか?
     :① 群馬県のmatkaさんで食べたイエロースプリットピーのスープ
           :② 山形銘菓 山田家のふうき豆

質問3:ご自身で、もしくはご家庭(子供の頃でも)でお豆料理をされる場合どんなメニューがありますか?
           :① よく使うのは大豆の「打ち豆」です。おせんべいのように豆が平たく潰されているので、煮えが早く、メインにする豆料理というより、みそ汁やヒジキの煮物等に入れて使っています。
           :②浸し豆。
           :③子供の頃のメニューだと、これも料理とはいいませんが「煎り大豆」。

質問4:質問2、3の回答にまつわる感想、思い出、エピソードを教えてください。
           :2-①イエロースプリットピーは初めて出会うお豆だったのと、きれいな黄色の色彩が印象的でした。
           :2-②ふうき豆は数年前にお土産でいただき、存在を知りました。A4サイズ程の箱にびっしりと敷き詰められた青インゲンが翡翠のようでとてもきれいなことにくぎ付けに。砂糖と少しの塩だけのシンプルな味付けですが、程よい甘みとしっかりとした味わいで手が止まりませんでした。
           :3-①打ち豆は当時住んでいた近くのスーパーで見つけ、手軽さからマストアイテムに。今はパルシステムでたまに販売されるので、なくなりかけたら買っています。
           :3-②最近は浸し豆を在来のゴマを作っている豊田さんの作る鞍掛豆で作っています。とても味が濃く、こちらも止まりません。ほぼ独占で食べています。今年元旦からの8連続出店が終わり、帰宅後即、豆を水に浸し、数の子の塩抜きをしました。数の子入り浸し豆で一足遅いおせち気分。至福でした。
           :3-③茅葺き屋根の家の隣には、ぴたりとくっつけて増設した台所があり、節分の時は家長である父親がタイル張りの竈で煎り豆を作ってくれていました。乾燥させた大豆の枝や鞘で火を焚き、つる鍋(囲炉裏に下がっているあの鍋です)に乾燥した大豆を入れ大きな木べらでじっくりと煎るのです。料理をすることのない父親が年に一度豆を煎る光景は毎年の楽しみでした。香ばしくなった豆は、決まって大事な行事になると現れる使い込まれた黒い一升枡いっぱいに入れられます。父親が各部屋に豆をまきに歩き、そのあとを兄弟4人ぞろぞろとついて回り、最後に年の数を忘れみんなでこたつを囲んで食べる豆は言うまでもなく美味でした。

質問5:突然ですが、あなたはマメな人間だと思いますか(マメでない方もAB両方お答えください)?
           :マメではありません。

→マメではないと答えた方
質問A:どんな部分がマメではないと思いますか?またもっとマメにできればいいのになと思うポイントがあれば教えてください。
           :
日々こつこつと毎日なにかを続けるというのができません。これが何か一つでもできるようになったらいいです。

質問B:全般マメとはいえないけれど「それでもこんな部分だけはもしかするとマメかも」という部分を見つけて挙げてみてください。
           :洗濯の仕方はマメな方かと思います。パンツ(ズボン)は必ず裏返し、ボタンホールに掛かっているボタンは全部外して洗います。ネット使用のものはもちろん必ずネットへ。シャツを干すときは襟だけでなく前立てをピシッと伸ばしています。畳むときはもちろん裏返したものは表に返し、息子はカーディガンは被って着るのでボタンを全部留めてからしまっています。





薫さん、ありがとうございました!まったくお菓子を作る習慣のないワタクシから見れば、お菓子を焼くだけでそれは十分マメな人です。ふうき豆、わかります~。ママろばも20年来の大ファン。OL時代にファックスでお取り寄せしたら送信エラーが出て上司に「誰だ、会社のファックスからお取り寄せしてるやつは?」とさらし者にされたのがよい想い出です。あれは特別なお菓子ですよね!

cayaさんのページはコチラ
cayaさんの今後の活動予定などはcayaさんのfacebook もしくはInstagramで。

*写真は上から「きなこ入りミックス大豆のグラノラ」高田谷将宏さんの黄粉引スープマグ、青大豆の浸し豆(レシピあり)壷田亜矢さんの白磁鉢、「豆乳おからクッキー」船串篤司さんのプレート各種、「在来お豆を使った焼き菓子」宮下敬史さんの欅鉢、定番化したジンジャーシロップ。お菓子類の次の入荷は未定ですがジンジャーシロップは販売中です。

2018-04-05 | Posted in Blog, caya 船串薫さんNo Comments » 

 

お豆料理と言えば?…みそ汁、納豆不可!…豆大福?美味しいけど不可…いや、セーフか?

『豆まめしく』の展示中ご来店いただいた皆さま、またOnline Shopをご利用いただいた皆さま、ありがとうございました。無事に1ヶ月間の展示を終了することができました。先日ご報告しました通り店頭でのお客さまからの反響も大きく、またワタシたち自身の満足度も非常に高い楽しい企画となりました。あんなに沢山あったお豆もディスプレイが寂しくなるくらいに少なって、予想通り心にポッカリ穴が開いてしまったかのような豆ロス状態のママろばです。お豆料理のレパートリーも恐ろしく増えたし、お豆の扱いにも多少は通じたし、何よりこれまでお豆料理を遠ざけていた方にもお豆、そして在来種である地豆という存在に興味を持っていただけたことだし、絶対にまたこの企画には再挑戦したいと思っています。慣れないお豆料理に注力しすぎてせっかく沢山撮影していたのに肝心のうつわをじっくりご紹介しきれなかったなど反省点も満載。SNSなどでお豆料理の写真を投稿する度にうつわの魔力に驚かされていたのに…。ここで振り返りも兼ねて記録を残し次回へつなげていきたいと思います。せっかくですから、ろばの家の企画展恒例の作家さんへの突撃インタビューへの回答も一緒に。毎日バタバタで「今さら?」なタイミングでお願いしたアンケートですが、蓋を開けてみるとやっぱり楽しい。これはもう、ほとんど自分の趣味でやっているような企画なのですが、食べることがテーマだとダイレクトにその人の生き方が滲み出ている気がするからたまりません。食べることって、誰にでも関係のある話題ですからね。たったひと事の短い回答でも「らしいなあ」とクスクス笑ってしまうようなものだったり「へえ、意外!」と驚いてしまうものだったり、腹をかかえて笑うような面白いものもあります。そしてその中にどうしてもその人の暮らし方や人となりが表れてしまう。そしてそれはそのまま、作品にも通じる話だと思っています。結局のところわたくしママろばは、その人のユーモアのあり方に興味があるのです。逆に言えば、そこに一片のユーモアも感じられないような作品には、たとえどんなに美しいものであっても興味が持てない、ということなのかもしれません。

そんなこんなでつい陶芸とは全く関係のないことまで聞いてしまうのですが、今回はお豆をテーマにこんな質問をしてみましたよ。以前『やっぱり、ごはん党』の時にアンケートの回答があまりにぶっ飛んでいてのけぞった経験があったので、今回はちゃんとワタシの回答例も挙げたうえで皆さんにお答えいただきました。参考までにわたくしママろばの回答も載せておきます。ただ、これを書いていた時のワタシと今のワタシとでは、そのマメ度にさらに差がついてしまいましたけど、ね。1ヶ月のお豆100本ノックでかなり成長しましたから。

 

『ママろばのお豆観』

質問1:『お豆料理』と聞いて頭にうかぶメニューは?
     :レンズ豆に豚足が入ったスープ。このお料理はイタリアでは年越しに食べる習慣があります。レンズ豆をお金にたとえて、縁起物ととらえるらしいです。チリコンカン。ひよこ豆のカレー。

質問2:これまで食べた中で印象に残っている『お豆料理』は何ですか?
           :会期中に毎日日替わりで出していた中でやった「白花豆のポタージュ」。伊藤美由紀さんのレシピを参考に作りましたが、最後に牛乳を足すとあるのにその前段階であまりに美味しく、そのまま牛乳を加えずに出しました。こんなに上品な味のポタージュは、ジャガイモでもコーンでも食べたことがない、というほど美味しくできました。

質問3:ご自身で、もしくはご家庭(子供の頃でも)でお豆料理をされる場合どんなメニューがありますか?
           :子供のころは甘い煮豆のイメージがあり嫌いでした。イタリアでクラスようになってから日常的にスープや付け合せに出る塩味のお豆料理が美味しくて驚きました。日本に帰ってきてからは材料が高くてあまりお豆を調理しなくなり、ろばの家でべにや長谷川商店さんのお豆を取り扱うようになるまで、お豆といえば年に一回本を見ながら黒豆を煮るくらいで、自分で乾物からお豆の料理を作る機会ががくんと減りました。ミックス大豆で作るお豆ご飯がせいぜいでしょうか。今回の企画で一気にレパートリーが増えたので、今後はマメに豆料理を作ることになると思います。

質問4:質問2、3の回答にまつわる感想、思い出、エピソードを教えてください。
           :北海道の人間は本当にあまりお豆を食べません(生産量は全国トップなのに、消費量は全都道府県中最下位なのだそうです!)。小さい時からお豆料理は甘い煮豆だけしか食卓にあがらず、おそらく買ってきたものだと思うのですが甘ったるくて嫌いでした。そして驚くべきことに、北海道ではお赤飯に甘納豆が乗っているのです!本当はあずきやささげを使うのだと関東に出てきてから知り、驚愕しました。

質問5:突然ですが、あなたはマメな人間だと思いますか(マメでない方もAB両方お答えください)?
           :全くマメな方ではありません。
→マメではないと答えた方

質問A:どんな部分がマメではないと思いますか?またもっとマメにできればいいのになと思うポイントがあれば教えてください。

           :筆まめではないし、友達への返信もものすごく遅れるし、メールのチェックも滅多にしないし「来年こそせめて年賀状くらいは11月中に用意したい」と一昨年前誓っていたのに、昨年はなんと遅れて出す寒中見舞いさえ出さずに終わってしまいました。来年の年賀状は、絶対に11月中に用意する!とここに誓います。

質問B:全般マメとはいえないけれど「それでもこんな部分だけはもしかするとマメかも」という部分を見つけて挙げてください。

           :洗面所の鏡だけはマメに磨きます。小さいころ親に鏡が曇っていると心も曇ると言われたことがどこかトラウマのように心に残っているからかもしれません。残念ながら鏡だけ磨いても心までは磨かれないということも大人になってわかりましたが。そしてさらに今では、あまりピカピカに磨きすぎない方が自分がソフトフォーカス効果でピカピカに見えるかも…とあえて掃除したくない朝もあるくらいですが。まあ自分はさておき、鏡がピカピカだと気持ちがいいですよね。

それでは、今回ご参加いただいたみなさんの回答も、美味しいお豆料理や個性あふれるうつわたちの画像とともに回想してみましょう。例によってママろばの前置きだけで本題にたどりつけないという事態(どこにレシピが載っているのかわからない!とご指摘いただきました)にならないよう投稿を分けてご紹介してゆきますね。今回の『豆まめしく』ではじめてろばの家の企画展にご参加いただいた、白石陽一さんのお豆観からご紹介しようかな。それにしても、お豆料理といえば?という質問をするにあたって「豆大福」とか言うひといるかも…と思ったらのっけからいました(笑)。でも「お豆料理と言えば納豆でしょう?オレなんて毎日食べてるから相当豆まめしてるよね~」と盛り上がっているパパろばよりは妥当な回答に思えてきます。お料理って聞いてるんだからさ、パパろば…。でもその回答『やっぱり、ごはん党』の時の「ごはんが進むおかずと言えば?」の「カレー!」を思い起こさせるボケ具合…。なんか通じないんだよな~、うちのパパろばには。納豆って、料理っていうより加工品じゃない?「じゃ、味噌汁。立派なお豆料理じゃん。」と反論してくるんだけど、それもちょっとズレてる気がする…。そう考えたら豆大福は正統派な回答なのかも。ちゃんとしたお豆料理ですよね。メニューは?と聞いたから違和感があっただけで。

白石陽一さんのお豆観の記事はコチラ

 

2018-04-01 | Posted in BlogNo Comments » 

 

『豆まめしく』まとめ…気になるみんなのマメ度とファイナルマメパのご案内


『豆まめしく』、いよいよ残すところ2日間となりました。3月1日からスタートした”365日地豆を楽しむためのうつわと料理”がテーマのこの展示、11日までの予定だった会期を延長して『もっと豆まめしく』、そして最終週に壷田ご夫妻の追加納品も加わって『さらに豆まめしく』と、どんどんパワーアップ(エスカレート(笑)?)してきましたが、それらがすべて今週末で終了してしまうだなんて…。まだ終わってはいないのに既に寂しい感じがしてきました。これは、豆ロスに陥ること確定ですね。イタリアで暮らしていた頃はレンズ豆やひよこ豆などを使ったスープをよく作っていたのに帰国して10年以上たち、すっかりその習慣もなくなってしまったママろば。お豆料理といえば、年に一度本を見ながらお正月用の黒豆をなかば義務的に煮てみる程度というくらいマメ度が下がっていました。お豆の美味しさはわかっているので、もっとお豆を日常的に食べるようになりたいなと思ってはいるのに”忙しい”を理由につい敬遠していた、というお話は以前書きましたが、この1ヶ月でママろば大きく成長。当初の会期3月1日から11日まで実質9日間、毎日日替わりでお豆のスープを用意していたのですが会期を延長したためその後も3回の週末を全て異なるメニューでシチューかスープをつくるというミッションを自ら課してしまいました。スープ以外にご試食用のお豆のお惣菜も2~3種用意して、さらに土曜日曜には『マメパ』と称してお豆パーティーで5~6種類のお豆料理を作りました。実はその間自宅のろばのウチの食卓にも毎日、余ったお豆や試作のお豆料理を出していました。この一ヶ月で最低でも60種類以上のお豆料理に挑戦したと思います。『地豆の料理』の著者伊藤美由紀さんと「お豆の100本ノック」と呼んで大笑いしていたけれど、文字通り100本に届きそうな勢いでした。今30種類ほどお店にあるお豆で味を知らないのは5~6種類程度なので調理したお豆も20種以上ということになります。短期間でこれだけいろいろなお豆料理に親しめば、嫌でも多少は詳しくなります。

でも、この企画を通してわかったことはお豆料理のポイントだけではありません。まずみんな、お豆が大好きということ。でも意外と家でお豆料理をしないんだという事。そしてきっかけさえあれば誰でもハマってしまうほど簡単で美味しいのがお豆料理なんだということを、確実な手応えとともに実感しました。マメパに来て”甘くない”お豆料理を食べた方(根強い甘煮のイメージについても以前書きました)がとっても新鮮!と感動してくださり、レシピ本とそこで食べたお豆を数種類買って帰る、というケースが会期中どんどん増えていったのですが(美由紀さんの本だけでも60冊近くお求めいただきました)、もっと嬉しいことには「やってみたら案外簡単で大好評でした!」とさらにお豆を買いに戻ってきてくださる方が多数いらっしゃったのです。ざっと計算すると『豆まめしく』でべにやさんから取り寄せたお豆の量は200g袋で450個。それはなんと90kgに相当します。これはまあ、ろばの家のように小さなお店としては結構な量だと思うのです。まだお店に在庫もありますが、一体この期間中どれだけのお豆が皆さんの食卓に上ったのでしょう?。レシピ本あるあるではないですが「買ったはいいけど眺めているだけで満足」というのでは残念ですが、実際に作ってみてさらに他のお豆料理にも挑戦したくなってくれていると実感できたのは、かなり嬉しい経験でした。だって、まったくもって今まさに自分に起きているのと同じ現象なのですから。お豆は美味しくてとってもヘルシー。でも、ちょっとだけハードルが高い…そう思っているのはわたしだけじゃないはず。「みんな一度でも試してさえくれれば、その手軽さ、楽しさにきっと気が付いてくれる。」そう信じて始めた企画だっただけに、この満足感は大きな自信へとつながりました。絶対にまたいつか、来年にでもやりたい!もっともっと、さらにさらに豆まめしく、ブラッシュアップして。

さて、今回の企画展では「お豆のスープやサラダ、お惣菜が映えるうつわ、お豆料理が美味しくできる土鍋」といったお題で作家さんに出展いただいたわけですが、結果お豆だけではなく普段のお惣菜にもぴったりの、とても使いやすい大きさ・形のうつわが沢山届いて大変賑やかな展示となりました。フェイスブックなどのSNSではちょこちょこその場面をご紹介していたのですがまとめた形ではご紹介しきれていなかったので、ろばの家の企画展恒例”作家さんへの突撃インタビュー”の回答とともに『豆まめしく名場面集』といった感じで皆さんといっしょに回想していきたいと思います。ママろばの長ダベリは毎度のことながら前置きが長いのですぐに本題がなんだかわからなくなる!と不評なので、小分けにして単独の記事としてご紹介してゆきますね。

と、なんだかすっかり過去の出来事のようにお話ししちゃっていますが、まだ会期は2日間あるのです。まずはこの1ヶ月のしめくくり、ママろばの100本ノックの成果をとくとご覧あれ!的『ファイナルマメパ』のご案内です。つくばは今、桜が満開。すぐそばの天久保公園も薄ピンクに空が染まっているほど木々が競い合って花びらを振りまいています。暖かな予報のこの週末、お花見がてらぜひ天久保2丁目にお立ち寄りくださいませ。日替わりのお豆スープや、いろいろなお豆料理をお試しいただけます。
ファイナルマメパの詳細は次号で。

 

今年こそ、豆まめしく!ろばでも出来る超簡単お豆レシピ

写真は紫豆といろいろキノコ、タコのアヒージョ。直接コンロにかけられる耐火のスキレットにぎゅうぎゅう詰めてオイルを回しかけ火にかけて20分放置するだけ。美味しいオイルで作りたいわたしはオイルをけちって通常の半量くらいで仕上げます。Theの木綿のキッチンペーパーできっちり包んでその上からオイルを回しかけて落し蓋代わりにするのです。普通具材がつかるまで注ぐとレシピには書いてあるのですが、それだと大量のオイルを使ってしまう。食べた後も沢山余ってしまい、いくらパスタなどに使えると言っても新鮮なうちに使いきれません。久しぶりの『食べろば』はマメパと称してお豆パーティー。現在実店舗で開催中の『豆まめしく~365日地豆を楽しむためのうつわと料理~』という企画展中のイベントで実演したお料理の中で、とっても好評だった一品です。その場で、ストーブの上に置いて出来立てを食べていただいたのです。自分で言うのもなんですが、これがまた美味しいのなんのって!紫花豆にキノコとタコの旨味が浸み込んで、ホクホクとろーり。ところどころカリッと焦げた芳ばしい皮の食感もたまらなく。…ああ、ワインが進みそう。「へえ、お豆をアヒージョにするんだ!」と知ったのはこのスキレットを作った壷田亜矢さん・和宏さんのお宅でいただいてから。スペインに一ヶ月ほど滞在したことがある壷田さんご夫婦はアヒージョやパエリアなどの料理を日常的に、いろいろな具材で作られるのです。あまりにも美味しくて、絶対自分でも作ってみようと思っていたのです。そうしたら、偶然つくば市の図書館でみつけた『地豆の料理』という本に、紫花豆とキノコのアヒージョのレシピが載っているではありませんか。これはもう試してみるよりほかありません。

で、出来上がりはコチラ。どうです~?美味しそうじゃないですか??コチラのレシピはメルマガで~(笑)。なんちゃって。伊藤美由紀さんの本に載ってますのでぜひそちらをご参照ください。意地悪じゃないですよ。他にもご紹介したいレシピだらけの素晴らしい本なのですが、著作権もありますのでね。ネタばらしはこのくらいにしておきましょう。

それにしても”今年こそは豆まめしく!”そう誓ったのは去年のお正月。「今年は毎週お豆料理を作るぞ~。だってこんなに簡単で美味しくて、その上ヘルシーなんだから!」そう思っていたはずなのに、実際には去年一年間で何回お豆を戻したでしょうか…。ただ袋から出して水に漬けておく。それだけのことなのに、なぜだか面倒に感じてしまう。例えばこんな経験はないですか?いざお豆を調理しようと戻してみたはいいけれど、次の日なんやかんやと忙しくてお豆を煮る余裕がなくなってしまう。ああ、時間のある時にしておけばよかったと後悔。そんな挫折を数回味わってしまうともうダメです。本当はただタイミングが合わなかっただけなのに″お豆料理って大変”という印象だけが残ってしまう。でも、断言しますがお豆料理は”超”がつくほど簡単です。お料理初心者こそ手に取るべき食材なのです。でも自分で乾物のお豆から調理するだなんて、きっととても料理上手な人だろうと思ってしまいませんか?そんなことはありゃしません。お豆料理といってもいろいろあるのです。確かに、黒豆や甘い煮豆などを上手に作るのにはそれなりに経験が必要だと思います。でも黒豆や五色豆ばかりがお豆料理じゃないのです。「今夜は五色豆を作ったわよ」だなんて、相当マメな奥さまのイメージですよね?それがいけません。大豆料理の代表みたいにクラシックな教本に出てくるあれは、本当にマメな人しか継続してつくれませんから。だいたい五目ご飯とか八宝菜とか、名前に数字がつくお料理って大抵手かずが多いんですよね。大豆を素茹でして青のり振りかけただけだって立派なお豆料理なんです。そっちを試してみる方が、よっぽどお豆にハマると思うんだけどな。それだけで十分に美味しいし。だってね、いいですか?ジャガイモよりも手軽なんですよ?泥もなく皮を剥く必要さえなく、ゴミも出ない。ただ、お水に浸しておけばお鍋ひとつですぐ調理できるのです。その浸水さえ不要なレシピやお豆だって、沢山あります。お豆は、ぜんぜんマメじゃなくても使えるんです。それが今回の『豆まめしく』で、最もお伝えしたいことなのです。簡単、美味しい、ヘルシー。もっとお豆を食べましょう!今日からあなたもマメ人間、です。

…とまあ、ずいぶんエラそうにお豆の達人ぶっていますが、かくいうワタシもべにや長谷川商店のミックス大豆でお豆ご飯の美味しさとその呆れるほどの簡単さに開眼するまでは、年に一度本を見ながらお正月用の黒豆を煮るくらいが関の山でした。シチリアで暮らしていた時には毎日のようにお豆をスープやサラダ、パスタにしたりしてマメに調理していたのに。そう、お豆は本当に習慣の問題。料理スキルとは関係ないのです。やるか、やらないか。ただそれだけ。この企画展が決まってから、これまでの人生において調理したトータルの回数を優に上回る数のお豆料理をこなしてしまいました。しかも、さほど苦でもなく。夜お豆を水に漬けて、朝起きたらすぐ火をつける。そうすると、もう出勤前にはあとは調理するだけという茹で豆が出来上がる。ろばのウチでは今、部屋のいたるところにお豆を戻すためのお鍋が置かれています。雨漏りでもしてるのかと思うくらい。もう、戻すお鍋が足りなくてボールやら鉢やら総動員です。毎日最低3種類はお豆を戻し、その横でまた3、4種類茹で上がったお豆がスタンバイしているという光景を見ながらお豆料理をいただく、という生活が続いています。でも、全然飽きない。チビろばたちも文句を言いそうなものですが、お豆の種類も調理法も違うので喜んで食べています。でもさすがに今日はお肉にしてあげようかな(笑)。でも大人だけならずっとお豆だけでも十分だねと話しています。そのくらい美味しい。そして楽しい。いや~お豆って、ほんっとうにいいですね~。

『豆まめしく』には、お豆は一度も調理したことがないという方から毎日何かしらお豆を調理しちゃうという筋金入りのマメ人間まで、様々なお豆感を持つ方が来てくださいます。大多数の方は「お豆ってちょっとハードルが高い」と敬遠してきた人たちです。ところがお店でご試食の黒千石大豆のマリネを試していただくと、まずお豆自体の風味の強さに驚いて「なんですか、これ。本当にお豆?」と興味を持ってくださるのです。マリネと言えば聞こえがいいですが、要は茹で上げたお豆にオリーブオイルと塩をふりかけるだけ。ところがこれが、眼からウロコというほど仰天の美味しさなのです(下のレシピに写真アリ)。コクのある凝縮したお味とコリコリ感は、ナッツのよう。「大豆は浸水しなくても調理できるんです。特に黒千石大豆や間作大豆なんかは小さいので、熱湯を注いでぴちっとラップをしていれば2時間くらいでもこのコリコリの食感になりますよ~」と説明すると「そんなに簡単ならやってみます」と、お豆を手に取ってくださるのです。いやはやママろば、デパードで実演販売できちゃうかも(笑)。

そうしてこのマリネ、一度に一袋200gをまとめて作ってしまえばさまざまなお料理に展開できるスグレモノ。日曜日のマメパでは、この黒千石大豆と同様にして作った間作大豆を残り物の玄米と和え、ひじきとレンコンを加えてライスサラダを作りました。ひじきは紫蘇と合うのでやまつ辻田さんの香りのいいしその粉を振って、さらに刻んだ梅干も加えたらバッチリでしたよ。梅干の殺菌効果でお弁当にもよさそう。

ではここで、この2週間毎日皆さんにご試食をお出ししていた中で特に評判のよかったお豆料理のレシピを書き留めておきます。沢山のお客さまの前で約束してしまったのです。店頭でご登録いただいた方に不定期でお届けしている『ろばレター』でも、マメパの告知欄に”お料理の展開レシピ配布”と書いていたのに間に合わず「HPにアップします!する、予定です(←弱気)」と豪語してしまいました。実は今回の企画のために、なんと現在べにや長谷川商店さんに在庫のある地豆(在来種)を全種類取り寄せてしまいました。それが結構な種類になりまして、お豆料理に挑戦したことのない方は何から手をつけてよいかわからないと思うのです。いろいろなお料理に展開できて、そのままでおつまみにもお惣菜にもなるという”ひたし豆”は一度このHPでご紹介しているので、それ以外のお薦めレシピを。騙されたと思ってこの3つだけは作ってみて欲しい。一度でもこの美味しさとその簡単さを実感してもらえたら、きっとお豆料理にハマってしまう…そんなお料理ばかりです。

さあて、久々のレシピ集『ろばでもできる、超簡単クッキング』の、はじまりはじまり~。


基本のコリコリ食感マリネ

材料:小さ目の乾燥大豆(黒千石大豆、間作大豆など) ひと袋(200g)
オリーブオイル


1、大豆は軽く洗って大き目のボールに入れ、たっぷりの熱湯を注いでラップをぴっちりかけておく。

2、1~2時間ほどで食べられる硬さになります。味見をして好みの硬さになったところで戻した汁を減らし、ひたひたに浸る程度に調節する。ちょっと硬すぎるなという時はお水を減らさずそのまま火にかけ、沸騰直前で弱火にして蓋をしたまま5分。そのくらい短時間で十分です。

3、熱いうちにオリーブオイルを回しかけ、塩を振る。

*塩味を薄めにしておくと、後からお醤油を足したり梅酢を加えたりアレンジが効きます。サラダなどに使いたい場合は、熱いうちにみじん切りの玉ねぎを和えておくとお豆の熱で火が程よく通りシャキシャキの食感に。
*シンプルさが身上の料理です。地豆は味が濃いのでそれに負けない力のある調味料を使って欲しいです。ちなみにマメパでは、パーチナのオリーブオイル新潟の美味しいお塩を使いました。黒千石大豆には藻塩、間作大豆には塩の花がおすすめです。ママろばは自分でレシピをアレンジする際、カラーコーディネートに一番気を付けています。黒や紫など色の濃い食材はやっぱりお味にもクセがあります。ミネラルたっぷりで旨味の強い藻塩や魚醤などが合います。一方色の白い食材はやはりお味もデリケート。クリアな味に仕上げたいので塩の花や笹川流れの塩など甘みの強い調味料を合わせてみると、たいていの場合よく合うのです。同様の理由で青大豆に青のり、もドンピシャリでした。これはべにや長谷川商店さんの超使える料理本『豆料理』で見てなるほど!と膝を打ちました。


基本のホクホク煮(ペイザンヌ)

材料:乾燥青えんどう(グリーンピース)一袋(200g) すべてのいんげん系の豆、ひよこ豆でもできますがまずは青えんどうで。
玉ねぎ 大1個
オリーブオイル 大匙2
塩 大匙1

1、お豆は軽く洗ってたっぷりの水に浸し、6時間以上置いて戻します。

2、戻したお豆を火にかけ、沸騰したら中弱火にしてお豆がゆらゆら舞う程度(ブクブク沸かない)の火加減で30~40分(いんげん豆の粒の大きいものは1時間近くかかる場合も)茹で、かじってみて生っぽい芯がなくなったら蓋をしてそのまま置きます。

3、お鍋にオリーブオイルをたっぷり入れ、ダイス状に切った玉ねぎと塩を入れて炒めます。透き通ればOK。焦がさないように注意。

4、煮汁を切ったお豆(煮汁は別によけておく)を3に入れ、ひたひたになるように煮汁を加えて蓋をし中弱火で煮る。時々煮汁が減ってしまったらその都度加え、常にひたひたの状態になるよう保って20分ほど火を通す。

5、好みの硬さになったら出来上がり。蓋をしたまま仕上げればトロトロに。最後に蓋を外して水分を飛ばせばホクホクに仕上がります。角切りのベーコンを加えたり、さっと炒めたイカを加えて和えると立派な主役に。でもまずは、そのまま食べてみてください!

*青えんどう(=グリーンピース)は一般のお豆で在来種ではないのですが、お豆料理が苦手という方でもこのお料理だけは大絶賛してくださることが多いので、きっかけになればと敢えて載せました。えんどうの煮汁は濁らずクリアな色に仕上がります。お味も見た目通りとてもクリアで、煮汁だけでもその高貴な味わいにびっくりしてしまいますよ。出来上がったトロトロ煮をフードプロセッサーやブレンダーでピューレにして煮汁でのばせば美味しいポタージュが出来ますよ。

 


手亡豆のペースト

材料:乾燥手亡豆 半袋(100g)  大福豆、白花豆、紫花豆なども向いています
アンチョビ 大きいものなら1尾、小さいものなら2尾
にんにくスライス2~3枚
オリーブオイル 小さじ2
塩 適宜  *2倍量で作ってペースト状で半分冷凍しておくと楽です。

1 、手亡豆は軽く洗い4時間~6時間たっぷりの水で戻します。手亡は小さいので戻し時間も短いため大きないんげん豆は一晩戻す。

2、1を中火にかけ沸騰したら火を弱め注弱火で30分~40分、柔らかくなるまで茹でる。指で押して楽々つぶれるくらい。蓋をしてそのまま冷ます。

3、粗熱が取れたら豆だけ水をきり、アンチョビ、にんにくと一緒にフードプロセッサーかブレンダーでペーストにする。回しにくい時には茹で汁を少しずつ加え硬さを調節し、なめらかな状態にします。やわらかく茹でてあればすり鉢でも潰せます。

4、味を見て塩を加え、オリーブオイルを加えて混ぜ合わせる。好みで胡椒をふっても(分量外)。

*こちらも大人気のひと品。薄めにスライスしたバケットにパテのように塗ってお出ししたところ、皆さんチーズみたい!とびっくり。その場で即、手亡豆を買って帰られました。小さいので戻すのも茹でるのも時間がかからない上、皮がやわらかくなめらかに仕上がるのです。紫花豆で同様に作って食べ比べていただいた時も、お豆だけの違いでこんなにも味が変わるのかと感心。紫花豆はもっとコクのある味に仕上がります。そう、お豆本来の味を楽しんでいただきたいので、くれぐれもにんにくやアンチョビは控えめに。このペースト、茹で汁でさらに伸ばせば和え衣にもドレッシングにも変身するのでお豆料理を作る時余分に茹でて色々なお豆で試しています。茹でた豆類はとにかく傷みやすいので食べきれない分は冷凍してしまうことをお勧めします。ペースト状でも、茹でて水を切った状態でもジップロックに入れて冷凍できますよ。


さあて、どうです?お豆料理、作ってみたくなってきませんか?『豆まめしく』はまだこれから後半戦。レシピの画像にも登場してくる、地味になりがちなお豆料理をぱあっと映えさせてくれる素敵なうつわやお豆がホックリ炊ける土鍋や耐熱ウエアなどなどたっくさん届いているのに、そのご紹介もまだまだ追いついておりません。写真の撮影に時間がかかりますので、うつわはもう少々お待ちくださいね。その間、基本のお豆料理を試しながら「こんなうつわに盛ったらさらに美味しそう~」と楽しみに待っていてください!今回は本当に素晴らしい作品ばかり集まりました。今年こそ、豆まめしく。まだまだ、間に合います。

『豆まめしく』のページはコチラです。希少なお豆は再入荷の予定がありませんので完売の際は来年の新豆時期が次回入荷となります。ご了承ください。

ちなみに画像のうつわは、上から耐火スキレット/壷田亜矢さん、耐熱土鍋/壷田和宏さん、輪花小鉢/関口憲孝さん、青白磁輪花鉢/関口憲孝さん、白磁小高坏/壷田亜矢さん、濃紺釉八角皿/関口憲孝さん、白磁テクスチャー皿/白石陽一さん

 

 

 

 

作為と無作為の境界に横たわるグレーゾーン。白石陽一さんの磁器。

白も黒も概念。完璧な白や100%の黒などこの現実世界には存在しない。濃い薄いという印象もあくまで相対でしかないのだから、グレーなどさらに多様な概念です。だからこそグレーゾーンという言葉があるのでしょう。白黒つけられない領域。この、無限の可能性を持つグラデーョンを前に「これはグレーなのかそれともベージュなのか?」と腕を組むのはナンセンス。明度や色相を数値で表してみたり、ひとつひとつのグレーに名前を与えてみたり…。それを定義してみたところで見る人変われば印象も変わります。ワタシが薄グレーととらえる色をオフホワイトと呼ぶ人がいるかもしれないし、濃いグレーが黒にしか見えない人もいるでしょう。正解なんて必要ありません。

「白い磁土に黒を混ぜてグレーを作るんですけど、ざっくり濃い目、薄目と意識するくらいでグラムを計ったり記録をとったりはしないんです。」電話口で聞いた白石陽一さんの口調は静かでとても穏やか。作品から受ける印象からはかけ離れたおっとりした話し方でした。ヒトより先に作品に出会ってしまった場合いつもそうなのですが、必要以上に想像を膨らませてしまうので、後から十中八九、想像と違う人物像に驚くことになるのです。白石さんの場合ははじめに作品、次に声、そして先日ついにご本人、という順序で解禁していったので(笑)、膨らみすぎた想像をある程度修正しながら自分の中の白石さん像を固めてきました。この、ソフトフォーカスな輪郭とシャープなフォルムとが同居する独特の世界の創造主。どんな人とまではわからないけれど、きっとすごく色んなことを突き詰めて考える人なんだろうなあと思っていました。無口なのかな?と思いきや、疑問に思うことを質問すると簡潔な言葉で淀みなく答えてくれます。微妙なニュアンスが宿命的に生んでしまう誤解にまで備えてあるかのような、厳重に抑制を効かせた表現。まるでその種の質問についてはすでに考え尽くしてきたとでもいうように滑らかに出てくる的確な言葉の数々が、彼の表現の核にあるモノを浮き彫りにします。言葉の選び方もさることながらワタシが驚いてしまったのは、彼の言葉によってそぎ落とされて残った芯の要素、核となる精神性のような何かが作品からもダイレクトに感じられる、そのことでした。そしてそれがすべての作品に共通して滲み出ていること、何よりその整合性に魅せられてしまったのです。均一なものを作るつもりがもともとないのだから、色だって揃える必要はないし部分的に色がまだらになったっていい。言葉だけ聞くと、ただテキトーに作ればいいと思われてしまうかもしれませんが、出来上がったモノを見ればその不均一さが美しく見える時にだけ、テキトーさえをもよしとしていることがうかがえます。バッチリフルメイクで決めるより、まるで素肌でいるかのようなナチュラルメイクに仕上げることの方が数倍難しい、というのと似ています。こんな風に例えてしまうと白石さんに嫌がられそうだけど…(笑)。

鋳込みと呼ばれる、型に泥漿を流し込んで作る磁器。ろくろなどで成形する陶器と比較して一般的には、同じ形のものを量産できるやり方と認識されています。白石さんのうつわはしかし、二つと同じ形のものがありません。”自然に生まれた形の面白さ”に魅かれるという言葉の通り、カップのエッジもプレートの縁も、ひとつひとつ絶妙にズレたゆらぎを作りだしています。一定の軌跡を持たない自由曲線。砂浜に寄せる波が幾重にも残してゆく泡のように規則性のない、けれど美しく、自然なライン。それは彼が型に泥漿を流し込む際にあえて手を加えず、自然な泥の流れにまかせているから。仕上げ作業でも余計なラインの処理はしないため、純粋に泥の動いた形跡だけがエッジに残ります。まるで動画をストップモーションで見るように、まさに泥が撥ねたその一瞬をフリーズさせたのでは?と息をのむような臨場感をともなう作品まであります。自由なラインと呼ぶとあまりにも人工的に聞こえてしまうかもしれません。自然な、と表現するべきでしょうか。それは意図しようとしてもできない種類のラインなのです。どんなに自然なラインを描こうとしても、自然にしようという意図がそのまま作為となってしまう。作為的でないようにする行為。それもまた作為、です。合わせ鏡を覗き込むように終わりのない、自我との戦い。どこまでが作為で、どこまでが自然なのか…。

「だってね、そもそも鋳込みという手法自体、むちゃくちゃ人工的な手法じゃないですか。泥の自然な動きを楽しみたかったら、違う手法の方がよかったのでは?」「そう、そうなんです。」ズバリ、聞いてみたかったことをたずねるとやはり想定内の質問だったらしく慌てる様子がない。「僕は陶芸を始めたのが人より遅くてスタート地点で出遅れちゃったんです。」「それまで何をしていたんですか?」「地元の福岡で、はじめは運送会社のドライバーをしていて、その後古着が好きだったから古着ならやっぱり東京だろう、と東京に出て行ったんです」「そりゃまた極端な。ご両親びっくりしたでしょうね。」「東京の古着屋で働いていて、いつかは自分でお店をと思っていたんですけど僕が好きなモノは本当に古いヴィンテージのものだけで、そういう品物は当時でもどんどん枯渇してきていた。結局他人からモノを買って売っている限り、常に商材に左右されてしまうでしょう?だったら何か、自分で作りだせる方が将来性があるって思って仕事を辞めたんです。」「え?いきなり?何かアテはあったんですか?」「ありません(笑)。ただもうクラフトと呼ばれるものは金工でも木工でも片っ端から見て歩いて、あれこれちょこっと試したりしているうちに陶芸もいいな、と。」「その間、バイトで食いつないでいた、とか?」「そんな感じです。それで、岐阜の多治見市陶磁器意匠研究所に入ったんです。」「確か村上さんも意匠研ですよね。」白石さんは、村上雄一さんにご紹介いただいたのでした。非常に仲良くしているからと、快く連絡をとってくださったのです。…と、またまた大きく本題からそれてしまいました。そう、なぜ自然な泥の動きを楽しむのに直接泥をこねる手法にたどり着かなかったのか、という質問でした。はじめは彼自身The陶芸!というイメージの土をこねてろくろを挽き…という海原雄山的な(注:ママろばの勝手な補足例です)作品を目指していたし、現に展示会などを見ていたのもクラッシックな作品ばかりだったそう。それが、東京で現代的な作品を見て衝撃を受けたこと、研究所の授業で磁器をやり、その時に鋳込みの手法が思っていたより色々な表現ができるところに面白みを見出せたこと…という両方の理由が彼を磁器へと導いたようです。「正直、スタートが出遅れたのもあってそのThe陶芸的世界には飛び込む余地がないなあ、とひるんだというのもあります」そして「鋳込みには無限に表現の可能性があるのに、面白いことをやっている人がまだそう多くはないという点も魅力的だった」と素直に語ってくれました。

「でも僕のやってることって鋳込みには鋳込みなんですけど、ものすごく手間のかかる、生産性の低いやり方なんです。全然人にはおすすめできません」「このすべすべした肌、ひとつひとつ磨いてるんですよね?」「そうなんです。素焼きの状態で全部磨いてから焼くから全然進まない。粉塵もすごいし」「あとこのイレギュラーなカタチの多角形プレート、角が直角じゃないのにどうやって型を作っているんですか?スティック状の型をその都度自由に組み合わせるから同じ形のものは二度とできない、と聞いて不思議だったんです。どうして泥が漏れないのか、って」「まさに。実は無茶苦茶大変です(笑)。あれは、いったんそのスティック同士を泥漿でつなげてから流し込むんです。一回限りしか使えません」なるほど。謎が解けました。まあそれにしても、相当クレイジーなやり方をしているんですね。確かに、これでは全然数をこなせないはずです。



「でもさ、意地悪な質問しちゃうけど、じゃあ自分で作ってみてさ「コレはちょっと作為的すぎるな」とか言って、ナチュラルさが強調され過ぎてわざとらしく見えちゃうようなものをはじいたりとか、そうなったりしないの?」「いや、もちろんなりますよ。でも最近は自分がそう思うボーダーラインの外側にあるようなモノも、許しちゃうようにしてるんです。というか、許せるようになってきました。僕はいいと思わなくても、他人がいいと思ってくれるんならいいや、って。以前はもっと頑なだったんです。もっとギスギスにとんがってて、こんなの全然ダメだ!こっちも全部ボツ!!みたいに(笑)。ある程度は相手にゆだねることが出来るようになってきたんです。いいと思うモノだけを選んでもらえばいいんだし。」…なるほど。肩の力が抜けてきたということなんでしょうね。


「こんな風に話すとものすごく達観しているみたいに思われそうですけれど、実際にはもう全然、逆です。その場その場で必死にアップアップ、もがき続けてきました」と笑います。笑うととてもシャイな感じで、でも同時に結構アクが強くひょうひょうとした雰囲気もあり、ますます白石さんへの個人的興味が募ってきたママろば。どんどん話を引き出すべく、さらに質問攻めに。結局一時間以上話したでしょうか。電話でも30分くらいお話をうかがいましたが、やはり実際に会って話をするのとでは同じ言葉を聞いていても伝わる内容が変わります。刺激的な時間でした。自分より(とても)若く感性豊かで、一生懸命何かと向き合っている人と接することほど若さを保てることはないというのがママろばの持論なんです(笑)。でもなんというか、ナマの白石さんとお話ししてみると実際には”若い人と”だなんて上からな言い方は全くそぐわない気がしました。彼が落ち着いているからとかではなく”世界観が確立されている”ということなのだと思います。歳って、本当に関係ない。ものの見方~この世界で自分がどこに立ってどちらを向いているのか~を意識できているか。それがきっと、迷いを払ってくれる。そして迷いのない姿勢で作られたものには、一本すっと筋が通る。説得力を持つ。それを核、と呼んでいるのかもしれません。

けれど白石さんは、今獲得しているように見える彼のモノの見方を、簡単に肯定してきたわけではないようでした。「ようやく最近、本当に何とかやっとその片鱗に触れはじめたところなんです」と。そしておそらく彼は今、一番波に乗っているのではないでしょうか。今年は色々なことにチャレンジする年になるだろうという話も、淡々と語る中に隠せない意欲が感じ取れました。自分がやってきたことに対して、ある程度自信がついてきたひと特有の勢いを持っています。その印象をとても爽やかに、嫌味なく身にまとわせていました。その自信は作品にも現れているように思えます。「どれもこれも違っちゃってますけど、何か?」的なふてぶてしさはなく、ただ「今の自分にはそうする以外に仕方がないのだ」という抑制された自己主張を持つ作品たち。もしも気に入ってもらえるなら嬉しいけど、と。

“白黒つけない”白石陽一さんの世界においては、すべての物質を有機質と無機質とに二分する必要もない。鉱物でしかないはずの泥は、明らかに生きている。グレーゾーンは、いつか明らかにされるべき領域とは限らない。その無限のグラデーションは名前を持たず、ただそこに存在する。静かに、陽の光を浴びて。あとはあるがままに、好きなように受け止めればいいだけなんじゃないか…。さんざんべらべら喋っておいて今更なんですが、白石さんの作品は実際に触ってみるのが一番その魅力を感じられると思います。遠目にはなんの変哲もない、シンプルなモノトーンの作品にしか見えませんが、ちょっと近づくとぐっと惹きつけれられる磁力を持っています。Sabadiのシモーネが自身のパッケージデザインに対して話していた言葉が浮かんできました。「その道のプロが見ないとわからないような微細な、0.1ミリ単位のディティールまで徹底的にこだわり抜く。自己満足にしか見えないような些細なことまでもね。だけどその差は確実に出る。素人が一目見てもわかる違いとなってね」どうか、お手に取ってそのすべすべの素肌(と、みせかけてナチュラルメイクかもしれませんよ~(笑)!)と、内に秘めた吸引力を感じてください。

ろばの家には初登場の白石陽一さんです。嬉しいことに、続く3月1日からスタートの『豆まめしく』の展示にも参加していただけることが決定しています。今年第一弾目の展示、面白いことになってきましたね!

白石陽一さんのページはコチラです。

 

 

リゾットの一番簡単な作り方。土鍋で炊けばさらにふんわり。

明日はクリスマスイブですね。メインディッシュはチキンを用意したけれど主食を何にすればよいか困ってしまう、というケース結構ありませんか?パエリアなんかもいいけれど、結構手間も時間もかかる上チキンがホールだったりするとそれほどボリュームのある主食を食べられません。普段夕食にパンを食べることがない人が突然バケットを買っても、なんとなくいつ何と食べてよいのかわからなかったり…。そんな時おすすめなのがリゾット!早い、簡単、軽い!!というイタリアのリゾット専門点のレシピをご紹介しますので、ぜひ試してみてください。本当に、ワタシもこのレシピにしてから失敗知らず。誰でもすぐに美味しいリゾットが作れますよ。材料はお米と具材(今なら牡蠣がおすすめ。ほかにアサリ、ムール貝、クレソン、乾燥ポルチーニ、トレビス、ドライトマト、生ハム(プロシュットやスペックなど)やベーコン、グリーンピースやソラマメなどお豆も美味しいです)とお出汁(水でも構いません)だけ。何にも具材がない素リゾットだってお出汁となるブロードがあれば美味しくできます。砂抜きしたり、ドライを水で戻したりという具材の下処理さえしておけば、調理時間は20分以下というのもありがたい。お米を浸水しておかないので、炊飯より早いくらいです。

リゾットの作り方にもいろいろあって、地方によっても作る人によっても様々です。リゾットはお米が作られるロンバルディア州やヴェネト州、ピエモンテ州など北の地方でよく食べられお料理で、稲作に適さない南の地方では伝統料理のレシピに登場しません。有名なところではサフランとバターをたっぷり使ったリゾット・アッラ・ミラネーゼやアマローネという赤ワインで作るリゾット・アル・アマローネがありますが、どちらも作るシェフによって「これが理想のミラネーゼ」「いやいやこれこそ本家本元アマローネのリゾットだ!」というべきレシピが違い、正解はない状態です。まあ、そういうものですよね、お料理って。あ、そういえば!面白い場面に遭遇したことがあります。ワインの銘醸地にはだいたいその土地の名産ワインの名前がついた、例えばリゾット・アル・バローロなどのような名物リゾットが存在するのですが、ワインをお好きな方はブショネ(イタリア語だとサ・ディ・タッポ)という用語をご存知かと思います。これはワインの欠陥とされている香りで、とある状態のコルクを使用したボトルに発生するものでワインそのものの品質に問題があるわけではないのですが、レストラン側からするとちょっと困った欠陥品なのです。お客さまに「これブショネだから交換してください」と言われてそれがブショネだと思われる場合には断るわけにはいきません。ソムリエであれば、むしろそんな状態のワインを提供したことを謝罪してしかるべきシーンです。ワインは無駄になるし、新しくボトルを開けなければいけないし…高価で希少なワインであればますますトホホ状態です。だからでしょうか?ブショネのワインをお料理に使うレストランが結構あるのです。ブショネはそれを摂取したからといって健康被害が起きるようなものではないので食べても問題ないのですが、ブショネの程度によってはお料理から明らかにコルクの異臭がただようことがあるのです。これは痛い。一度ヴェネトのアマローネ生産で有名なヴァルポリチェッラという小さな村で、ここに来たらそれを食うべし的雰囲気でリゾット・アル・アマローネを注文したら…出てきた出てきた、赤紫色のブショネリゾットが!!これには本当にびっくりしました。そしてその時はコルクの香りがまたかなり強烈で、一度そうと認識してしまうととても不快で飲み下せないほどひどいものだったのです。思わずリゾットを「ブショネだから変えてくれ」と言いたくなりましたが、確かワイン生産者に連れて行ってもらったか何かでホストに遠慮をして言い出せませんでした。いくらもったいないからって、あんなにたっぷり使ったら、ねえ。あの時にブショネは加熱しても飛ばない、ということを学びました。

…とまあ、例によってまた大きく本題からそれてしまいましたね。リゾット、そうリゾットのレシピのお話でした。今日ここでご紹介するのは、ヴェネト州のイゾレ・デッラ・スカーラという一大お米生産地の中心にあるお米屋さん直営レストラン、フェロンというお店のシェフに教えてもらったレシピです。他に何にもない、広大に続く水田の中にポツリと建っているのですぐわかる場所にあります。実はワタクシママろばが直接聞いたわけではなく「フェロンのガブリエレシェフ直伝のリゾットだよ」と言って作ってくれた人から何度も詳しくやり方を教えてもらっただけなのですが。お店にはワタシも何度か行ったことがあります。グルッポ・ヴィーニ・ヴェーリという自然派ワインのグループが主催するワインフェアがその町で行われるので、その帰りに寄っていたのです。『Antica e Rinomata Riseria Ferron』というそのレストランは、リゾット専門店。当然自社ブランドFerronという名前のナノ ヴィアローネという小粒の最高品種のお米を使用しています。1650年創業というから相当歴史のあるおこめ屋さんですね。それまでは、日本でイタリアンのシェフなどがフライパンを大きく回しながらアツアツのブロードを少しずつ加える、マンテカーレ(言葉自体は捏ね回す、の意)と料理人が表現するやり方でリゾットを作るところしか見てこなかったワタシにとっては衝撃的な作り方でした。だって、どこからどこまでも日本の炊飯と同じやり方に思えたからです。唯一の違いはお米を研がないところ、でしょうか。なんだ、リゾットってこんなに簡単なんだ!そうわかってからはとても気軽にリゾットを作れるようになりました。お米はそうっと扱わないと壊れてしまう。だからガシガシ混ぜたりしない。「沸騰したら一度鍋肌から離すのに優しくかき混ぜて、あとは一度蓋をしたら火が通るまで蓋をとらない」というポイントもお鍋でお米を炊くときと全く一緒です。そうして、ワタシが食べさせてもらったそのガブリエレシェフ直伝レシピのリゾットは、これまで食べたどんなリゾットより軽く、ふんわりしていました。チーズだってしっかりと使っているのに、重たさが全くないのです。リゾットってどうもお腹にたまってあまり量が食べられない、という印象があったのにいくらでもおかわりできそうでした。

先日イタリアから沢山ワインの生産者が来日した際に、ロンバルディア州のアール・ペ・ペという造り手にドライポルチーニ茸をいただきました。上の写真はそのポルチーニとその戻し汁を使ったリゾットです。こんな乾燥ポルチーニは初めて!というほど上品で香り高いキノコでした。リゾットに使うお出汁は、わざわざ鶏ガラやお魚で時間をかけてブロードやフュメを用意しなくても大丈夫です。もちろん、美味しいお出汁があれば何も具材がなくても美味しいリゾットができるので、たまたまあるならば使うべきですが、お鍋の残り湯や鶏ささみを湯がいたあとのお湯、お豆の戻し汁などでも十分美味しく作ることが出来ます。なぜなら、白飯だって十分美味しいからです。寄せ鍋をした翌日なんてチャンスですよ。お鍋のシメに雑炊を作る時ご飯がひたひたになるように余分な水を捨てますよね。それをとっておけばよいのです。今なら牡蠣がおすすめです。牡蠣からいいお出汁がでるのでお水だけでも上等のリゾットができますよ。

レシピは今手に入りやすい牡蠣でご紹介しますが、さまざまな具材でアレンジ可能です。ではでは、Risotto al Ferron フェロン風のリゾットの作り方へと移りましょう。ああ、我ながら前置き長かったあ~。いつもお付き合いありがとうございます!


牡蠣のリゾット(2人前)

お米(あまりモチモチが売りの品種じゃない方がつくり易いです) 1合
水か野菜のブロード 380cc (お米の約倍量) *具材を炒め始めたら火にかけておきます。
洗った牡蠣 小ぶりのものなら10粒~12粒くらい *洗って冷凍したものがあれば、出汁が出易くリゾットに最適です。
玉ねぎ 半分をお米粒大程度にみじん切りしたもの *ここでだいたいお米と大きさをそろえておくと口当たりのよいリゾットができます。
白ワイン 少々(なければ水で代用)
エキストラ・ヴェルジネ オリーブオイル 大匙2(お米、具材それぞれに大匙1杯ずつ使います)
おろしたグラナ・パダーナチーズ(パルミジャーノでも) 20g
バター ひとかけ(10gくらい)
塩、こしょう

1、玉ねぎをオリーブオイルで炒め、少し強めに塩をします。焦がさないように優しく、透明になる程度で十分。

2、牡蠣を加え少し炒めてからすぐに白ワインを回しかけます。ジュジュッとワインが音を立てたら優しく混ぜて蓋をします。冷凍した牡蠣を使う場合は回答せずに凍ったままで加えます。

3、牡蠣に火が通ったら(縁が少しチリッとするくらい)いったん牡蠣だけ別によけます。

4、お米をあらわずに玉ねぎが残っている鍋に入れ、全体にオイルが回りお米がしっかり温まる程度に(数分です)優しく混ぜます。

5、そこに熱湯か熱したブロードを一気に加え、ひと煮立ちしたら鍋肌からお米をはがすようにそっとかき混ぜ具材とお米を均一にします。

6、蓋をして極弱火に調整し、13分~15分。火を止めてから蓋を開けて先によけた牡蠣を戻し、チーズとバターを加えて全体を下から返すようにふわりと混ぜ合わせます。ここで味をみて足りなければ塩を足します。

7、お皿によそい、胡椒(もちろんマリチャ!牡蠣には特にロッソ・スクーロ・ディアマンテがスモーキーでおすすめです)を挽いて食卓へ。お好みで一筋オリーブオイル、足りなければチーズも散らして。Buonappetito!



写真は先日作った牡蠣のリゾット。自宅なので携帯撮影です。画質はお許しを…。ベッカライさんで購入できる平飼いたまごのみたらいさんが朝清流で摘んだ、摘みたてをもってきてくれるクレソンがあったのでクレソンも入れました。その場合は牡蠣を最後に投入するときにちぎったクレソンも入れて、いったん蓋をして少しだけ蒸らすと風味が残って美味しいです。

家でもお店でもヘビロテで使用している関口憲孝さんのリム皿。スープにもシチューにも、リゾットにもパスタにも使える上、ちょっと汁気のあるおかずにも使える万能選手。昨日岩手から、3色オーダーしていたものが届きました。このお皿のようにリムが適度にあると、ワタシのように雑多にただどかんと盛り付けてもなんとなく上品にまとまるからありがたいです。リムの幅は心の余裕、という素敵なセリフを東海地方の有名ギャラリーのオーナーから聞いたといって、一宮の友人でリストランテをやっているご夫婦から聞きました。なるほど!言われてみれば確かに、リム幅が広ければ広いだけ、非日常感みたいなものが醸し出される気がします。上のポルチーニのリゾット、例えばちょっと、白石さんのこんな白磁のお皿に盛っただけでほら、おリストランテちっくな特別感が!クリスマスにぴったりのひと皿、できました~!

とまあ、お皿で遊ぶのはほどほどにしつつ、ガブリエレ・フェッロン氏が説く「これだけは押さえて欲しいリゾットのポイント」をおさらいしておきましょう。
1、お米は研がない(これはイタリアでは当たり前なので彼は言及していませんが)
2、お米が壊れて余計な粘りが流れ出ないよう、そっとやさしくかき混ぜる(炒めつけない)。
3、お出汁はアツアツの状態で、同じ温度になったお米に一気に加える。お米と液体の比率は1:2。
4、お米の過熱は極弱火。赤子ないても蓋とるな!
5、チーズとバターは最後に和えるだけで、さっくりふんわり混ぜる。

以上の点だけ押さえれば、フェロン風の軽くて優しいお味のリゾットができますよ。イタリアではもう少しトロリとした、液体状のリゾットが主流な気がしますがワタクシは断然ふんわりと、盛り付けた時だら~っとお皿に広がるようじゃなくちゃんと立っていられる質感のリゾットが好きです。お米の硬さはお好みですが、アルデンテだからといって芯に粉っぽさが残っているのはNG。日本の硬めの白飯、くらいの硬さが好みだし消化にもよいと思います。それから、お鍋はルクルーゼやストーブ、耐熱土鍋など厚手で保温力の高いモノを使うこと。土鍋はかなりふっくら仕上がります。ちなみに写真のリゾットはどちらも土鍋でつくりました。ポルチーニのリゾット、笠原良子さんの土鍋で作ったんです…お店で。そのままパパろば、ママろばのまかないとなりした(笑) 油調理もできる耐熱お鍋ならリゾットにも適しているのでもっともっと土鍋を活用してみてください。『冬は鍋』特集で、絶賛耐熱調理土鍋ご紹介中ですよ~ってさりげなく宣伝!もちろん昨日岩手から届いたばかりの関口さんのうつわも大宣伝!スープ皿は色違いでもスタッキングできるのでお好みで何枚かそろえても楽しいですよ。

#新着!関口さんの毎日使いたいうつわが届きました。
#笠原さんの耐熱調理土鍋はリゾット・パエリアもお手の物。

 

2017-12-23 | Posted in Ricetta レシピNo Comments » 

 

どこの世界にでもね、いるんですよ。売れるモノを作るんじゃなくて作らなきゃならないモノを作る変な奴が。

わたくしママろばとパパろばの間では、お会いする時に最も緊張してしまう作家さんといえば若杉さん、に決まっています。益子でこの緻密な急須を作っている、若杉集さん以外ありえません。

益子でたった一人、40年近くひたすら益子の土で急須を作り続ける孤高の陶工。理工系のアタマと理論的なアプローチで、機械ですらここまでできまいという神業のような見事な手仕事を操る。組織と群れず体制に立ち向かう一匹狼的なストイックさは、この業界に足を踏み入れて間もないワタシたちにとってはちょっと恐れ多い、大きすぎる存在でした。

先週のお休みに、久しぶりに若杉さんの工房を訪ねました。隣接するご自宅へと続くアプローチに覆いかぶさるようににびっしりと植えられた木や山野草。中にはずいぶんと珍しい品種のものもあるようです。「ほら、これなんか見てごらんよ。夏椿なんて呼ばれているけれど山茶花(さざんか)の一種だよ。でもこれは葉っぱがギザギザじゃないよねえ?」と、帰り際わたしたちを車まで見送りに出てきてくださった際に、(ワタシには)椿にしか見えない木を指さして若杉さんが言いました。白と赤の混じった小ぶりの花をつけた背の高い木です。意地悪っぽく笑っているのは、少し前にワタシが「椿と山茶花って、葉っぱにギザギザがあるかどうかで見分けるんですよね?」と話したからです。「山茶花はね、こうやって花びらがバラバラに散るでしょう?椿は花房がボトリと丸ごと散ってしまうんだよ」と正しい見分け方を教えてくださいました。なるほど、そうか。若杉さんは自然のことは何でもよく知っていて、本当に博士のようです。学者肌なのか気になることがあると数年かけて生態系について調べ上げ、詳細なレポートを作ってしまいます。どこかに提出するためとか学会で発表するためとかではなく、全くもって純粋に自分が気になることを調べるのです。若杉さんが益子のあちこちで地層の中に埋もれていた異なる種類の粘土の層を偶然見つけたのも、あるトンボの分布を調べるために近隣の山をくまなく歩いていた時のことだったのです。

そのあたりのいきさつは、ぜひ昨年の6月にご紹介した本HPの『急須というカタチをした、土の、地球の記憶』という記事を読んでみてください。ワタシタチがどうしてここまで若杉さんの急須を特別扱いするのか、きっと理解していただけると思うのです。そう、手仕事とは思えない程の美しい精密な作り。そこに存在する物体から感じ取れる気迫のようなオーラだけでも十分凄さは伝わると思いますが、それ以上に、その陰に潜む若杉さんがたどってきた険しい道のりに、涙が出るほど切実に胸に迫る重みを感じとっていただけると思うのです。その記事にも書いたのですが、決してそれを知った上で購入してほしいとか、この急須を手に取るからにはそれくらい知って欲しいとか、そういう前情報を与えることが目的ではないことを、どうか理解してください。ただあまりにも重たい現実を目の当たりにして、若杉さんが抱えている危機感や絶望を、もっと多くの人に知って欲しくて、ただそれだけの思いでご紹介しているだけなのです。

消えてゆく原土。最後の一人となった手濾し業者の廃業。さびれてゆく窯業地の生き残りのために書き換えられてゆく伝統。若杉さんの中には次の世代に伝えたいことが湧き出るほどあるのに、それを受け止める担い手がいない。耳を傾けようとしない。

「もう僕も歳だからね。急須なんてそんなに沢山作ったってしょうがないんだよ」とボソリとつぶやく若杉さんはしかし、70歳を目前に少しも精彩を欠いていません。ロクロを挽く手だってきっと0.1ミリたりともブレたりしない。にもかかわらず若杉さんが感じているのは使命感よりも絶望と落胆なのです。そして諦め。商業的成功に重きを置くように見えてしまう益子という土地にも、ペットボトルでしかお茶を飲まない世の中にも。

工房へお邪魔するのは今回で5回目くらいでしょうか。はじめは取りつくシマのないように思えた硬い対応も、最近は心なしか少しだけくだけてきたように思える瞬間が出てきした。作品を見せていただいた後にはご自宅のダイニングで自らお茶を淹れてくださるのがお約束のような感じになってきていて、恐縮しつつもものすごく嬉しいパパろばとママろば、です。その日も、すでにテーブルには塗りの小皿に3人分のお菓子が用意されていて御煎茶を淹れてくださいました。完璧な温度とちょうどよい濃さで。煎茶道の手習いを長年続けられているせいかもしれませんが、それ以上に感じるのは「この人はここに一人で暮らしているんだ。でも自分のためにお茶を淹れる時でも絶対にこうして丁寧に淹れるのだろうな」という確信です。ご自身の湯冷ましにお湯をくぐらせ、タイマーもかけずお喋りしながら適当な頃合いに汲み出しに順に注いで…。

数年前にやはり陶芸家でいらした奥様に先立たれ、広い2階建ての家に一人で暮らす若杉さん。わたしが塗りの小皿が素晴らしいと告げると作家さんのお名前や、その方にまつわるエピソードを話して下さいました。そこからひとしきり、話題は漆についての深い考察まで発展していったのですが、その話のひとつひとつのまあ面白いこと面白いこと。ワタシたちのようにまがいなりにも手仕事に関わっている人間にとっては、お金を払ってでも受けたい、まさに「世界一受けたい授業」のように貴重なお話しばかりです。素晴らしい作品も拝見して、とても豊かな気持ちでお宅を後にしました。その時に椿の話をしてくださったのです。

毎回、若杉さんのお宅を訪ねた帰り道は、ワタシもパパろばも胸に何か大きなつかえのような重しを載せられたように黙って車に乗ってくることになります。もっと力のあるひとなら、それを使命感と呼べるのでしょうか。いつも若杉さんに言われるんです。今回も漆の話をしていて言われてしまいました。

「どんな世界にもね、いるんですよ。変なのがね。売れるものを作るんじゃなくて、作らなければいけないものを作っている、変わり者がね。面白いですよ。そういう奴を見つけてきなさい」

まだまだ若杉さんに向かって「いや、アナタ十分面白いですよ」とは言えないな~。「若杉さん、ワタシたちもっともっと色々なモノを見て、世界を広げていきたいです。ご指導お願い致します!その内お酒持って遊びに行きますからね!」っていつもパパろばとは言ってるのに、まだまだ面と向かっては言えないな~~~(笑)。

と、なんだか誰に向かってお話ししているのだかさっぱりわからない文章になってしまいましたが、とにかく読んだことのない方は『急須というカタチをした、土の、地球の記憶』の中の土祭の記事を読んでみてください。ワタシにはそのくらいしかお願いできません。

これだけ大層なこと言っておいて「その若杉さんの急須やポット、湯冷ましも入荷しております」なんて書いたらそれだけで一気に興ざめな気がしないでもないですが、とにかく実物を一人でも多くの人に手に取っていただかないことには話が前に進みませんので、そこは悪びれずいきますよ。飾り物ではないですからね。美味しいお茶を淹れてくださいね。若杉さんのように、自分自身で自分のために淹れるお茶も美味しく淹れられたら、それはとても素敵なことだと思うのです。

*こちらの記事は2018年4月に公開されたものです。『ろばの家の定番展』に参加いただく若杉さんの関連記事として参考までにご覧ください。