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刺激されるのは、何よりもまず触感。こんなにも色っぽい焼き締めが存在するなんて。

「思いっきりなでなで、頬ずりしてやってください。」松本かおるさんがご自身で何年か使い込んだというサンプルのうつわ。添えられていたメモにそう書かれていたのでした。下の写真はその汲み出しですが内側がかなり味のある色に育っています。写真からはわかりにくいですが表面もところどころ艶々と光沢を帯びて、なんともなめらかですべすべした触り心地です。とても焼き締めという感じがしません。焼き締め。つまり無釉で焼かれた陶器で要するに粘土だけで出来ているということです。一般に荒々しいイメージのある陶器で手触りももっと粗いことが多い。でもかおるさんの焼き締めはまるで河原で見つけたまん丸の石、波に洗われたガラス石、上質な石鹸…。一番近いのは、子どもの頃母親が洋裁に使っていた三角チョークだと思うのですがわかるかしら?今ではペンタイプのチャコペンが主流だろうけれど、当時は水色やピンク色の薄っぺらい小石のようなもので布に印をつけていました。そのチャコの手触りと、かおるさんの使い込んだうつわの表面の感触がとても似ているのです。


なめし革が使えば使うほど光沢を帯びて色濃く育ってゆくように、かおるさんの焼き締めは手で持ったり洗ったり、使っていくうちにどんどん質感が変わってきます。ワタシがはじめて購入したフリーカップは3月から毎朝使って、もうすでになんともいえない鈍いツヤが出てきました。玉子の殻のようにマットな触感からより滑らかな肌へとテクスチャーを変え、乾いた見た目も濡れたようにしっとりとした質感へ。触れば触るほどなめらかに、気持ちのよいすべすべのお肌になってゆくのです。かおるさんではないですが、いつまでもナデナデしていたい。

そして驚くべきはその軽さです。焼き締めというとどうしてもどっしりと重く分厚い印象がありますが、かおるさんのうつわはかなり薄くシャープな印象です。それでも冷たい印象がないのは、暖かなオレンジ色が基調だからでしょうか。イタリアはトスカーナ地方、シエナやフィレンツェのテラコッタの屋根…「魔女の宅急便」でキキが箒にまたがって空を飛んでいくときに眼下に広がる、あの美しい赤茶色のモザイク模様。はじめて見た時その風景を思い出し心が躍りました。こういう焼き締めもあるんだ、と。そして手に持ってみた時の軽さと独特の質感に、すっかり感嘆してしまいました。なんて洗練されているのだろう。ナチュラルであることと、洗練されていることは、同居できるのだという発見に心から驚きました。

この、さまざまな色調のオレンジ。これらの色の違いが100%、土だけで出されているだなんて…。乾いたタイルのように白っぽいベージュからはじまって、明るいオレンジ、濃いオレンジ、赤茶、茶褐色、そして炭のように焼け焦げた黒褐色。それぞれの濃淡の中にも赤味、黄身、グレーがかっていたりと微妙なニュアンスの違いもあり…要するに無限なのです。さらには一枚のお皿の中にさえ異なる色味や濃淡のついた模様のような表情もあり、ずっと見ていても飽きません。こんな風にまったくのすっぴんでここまで違った表情を見せてくれるなら、確かに釉薬なんて必要ないんじゃないか?とまで思ってしまう。少なくともかおるさんの焼き締めを見る限り、色味がなくて物足りないだなんて思えないのです。


「わたしが使っているのは備前の土だけです。同じ備前という土地の粘土であっても採取される場所により成分が変わります。備前にいた頃はよくあちこち行って掘っていました。さまざまな色合いの粘土があって今は4種類の異なる粘土とそれらをブレンドしたものを使いわけています。さらに、焼く時の温度や酸化・還元の加減、何回焼くのかでも仕上がりの色は変わります。3回焼いているものもあるんですよ。炭や藁を使うこともあるので予期せぬ化学変化により、さらに複雑なうつわの表情を楽しむことができるんです。」その無限の可能性に、かおるさんはすっかり魅了されてしまった様子。もともと複数の飲食店を展開する会社の広報として働いていたせいか、食とうつわには常に関心を持ち続けてきたのだと話していました。

「わたしはスタートが遅かったから…」とおっとりとした口調で続けます。「食べることが大好きだったので、自分が使いたいうつわを作りたいと思って。それで憧れていた備前の陶芸家に師事するため、生まれ育った東京を離れ備前陶芸センターに入りました。思い切りはいい方なんです。フットワークが軽いのかも」と笑っていました。とっても華奢で可愛らしい女性なのに、話していると芯の強さのようなものも感じてしまう。迷いがないという感じでしょうか。「ずうっと焼き締めばかり作っていると、色物(釉薬をかけたもの)をやりたくなったりしませんか?」とたずねると「土だけでこんなにも表情が変わるのに、まだまだその魅力を引き出しきれていないという思いの方が強いんです。」と、どこまでも焼き締めに惚れ込んでいるのだということが伝わってきます。

まだ陶芸自体本格的にはじめて10年ちょっと。比較的早い段階から今のようなスタイルに落ち着いたのは、とにかく自分が使いたいうつわを目指してきたから。焼き締めは好きだけれど、自分で使うのならやはり軽くて扱いやすいものに手がのびます。お酒も好きで、ビールを美味しく飲めるうつわが作りたくなった。極薄のグラスで飲むような感覚を求めて自身の作品にも薄さを求めるように。ろくろで成形した後ろくろで削って厚みを調節し、さらに手持ちで削ってから手で撫でて磨きます。その後完全に乾いてからヤスリをかけ表面を滑らかに仕上げるのです。非常に行程の多い、時間のかかる方法ですが出来上がった姿には唯一無二の個性が生まれています。余計な装飾が一切ない究極にシンプルなデザインは、むしろ男性的でさえあります。ひたすら削ぎ落してゆく、という潔さがそう感じさせるのかも。

女性として、ちょっと羨ましすぎるほどの存在ですが、なんとも気さくな明るい性格で一度お会いしただけで意気投合。一緒に食卓を囲むのが、楽しいこと盛りあがること!そもそもろばの夫婦、食べる事・飲むことに感心がない人とはなかなか分かり合えないのです。ワタシはまだかおるさんがご自身の焼き締めでビールを飲むところを見たことがありませんが、きっと、ものすごく美味しそうに飲み干すんだろうな~。ちょっと小ぶりのビアグラスが似合う、白くほっそりした手指の持ち主。それこそ、ビールのCMに出てきそう。陶器で、しかも焼き締めでビールを飲んだ経験、ありますか?きめ細かい泡ばかりが持てはやされていますが、焼き締めは水気を含むと気化熱でヒンヤリ、ほんとうにキーンと奥までよく冷えているのが手に伝わってきます。サラダやお漬物、お浸しのようにテーブルでもひんやり冷たく保ちたいお料理にも最高です。

手つかず、無垢、といった印象も与える松本かおるさんの焼き締め。まっさらすぎて汚してしまうのでは?と使うのをひるんでしまいそうですが、油モノでも汁ものでも、それこそカレーでもどんどん使ってタワシでゴシゴシ洗い、使い込んであげる方が表面に味がでてくるうえ汚れがつきにくくもなります。土から生まれたばかりの無垢であどけない顔に、だんだんと色々な表情が加わり深みを増してゆく。その時その時の自分の心境まで浸み込んでしまいそうです。

今年の春工房を長野から石川県輪島に移し、新たな生活をはじめたかおるさん。今後は備前の土に輪島の山土を加えた作品にも挑戦してゆきたいと話していました。とても自然体で気取らない、かおるさんという女性の魅力がそのまま作品にも表れています。本当は、作品がうんぬんよりかおるさんという人の魅力をお伝えしたかった。でも、とても文章からだけで伝えきれる気がしません。そして何より、ワタシ自身がもっともっとかおるさんのことを知りたいと思ってしまっている。「え?ジビエカレー?美味しそう!行く行く~!!」っと22日のbeet eatさんの会(ご予約受付終了)にも参加予定です。直接会えばきっと誰もが大ファンになってしまうような、とっても魅力的な女性ですよ。参加ご予定の方、楽しみになさっていてくださいね。ワタクシママろばも、またかおるさんにお会いできるのが(飲めるのも…笑)楽しみで楽しみで仕方がないのです。

下がかおるさん。ママろばと一緒に記念撮影していただいたのですがあまりの顔の大きさの違いにおののき、思わずトリミングしてしまいました(笑)。その下はなんと!今回『Spicy Summer Curry&Beer』のために作ってくださったという三角のプレート。ナンをイメージして作ったのだとか。ナンにでも合いますよ(汗)。かおるさんの作品は、ぜひ色の違いを楽しんでいただきたいです。同じ形で色の違うもの、形も色もバラバラなもの。組み合わせも無限。土の色遊びという感じがまた、楽しいのです。

松本かおるさんのページはコチラです。



 

 

 

使い込むほどにしっとり、艶やかに。宮下敬史さんの木のうつわ。

工房で長年使い込んだ山桜のシンプルな鉢を見せていただいた時、そのゆっくりと年月をかけて染み出してきたような自然な艶に目が釘付けになってしまいました。

横須賀。大雨の月曜日。2度目にお邪魔する宮下敬史さんの工房は屋根を打つ雨の音に閉じ込められて、ただでさえ森に隔離されたような感じのする家が、いっそう孤立して見えました。船の底にいるみたい。はじめてお邪魔した時にも雨音が響いていたことを思い出しました。「すいません、雨男で」とすまなそうに笑う宮下さん。今回に限らず降られる確率が高いのだそうで「なんでですかね~」と首をかしげていました。

宮下さんとお会いするのは実はまだ4度目です。なのに、もうずっと昔から知っているような気がします。益子の近藤康弘さんにご紹介していただいた手創り市で初めてお会いして、パパろばと工房を訪ねたその大雨の日が2度目、昨年の『やっぱりごはん党』に出ていただいた際に納品がてら奥様と愛娘ちゃんを連れてつくばまで来てくださった時が3度目、そしてこの訪問。あれ?つくばでお会いした時は晴れていた気がするし(パパろばが娘ちゃんとボール遊びで盛り上がっていたから)、手創り市もとても寒い日だったけれど快晴だったし、そうそう雨男というわけではないのかも。もしかすると、横須賀という土地が雨がちなのでは…?港町、切り立った坂の多い独特の地形、海岸と山の近さ。湿った空気。

待ち合わせた横須賀中央駅のスタバから迎えに来てくれた車まで走る間ですでに服が濡れてしまい、その湿った服のまま3人で雨の音を聞いていると、なんだか雨宿りをしているような気分になってしまいました。そして世の中の雨宿りをするすべての人に共通する「何もすることがないからとりあえず話す」というルールを律儀に守っているみたいにワタシたち3人は取り留めのないことを話し続けました。正確にはわたくしママろばが八割方喋り倒していたのですが(笑)。仕事の話なんてほとんどしていません。お茶うけに出してくださった奥様手作りの焼き菓子がとても美味しくてそのベトナムのお菓子から旅行の話、子どもの話、知り合いの噂話…。そんな中でほんの少しだけ作品について話した時に飛びだしたのが、使い込んだプレーンなうつわ達の話題でした。

「特別な手入れなんて全然してないですよ。ただ、毎日ガンガン使ってました。パスタ食べたり、汁物盛ったり。油モノでも気にせず使ってるとその油がうつわに染みこむから、わざわざオイルを塗り込む必要がないんです。」

宮下さんは最近、昔よく作っていたようなあまり彫りをほどこしすぎていないシンプルなうつわを自分で再評価しているのだそう。「結局使いやすいんですよね。こんなんでいいんじゃないかな~と思えてきて」そう言いながら見せてくれたうつわはみな、いっさい装飾がなく厚みも適度にあるものばかり。「あんまりにも洗練され過ぎていてもかえって使いにくいんじゃないかと思って」と言われてから最近作ったという作品を見てみると、なるほど鉢の縁やお皿のエッジなど、どことなくこれまでに見てきたものにはなかった雰囲気がある。野暮ったくない程度に丈夫そうな仕上がりになっているのかも。このくらい微妙な縁の角度や薄さだけで、ここまで印象が変わるのだということに少し驚きました。そして漆仕上げのものは心なしかみな、使い込んで味が出てきたような絶妙な鈍い艶感がある。ちなみに上の画像は宮下さんが使い込んできたうつわではなく、今回新しく作られたもので栓の木を漆で仕上げています。

陶器以上に経年変化の激しい木のうつわ。けれど多くの場合その変化は色が褪せ白っちゃけて艶がなくなりただ古ぼけただけの、あまりポジティブな経年変化という印象がない。やはりちゃんとオイルで手入れしないとなあ、とそういううつわやツールを見るたびに思っていました。宮下さんが使い込んだうつわの艶は、オイルで手入れして新品のように保っているのとはまた違う、内側から放たれている艶でした。これ、カッコイイ。正直この状態で欲しい…なんてせっかちなことを言ってはダメですよね(笑)。

「うちももっとガンガン油モノ盛らなきゃダメだよ」と繰り返すママろば。パパろばもすっかりその質感やシンプルな形に心を奪われている様子。単純なワタシたちはすぐにでも試してみたくなるので、もうすでにどのうつわを自宅で使い込んでみようかとウズウズ。パスタにちょうど良いサイズにしようか、サラダボールにしようか…。結局今毎食ガンガン使い込んでいるのがこの下のリム皿。楢の拭き漆仕上げで、最初から唐揚げを山盛りにして、オリーブオイルとヴィネガーをたっぷりかけたサラダをわさわさと盛り付け…。「早く油吸え~」と言わんばかりの料理をヘビロテで盛っているのです。
写真は日曜日にパパろばに届けたお昼ご飯で卵入りビーフン。地あぶらとしこの露というゴールデンコンビで味付けしたなんちゃってエスニック風味です。「めっちゃ油っぽかった。すごい油使ったでしょ」と言われてしまいました。早く油を浸み込ませようと気が早っていたのかも…。でも味ははさておきこんな家庭料理さえカッコよく映っているのはこのリム皿のおかげです。サラダで濃い緑やトマトを盛った時にもバシッと決まりました。お料理の色をビビットに映えさせる背景色として最高なのです。そしてやはり、木のもつ温もりはまったく陶器のそれとは質の違うものです。木のうつわを好んで使う方は皆さんいいますが、軽くて、気兼ねなくラフに使えて、そしてなんにでも合う。木は一色にカウントされないニュートラルさがあり何でも受け入れます。懐の深さ、というのでしょうか。なぜだかホッとさせられてしまう安堵感があります。

同じ種類の材であっても個体ごとに個性が違う木という素材の面白さ。その個体の良さを最大限引き出そうと、真正面から向き合ってきた宮下さん。「漆仕上げものは年輪を隠してしまわないよう薄く残る程度に仕上げていると話していたのに、結構がっちり漆を重ねているものもあるんですね」と聞くと、最近は漆の扱いにも慣れてきて思う通りの質感を出せるようになってきたと話していました。木目の向きや断面の密度によって変わる色の濃淡など、偶発的な表情も魅力のひとつとなっています。「だからどんどん一点物ばかりになってきちゃって…」と困ったように話していました。もとの木が違うんだから、ひとつひとつ違う作品になるのは当たり前というような素材ありきの向き合い方から、さらに一歩踏み込んだ木との関係に思えました。美しく仕上げることより、その素材の持つ個性を見極めて長所を伸ばしてあげる。節や虫食い穴のように欠点となりそうな箇所でもチャームポイントだと褒めてあげる。まるで子育てのようにこちらの忍耐力まで問われてしまう向き合い方のようにも感じます。やはりそれは、月並みですがどれほど深く木という素材を愛しているかということに尽きると思うのです。

はじめて工房にうかがった時に書いた記事もぜひ読んでみてください。素材への思いは宮下さんが木の材を説明しだすとすぐに伝わります。身の上話が始まるのです。「この山桜、いいでしょう?これは本当に良い材でした。標高の高いところで伐ったものです」「こっちの楡は、神代楡といって文字通り神代から地中に埋まっていた材ですよ。密度が全然違います」…ワタシたちから見ればただ色が違うくらいの四角い塊をひとつひとつ手に取って、その材との出会いや性格を語ってくれます。最近長野まで出向いて丸太を一本ごとに買った、という宮下さん。もちろん角材として手に入れるより安上がりになるという利点はあるものの、何より決定的に違うのはその樹がいつ、どのような場所で伐られたものか素性がはっきりするということ。市場で仕入れてきた材は、その履歴までさかのぼることは難しい。樹は葉を落とし根を伸ばさない冬の休眠状態で伐られたものが最も理想的な材となるんです。そしてその後自然乾燥させたものなのかどうかという点もとても重要。木の種類や樹齢だけでなくそういった条件も最終的に作品の質に反映される、ということも初めてうかがった時よりさらに詳しく説明してくれました。

今使っている横須賀の工房は湿度が高くなる時期が多いため、厳密には理想的な環境と言えないのだそう。「長野あたりに移住を考えています」と宮下さん。生まれ育った横須賀を離れ、家族を連れて最も良い状態で樹を寝かせられる場所を探し、もっと広い工房で機材も充実させたい。急な坂の多い横須賀の町。大きな機材を運び込むのにも制限があり、限界を感じ始めているというのも大きな理由だそうで、もしかするとここ1、2年の内にも実現させたいとのことで、ああ、そうしたらこうして気軽に遊びに来れなくなっちゃうなあ、なんてくだらないことを考えてしまいました。

作品はそれだけでも多くのことを語ってくれます。でも、ワタシたちはやっぱり作品そのものだけでなく作家さんとの対話を求めているのだと最近よくパパろばと話します。その時間が貴重でならないのです。作品のことを語ってもらう必要さえありません。くだならい雑談、あわよくば酒を酌み交わし一緒の食卓を囲み…。そういった時間がワタシたちにもたらしてくれる充足感は、いくら仔細に作品を眺めていても見えてはこない何かを与えてくれます。そして願わくばワタシたちもその時間を通して得られた何かを、ろばの家に並ぶ作品たちに吹き込んで行けたらいいなと思うのですが…。ただママろばが長々と熱弁をふるうことによってではなくて、宮下さんの使い込まれた作品のように内側からじんわりと。自然に。

今回届いたうつわは特に、使い込んでその変化を見てみたいと思うようなものばかりです。自然と滲み出てくる艶や色の変化をお楽しみください。…ワタクシのように焦らずゆっくり、ね。

宮下敬史さんの新着のうつわはコチラです。


工房までのアプローチ(見えている屋根は宮下さんの工房ではありません。さらに奥にあります。)
工房へのアプローチがある坂道。写真で見るより急です。

 

 

 

 

Mid Night Blue ミッドナイトブルー ~加藤仁志さんの”青の名前”~

「これ、黒ですか?ん?紺色なのかな?」そう言って手に取ったお皿を窓辺で見ている時などふとした加減でこの色があらわれると、息をのんで魅了されてしまいます。陽の光に反射した部分だけこんなに鮮やかなブルーが浮かび上がるのです。この画像、まったく色の加工も特殊な撮影もしていません。ただ、直射日光のもとで撮影しただけです。オープン以来扱わせて頂いている仁志さんのルリ釉シリーズ。今回のBlue展はこの色がきっかけで思いついたのです。…ミッドナイトブルー。その秘めごとじみた響きの名前は自然に浮かんできました。真夜中の青。限りなくブラックに近い闇のようなブルーが、一瞬見せてくれる別の顔。深い海の底や宇宙を連想させる、漢字だと青ではなくて碧、という字が使いたくなるようなブルーです。このハッとするような鮮やかな色は、けれど、太陽の光が差し込んだ時だけに見せてくれる特別な色。電灯の光ではダメなようです。黒い土にコバルト釉という真っ青に発色する釉薬をかけることでこの独特な色が出るのだそうです。はじめて加藤さんのルリ釉のうつわを見たのは17cmほどのプレートで、パッと見は黒いお皿だと思っていました。でもそれが実は黒ではなく、とても深い紺色なのだと気がついた瞬間にもうすっかりやられてしまいました。何の変哲もないオーソドックスなデザインに、でも色はちょっと他にないよというような組み合わせ、多分そういう意外性に弱いのです(笑)。形がシンプルだからこそなおのこと、特殊な色が引き立つのでしょうね。とても丁寧な作りで加藤さんのお皿や鉢はどれもラインが美しく、形も引き締まって見えるのは濃い色のせいだけではないということは青白磁の作品を見てもわかります。それでもこの特別な色を話題にしないわけにはいきませんでした。でも実際に使うのは家の中なのですからそうそうこのブルーの輝きに出会えるわけではないし、また実際料理を盛りつける時には真っ青でない方が食材が映えるでしょう。自己満足といえば自己満足。でも、上質な素材が使われたシンプルで長く着られる洋服のように、そっと心の中にしまっておきたい自分だけの満足感なのかもしれません。

そんなセクシーな色のうつわを作っている加藤仁志さんは岐阜県土岐市で作陶しています。ワタクシママろばはろばの家を始めるずっと以前にこのお皿に出会い、愛用歴もそろそろ10年くらいになります。お客さまが来た時にも便利と12枚ほど揃いで持っていたこの17cmプレートは今でも不動の万能皿として、取り皿用にはもちろんケーキ、パン、果物、と何にでも使っています。丈夫で形が普遍的で使えば使うほどそのシンプルな魅力と作りの良さに愛着が増すばかり。正直、使っていてミッドナイトブルーの秘密を意識することはありません。家にはブランチできるような広いテラスやベランダもないですし(笑)。使い込むと今よりもっと表面の艶が鈍り、マットな質感に落ち着いてゆきます。本当に素材のよいシンプルなデザインの洋服といった存在で、こういうもののことを”飽きがこない”と呼ぶのだろうなあとしみじみ思います。いつか自分でお店を始めた時にはパッと見の派手さではなく、こういう芯のある質の良さを伝えていきたいなあ、と思わせてくれた特別な存在でもあります。本当に根っから真面目で実直な方で、もう5年以上のお付き合いになるのにお電話いただくたびに「岐阜県土岐市の加藤仁志です。」と名乗るのです。おそらくは加藤と言うありふれた苗字で混同されないように名乗ってくれているのだとは思うのですが、もうワタシはお声だけでもわかっているのだと、いつか言ってみようと思いながらつい「茨城県つくば市のろばの家の福江ですが」とこちらも名乗ってしまい堂々巡り(笑)。では、そんな岐阜県土岐市の加藤仁志さんのブルーについてのあれこれ、うかがってみましょうか。


 

加藤仁志さんの青の名前

Q1、好きな色は何色ですか?理由があればそれも教えてください。
–白色。理由は特に無いです。

 Q2、よく身に着けている色があれば教えてください。また、好きな異性に身に着けていて欲しい色があれば教えてください(〇〇色が似合う人に憧れる、など)。
–仕事中に履く靴は、10年ほど前から、赤色の入ったランニングシューズ。

 Q3、青、と聞いて思い浮かぶのは何ですか?
–空と海。

Q4、ご自分の作品の青を画像を見せずにどんな色か説明するとしたらどんな青だと表現しますか?
–深い青色。

 Q5、Q4の作品の青はいつごろから作り始めた(使い始めた)のですか?またそのキッカケ、経緯を教えてください。
–10年ほど前から制作しています。学生(20年近く前)の時に買った釉薬がたまたま残っていて、普段使っていた土に使ってみたのがキッカケです。

Q6、よくブルーな気分、などと言いますね。一般に憂鬱な気分を差すようですが憂鬱な時の気分転換法を教えてください。
–子供と遊ぶ。

Q7、この世の中に『青』という言葉も『ブルー』という言葉も存在しないとします。あなたが色の名付け親です。あなたは、それを何色と呼ぶことにしますか?
–空色。(海色も良いかと思いましたが、住んでいる岐阜県には海が無いので…。)


そそそ想像通り、真面目で実直なご回答…。ミッドナイト!と勝手に盛り上がっているワタクシママろばみたいに変にロマンやストーリーを盛らないところも説得力がありますね。これ以上加藤仁志さんらしい回答はない、というくらい仁志さんらしいです。素っ気ない職人気質、にとられてしまいそうな回答ですがとっても温和でやわらかい方なんですよ。きっととっても優しいお父さんなのでしょうね。想像がつきます。声を荒げる事なんてあるのかしら。。。仁志さん、ありがとうございました!

加藤仁志さんのページはコチラです。



2018-06-17 | Posted in Blog, 加藤仁志さん Hitoshi KatoNo Comments » 

 

Antique Blueアンティークブルー  ~沼田智也さんの”青の名前”~

儚く消え入るような淡い呉須。沼田さんの絵付けの魅力はこのはかなさと絵付けのユニークさにあると思っています。こんなブルー、現代の作品ではあまり出せない色味な気がして勝手にアンティークブルーと名付けていました。今回のBlue展でそう呼び始めたのではなく、実はかなり前からそう呼んでいました。店内にある沼田さんの作品についている説明に”Antique Blue”と書いてあるのですが、実際には年代物の作品ではありませんのでご容赦ください(笑)。作家さんは現役…というかパパろばと同い年、いたって健康。それが証拠に現代にしかありえない意匠をそこここに紛れこませてくるのです。今年の新作はオバケでしたがそのオバケも発展してすでにムンクの叫び化してきている様子。「世界の名画シリーズ、できそうじゃないですか?」と冷やかして笑っていましたがこの先どんな楽しい絵柄が飛び出してくるのか、楽しみでなりません。いちヌマタファンとしては、ずっとずっと追っかけ続けたい目が離せない存在です。それにしても「青のイメージで!」とお願いしたのに赤絵…確かに蒼、と書いてありますが…。さすがヌマタさん。違った意味でも目が離せません(笑)。

では、そんな青の名手沼田智也さん。The Blueというタイトルで企画展やります!とお誘いしたら、『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』て、映画が大好きで、いつか「陶芸界の チェット・ベイカー」と呼ばれたいなと思ってます、とふたつ返事(にしては長い返答だけど)で引き受けてくださっただけあって、相変わらずNo music, no life!な回答が返ってきました。

 


沼田智也さんの青の名前

Q1、好きな色は何色ですか?理由があればそれも教えてください。
–蒼、好きです。

  黒も好きです。

  赤も好きです。

  全ての色が好きです。

  No Reason…

 

 Q2、よく身に着けている色があれば教えてください。また、好きな異性に身に着けていて欲しい色があれば教えてください(〇〇色が似合う人に憧れる、など)。
–気が付けば、黒、藍など濃いめの明度の低い服ばかり。根暗だからですかね。笑
好きな異性に身に着けていて欲しい色は特にありません。その人らしければステキだと思います。汗

 

 Q3、青、と聞いて思い浮かぶのは何ですか?
–Kind of Blue  Miles Davis

  Born to be Blue  Chet Baker

  Summer time Blues  Blue Cheer

  未来は俺等の手の中 Tha Blue Herb

 

Q4、ご自分の作品の青を画像を見せずにどんな色か説明するとしたらどんな青だと表現しますか?
–淡い青ですかね。

  存在感の希薄な青。

  曖昧で不明瞭な青。

 

 Q5、Q4の作品の青はいつごろから作り始めた(使い始めた)のですか?またそのキッカケ、経緯を教えてください。
–染付は陶芸学校での授業が最初でした。違和感が多くて初めはすごく嫌でしたが、要望を受け制作を続けるうちに面白さや自分らしさを感じるようになっていった、というカンジです。

 

Q6、よくブルーな気分、などと言いますね。一般に憂鬱な気分を差すようですが憂鬱な時の気分転換法を教えてください。
–スポーツ!ゴールにシュートをぶち込む快感は至上の悦びです。意外と熱いストライカー気質なんです。

 

Q7、この世の中に『青』という言葉も『ブルー』という言葉も存在しないとします。あなたが色の名付け親です。あなたは、それを何色と呼ぶことにしますか?
–水色か空色ですかね?自然にあるものを名前にすると思います。

 


 

ありがとうございました!…でも、全然存在感希薄じゃないと思うんですけど、沼田さんのブルー。

沼田智也さんのアンティークブルーはコチラです。



2018-06-08 | Posted in Blog, 沼田智也さん Tomoya NumataNo Comments » 

 

Cobalt Blueコバルト・ブルー ~前田育子さんの”青の名前”~

これぞ瑠璃色!と言っておきながらコバルトブルーと名付けてしまった前田育子さんの鮮やかなブルー。色名を調べると瑠璃色とコバルトブルーは別物で、瑠璃色がその名の通り半貴石のラピスラズリ(=瑠璃)に由来すると書いてあるのを見つけたのです。これからご紹介する前田さんのアンケート回答を見てあっ!と思いました。これは瑠璃色、と呼んだ方がよかったかなと。でも、瑠璃色の英訳にあたるウルトラマリンブルーという響きが、どうにも好きになれないし作品を見てもどうもしっくりきません。いずれにせよ作家さんが自らの作品をそう呼んでいるわけではなく、わたくしママろばが勝手に命名しているだけなのだから最後までコバルト・ブルーで押し切ってしまおうと思います(笑)。

ろばの家では『層』シリーズでおなじみの前田育子さん。白磁と焼き締めをミルフィーユのように薄く何層にも重ねた断面を見せている作品はとてもユニークで、定番となっているナイフレストやお箸置きをはじめあれこれ集めているという方も多いようです。そんな前田さんに今回敢えてブルーの作品だけをお願いしたのは、昨年試験的に作ったというルリ釉の作品がとても素敵だったから。そしてそのお願いは大正解でした。届いた作品はどれも初めて見る形ばかりでしたが、ひとつひとつ個性あふれていて前田さんらしさがにじみ出ています。特に今回メインで届いた花器など、育ちゃんにしか作れないよ~というような独特の間を持つ形ばかりです。形が面白くて、色も痛快で…とここまで書いていたらやはりウルトラマリンブルー、の方がよかったもと思えてきました。。。むむむ。Wikipediaにもやや紫味を帯びた鮮やかな青と載っているし…。いやいや、迷いは禁物。前田さんのコバルトブルーの作品、ぜひじっくりとご覧ください!

ブレまくっているママろばの話はさておき、育子さんのブルーについてうかがいましょう。う~ん、フェルメールブルー…もよかったかな~(笑)。

 


~前田育子さんの青の名前~

Q1、好きな色は何色ですか?理由があればそれも教えてください。
–白 、ブルーグレー

Q2、よく身に着けている色があれば教えてください。
–白

Q3、青、と聞いて思い浮かぶのは何ですか?
–海、 空、 若い頃好んで身につけた色

Q4、ご自分の作品の青を画像を見せずにどんな色か説明するとしたらどんな青だと表現しますか?
–濃い 、深い青

Q5、Q4の作品の青はいつごろから作り始めた(使い始めた)のですか?またそのキッカケ、経緯を教えてください。
–何でしょうね…藍色に馴染んでると思うので、それを焼き物で表現できる魅力。布にはない光沢。土を覆う深さ。

Q6、よくブルーな気分、などと言いますね。一般に憂鬱な気分を差すようですが憂鬱な時の気分転換法を教えてください。
–散歩、映画を観る

Q7、この世の中に『青』という言葉も『ブルー』という言葉も存在しないとします。あなたが色の名付け親です。あなたは、それを何色と呼ぶことにしますか?
–フェルメール

 


前田育子さんは、生まれ育った北海道白老町発信の海を守るプロジェクトTairyo-Hugという大漁旗をリメイクするブランドも運営されています。当店でも豆財布が入ってくるとすぐに少なくなってしまうのですが、今回はTairyo-Hugnoの作品も出展してくださいました。そちらも随時ご紹介してゆきますのでお楽しみに。前田育子さん、ありがとうございました!

前田育子さんのページはコチラ




 

2018-06-08 | Posted in Blog, 前田育子さん Ikuko MaedaNo Comments » 

 

空、海、地球、宇宙、夜空、深い闇の色…名もない青。Blueブルーの名前。

Indigo Blue、Mid Night Blue、Antique Blue、そしてCobalt Blue。今回Blue展に参加してくださった、4人の陶作家さんの作品をディスプレイしているうち、その個性の違う青たちを自然とそう呼び分けていました。中村恵子さんのインディゴブルーはデニムのように洗いこんで擦れた青が重なって生まれた色。「限りなくブラックに近い真夜中のブルー」と、昔流行った小説のタイトルをもじって呼び続けているのは加藤仁志さんのミッドナイトブルー。前田育子さんの突き抜けるようなコバルト・ブルーは、これぞ瑠璃!というべき鮮やかで濁りのない南の島のような青。アンティークブルーという呼び名こそ沼田さんの古伊万里のような淡い染付を見て浮かんできた造語ですが、それぞれの青の名前は一般にも認知されている名称で絵の具の色などに使われています。こうして考えてみると青を表す名前は相当あって、もしかすると青ほど沢山の名前を持つ色はないかもしれません。

先述の小説、村上龍さんの『限りなく透明に近いブルー』を初めて読んだ時の衝撃。当時美大の受験生であった自分が日々作りためていたアクリル絵の具の混ぜ色に使う「アクアブルー」やら「ウルトラマリン」やら、日常生活では使わないような青の名前が沢山小説中に出てきたのを書き留めながら読んでいたことを思い出します。当時はかなり話題作と騒がれていたのに今となってはストーリーさえ思い出せません(村上さんごめんなさい)。それなのに、日々使わない色の名前だけは忘れないでいるのですから何が記憶に残るのかわからないものですね。はじめてブルーブラックという言葉を知ったのは確か中学生の時だったと思います。モンブランが出している万年筆用のインクの名称で、手紙を書くのにそのインクしか使わないと話す教師になりたての兄がカッコよく思えて、すぐに画材店に走ったのを覚えています。以来万年筆を使う時はブルーブラック一辺倒(笑)。そうやってわたくしママろばの中には少しずつ、青の名前の語彙が増えていったのです。

Blue=青という日本語の英訳であるはずなのに青と呼ぶのとはまた違った印象になるのも不思議で、好んでブルーという言葉を使っていました。アンニュイやクールという言葉とは程遠いガハハな性格である自分にとって、憧れのイメージだったのかもしれません。ブルーという言葉の響きが好きで、色そのものより響きに憧れて身に着けるものをブルーだけと決めて過ごしていた時代さえありました。「わたしブルーのシャツしか着ないの」という自分に酔いしれてブルー系のシャツだけを毎日着まわしていました。ブルーなら柄物も抱負で沢山選択肢があるので全く困らないですもんね。これが「あたし黄土色しか着ないのよ」とかだと結構困ったはずです。何年かつづけた挙句自分にそんな狭い縛りを課すこと自体がふとアホらしくなって、反動のようにピンクやオレンジなどヴィヴィッドな暖色の服を買いあさったり…。若いころ自らに決めるルールというのはホントひとりよがりで恥ずかしいものですね。まあ、そんな幼い自分もかわいいじゃないかと思える歳になりましたけれど。

あなたは、どんな色が好きですか?無限にあるブルーの中からただひとつのブルーを選ぶとき、あなたがそのブルーに与える名前は、なにブルーなのでしょう。

食卓で使ううつわには選ばれることが少なく感じてしまうブルーですが、ここに集まっているブルーたちはお野菜の緑も卵の黄色もトマトの赤も、そしてパスタやリゾットの白も、驚くほど鮮やかに引き立ててくれるテーブル馴染みのよい色ばかり。実際使ってみると、黒より映えて使いやすいと思えるほどです。そんなブルーのうつわたちを届けてくださった4人の作家さんに、ブルーについて、色について、簡単なコメントをいただきました。うつわを手に取りながらそのブルーがどんな人の手によって生まれてきたのか思いをめぐらせてみてください。

KOMOさんのLinnell Blue

前田育子さんのCobalt Blue

沼田智也さんのAntique Blue

中村恵子さんのIndigo Blue

加藤仁志さんのMidnight Blue

La RenonculeさんのNatural Blue

 

 

Linnell Blueリンネル・ブルー ~KOMO 岡詩子さんの”青の名前”~

「リネンってすごいんです。とても優れた性質の繊維で、機能性がバツグンなんです。繊維の表面がペクチンでコーティングされているから汚れが入りにくいし、ストロー状になっているからふわりと巻いて風を受ければ放熱してくれるのに、ぐるぐる巻くと今度は保温性もあって温かくて。リネンの繊維を発見した人はエライ!こんなに優れた繊維はありません。本当にすごすぎて好き過ぎて、それでこんなことやっちゃってるんです。」KOMOというリネンブランドを初めて6年。青森県鶴田からやってきた岡詩子さんの熱のこもった喋りに圧倒されるも、ちょっとびっくりするくらいの津軽なまりでついそちらにも気を取られてしまう。とてもお若そうですが、いまどきここまでなまっている人も少ないんじゃないかしら?と思うほど印象的なイントネーション。文字にしただけでは抑揚まで伝わらないのが残念です。でもほら、ご本人はこんなに可愛らしい人なんですよ(下の写真をご覧ください!)。可愛い人がなまっているなんて意外というのも偏見極まりない話ですが(笑)。

リネンは、麻のことではなくて、麻とよばれる植物のなかの一種だということをご存じでしたか?実はワタクシママろば、その事実を昨日詩子さんから聞いて初めて知ったのです。単純に麻=リネンだと思い込んでいました。でもよく考えると麻の英訳はHempヘンプ。麻というのは広く大麻草という名でよばれる植物の総称なのです。世界中で自生していて種類も多く、栽培されている品種だけでも20種以上もあるのだそう。つまり麻、大麻、大麻草、ヘンプ、マリファナは植物学的には全て同じもので、リネンというのはその中で亜麻科の一年草である亜麻のことを指す言葉だったのです。リネンは堅牢で丈夫な麻の中でも特に肌触りがよく、しなやかであるという特徴から高級衣類や寝装品用に珍重されてきた長い歴史があります。ランジェリーのランという言葉もリネンに由来していますし、ホテルでシーツなどを保管する部屋の事をリネン室、と呼びますよね?

お洋服のタグなどでリネンを100%と表示されているのを見ることがありますが、麻100%と表示されている場合でも必ずしもリネン100%とは限らないため、実際にリネンだけで作られた布を使っている場合には麻100%よりリネン100%と表示することが好まれるのです。ほんと、知らない事だらけです。会期中にろばの家に立ち寄ってくださった詩子さん。鏡の前でストールを試している方にお話している詩子さんを見ながら、わたしまで「へえ~~っ!」とビックリし通し。さらに昨日はストールの巻き方もレクチャーしてもらって、そこにいたお客さまと一緒に「さすが~」と盛り上がってしまいました。本当にあしらいが上手で、広げ方や左右の長さの調節などちょっとしたコツなのですが詩子さんに巻いてもらうと俄然形が決まるのです。ポイントはキレイに折り畳んで巻かない事、首回りに握りこぶし一個分くらいの余裕を持たせること、身体に密着する下側と顔周りにくる上側では上の方が広がるように整えること(=横から見た時に逆さの台形になるように)、左右の長さを揃えない事、先端はややすぼまるように最後にギュッと握って整えること、の5点。言われた通りにやってみると確かに印象が変わるのです。ストール巻くの苦手!というかた、ぜひ試着しにいらしてください。どんな風に整えたらよいか詩子さん直伝の技を伝授いたしますよ~。

「麻はお手入れも楽でただ一晩水につけておき、朝脱水してパンパンと伸ばしながら干すだけ。洗剤さえもいりません。わたしのストールは、特別なオシャレ着というのではなくて、忙しい朝玄関に置いてあるのをグワシッとつかんで家を出ながらグルグル無造作に巻くだけでとりあえずまとまる、そんな頼れるパートナー的存在だと思うんです。だから育てるストール。どんどん使い込んで肌に馴染ませて、自分好みの風合いに育ててやって欲しいんです。」リネンがあまりに好きで、もったいなくてもったいなくて端っこも切り落としたくない…との思いから耳まで全て残し、一本一本丁寧に糸を抜いて無縫製でもほどけにくいフリンジに仕上げています。巻いた時に白い縁とフリンジの糸部分が重なり合い、それが単色のストールの程よいアクセントに。表情が出やすくなってさらに縫い目が首にあたってチクチクすることもなく、よりやわらかで軽い質感にすることができました。上の写真はSarariシリーズで今回のBlue展のために出してくださった2色の新色のうち『朝つゆブルー』。Sarariシリーズは経糸と横糸で色を変えて織るシャンブレー生地。驚くほど軽くやわらかで目が詰まっていないため夏にも涼しくつけられます。風を通して涼しい、というのがよくわかる目の詰まっていないシャリシャリのガーゼ生地が涼しげです。

ほら、この方が詩子さん。か、かわいい…でしょう?写真はママろばが一目惚れして購入したフルサイズの育てるストールと同じターコイズブルー。同じ色のストールなのになんだか別物に見えるわあ。彼女色白というか真っ白だし。。。今回OnlineShopで使わせて頂いたお写真も自身のサイトで使用されているものをお借りしたのですが、モデルさんかと思っちゃいますよね。プロのカメラマンにお願いしたのかと聞くと「え?全部自撮りですよ~」と照れ笑い。ええ~~~??それまたビックリ!いやはや…。

さて、はじめてろばの家の企画展に参加していただいた詩子さんにも、答えていただきましたよ!ろばの家の行事恒例テーマ別アンケート!今回のテーマはもちろん、ブルー。青の名前、です。

 

Linnell Blue ~KOMO 岡詩子さんの~”青の名前”~

Q1、好きな色は何色ですか?理由があればそれも教えてください。
—透明。全ての色を含んでいると思うからです。

Q2、よく身に着けている色があれば教えてください。また、好きな異性に身に着けていて欲しい色があれば教えてください。
—白、黒、グレー、紺です。好きな異性に身につけて欲しい色は深い紺色です。

Q3、青、と聞いて思い浮かぶのは何ですか?
—朝の時間

Q4、ご自分の作品の青を画像を見せずにどんな色か説明するとしたらどんな青だと表現しますか?
—いろんな色がありますのでとても難しいですが、全てに共通している説明は心の背筋が伸びる色、でしょうか。

Q5、Q4の作品の青はいつごろから作り始めた(使い始めた)のですか?またそのキッカケ、経緯を教えてください。
–約6年前の、ストールを作り始めた最初のころからです。ストールは、お客様のリクエストから作りはじめたのですが、サンドベージュやインディゴ、カーキなど、ベーシックなカラーが多かったのできれいな明るい色を入れてみたいと思ったのがキッカケでした。
また、「冬リネン」と称し、夏のイメージの強いリネンですが実は生地が重なると保温性が高くなるという性質を生かしたストールを作る中で、冬はあまり使われない寒色系の色をあえて取り入れたいと思ったのも要因の一つです。

 

Q6、よくブルーな気分、などと言いますね。一般に憂鬱な気分を差すようですが憂鬱な時の気分転換法を教えてください。
—好きな人たちと仕事をします。

Q7、この世の中に『青』という言葉も『ブルー』という言葉も存在しないとします。あなたが色の名付け親です。あなたは、それを何色と呼ぶことにしますか?
—朝の空気色


詩子さん、ありがとうございました!ワタクシママろばも背筋をピン!と伸ばしてターコイズブルーのストールを素敵に着こなせるようがんばります!

●KOMOさんのリネン100%のストールはこちらです。

*KOMOさんのHPではすべてのストールが受注生産となっていますが、現在ろばの家に届いているものに関してすぐに発送可能です。また在庫のないものでも、受注生産という形でご予約していただければお届け可能です。ページ最下部にございますお問い合わせのフォームよりご質問・ご予約内容などお送りください。
KOMOさんHPはコチラ。

一番下の写真は会期がはじまってすぐ青森からかけつけてくださった岡詩子さん。自作の青いリネンのワンピースに古着の着物を羽織って颯爽と現われました。リネンが好きで好きでたまらない、お話しているとそれがビシビシ伝わってきます。

 

 

2018-06-07 | Posted in BlogNo Comments » 

 

お庭の花でBlue Green Bouquet レノンキュールさんWS&出張販売

『Blue』麻と花、うつわで楽しむブルー展会期中に、お花のワークショップを行います。昨日からはじまったこの企画、ろばの家に今飾られているのは全てラ・レノンキュールの松澤藍さんがご自宅で無農薬で育てているお花やハーブたち。あじさいに千鳥草、矢車草やブルーミントキャット、淡いブルーから鮮やかな青紫、そしてハーブの濃いグリーン…。La Renonculuラ・レノンキュールの松澤藍さんが丁寧にお世話をして育てているお花とハーブを使ってブルーグリーンのミニブーケを作ります。その日は生花の販売もするので、ろばの家が一日お花屋さんに変身ですよ~。ワークショップは予約制となっておりますのでお早めにお申し込みください。


Blue Green Bouquet Work Shop

6/10 Sun.14:00 ~(2時間程度 )  3時のおやつ & お飲物つき。お一人様2500円(税込)
* お花の移動販売は12:00 ~なくなり次第終了

ラ・レノンキュールさんによるワークショップ。
ハーブとブルー系のお花をアレンジしてミニブーケを作ります。
ラッピングのコツも教えていただけるのでご自分でお庭や原っぱの花を摘んでちょっとしたプレゼントにアレンジする時の参考になりますよ。
出来上がったブーケはラッピングしてお持ち帰りいただけます。

*ご予約は直接ろばの家までお電話かメールでお願い致します。
ろばの家 Tel 050-3512-0605  Mail  atelierhitokaze@gmail.com


 

2018-06-02 | Posted in BlogNo Comments » 

 

Blue~麻と花、うつわを楽しむ~ 6月1日よりはじまります。


6月の行事のお知らせです。「雨や曇りの多くなるこれからの季節、青いモノやお花に囲まれて気分をリフレッシュしましょう」という爽やかで前向きなテーマなのですが、憂鬱な気分や沈んだ気持ちを表すのにもつかわれるブルーという言葉。青いモノでブルーな気分を晴らしましょうというなんだか矛盾した言葉遊びにもなってしまいそうです。ブルーな気分って、そんなに悪い気分じゃなさそうに聞こえるのは、わたくしママろばだけかしら?青にもいろいろありまして、と語りだすとまた長くなってしまいそうなので…。

今週金曜日、6月1日スタートです。青いろばの家、お楽しみに!


麻と花、うつわを楽しむ『Blue』

2018年6月1日(金)~17日(日) *会期中は12:00 ~18:00open  会期中も月・火曜日はお休みいたします。
 
参加作家(敬称略):加藤仁志、中村恵子、前田育子、沼田智也、Komo(リネンストール)、La Renoncule(花)
 
ミッドナイトブルー、インディゴ、淡く消入りそうなアンティークブルー。曇りがちの毎日を爽やかに彩るうつわや一輪挿し、小物などが集まります。
今回は、青森より国産リネンで無縫製のストールをつくるKomoさん、無農薬のお花を広めるため小さな活動をつづけるLa Renonculeさんにも参加していただき、ろばの家でBlueのグラデーションを楽しみます。
 
 

Blue Green Bouquet Work Shop & 移動販売

2/10 Sun.14:00 ~(2時間程度 )  *お花の移動販売は12:00 ~
ラ・レノンキュールさんによるワークショップ。ハーブとブルーのお花をアレンジしてミニブーケを作ります。出来上がったブーケはラッピングしてお持帰りいただけます(WSは予約制)。
3時のおやつ & お飲物つき。お一人様2500円(税込) *ご予約は直接ろばの家までお電話かメールで。
 
 

 

完熟果実のもぎたての瞬間と、それ以上の味わいを…。レモンの次はオレンジです!

この男はすごい。本当にすごい。昨年の冬来日した時に”できすぎ君”と命名。だって本当にすごすぎるんだもの。世に送り出すものが全て何から何まで、味はもちろんコンセプトからパッケージにいたるまでいちいち出来すぎ、圧巻のクオリティー。何もかも超一流なのです。一流というのは同カテゴリー内の他者と比較して使う言葉だから、一流では不十分。超一流でも言い足りない。既存のカテゴリーに対する概念をあっさり塗り替えられてしまう。やることなすこと全てにおいて。チョコレートの常識、キャンディーの常識、シチリアの伝統菓子の常識。いや、彼が塗り替えたのはお菓子の概念・常識だけではありません。嗜好品というものの位置づけを足元から、立ち位置から問い正してくる。それが”できすぎ君”、シモーネ・サバイーニ。シチリア島のチョコレートメーカーSabadiサバディをつくった張本人です。ここ最近繰り返し唱えている「本当に美味しいものは身体に負担をかけない」というテーマが三度三度の食事だけでなくお菓子、嗜好品にも当てはまるのだということをSabadi以上に体現している存在がこの世にあるのでしょうか。そしてその事をかみ砕いて説明してくれたような商品が、リモナータ・マドレだったのです。最初はじわじわと、そのすごさに気が付いた人から人へと口コミで広がり、ワッと拡散し出した時にはすでに遅し。入荷して2ヶ月ほどで大瓶が完売してしまっていた、レモネードの素。いくら素とは言っても1リットル4千円近くする果汁です。決してお安い嗜好品ではありません。でも、ワインに比べたらカワイイものですよね?今年の4月イタリア一規模の大きいワインの見本市Vinitalyヴィーニタリー会場にもつら~っとブースを出したシモーネは突如グロッサリー部門で特別賞を受賞。というよりはこの商品のために賞をつくらざるを得ない程話題になってしまった、というのが実情でしょう。それを自身のSNSにハッシュタグをつけて「#コカ・コーラ社も震えだす」だなんておちょくってしまう。こうまで鮮やかに既存のマーケットを一蹴するようなレベルの商品を差し出してしまう彼は、商品コンセプトについて事もなげにこう説明するのです。「自分の飲みたいものを作っただけだよ。だって、誰も作ってくれないから。」…あっそ…そうですか!…アタマがキレすぎて、センスが良すぎて、紳士的すぎて、商才までありすぎて…きい~~~!何度も書いていますがもう、憎たらしくなるくらいです。

ナチュラル・ファ〇タとか、ナチュラルオ〇ンジーナとか、それこそ大手企業から文句を言われてしまいそうなあだ名で呼ばれているこの炭酸ジュースの素。昨年ワイン輸入会社のヴィナイオータさん主催の生産者来日イベント、ヴィナイオッティマーナでお披露目した際の会場のざわつきぶりは以前ご説明した通りです。錚々たるメンバーのワインを難しい顔でテイスティングしていたソムリエさんたちがこのオレンジ炭酸飲料を飲んで度肝を抜かれ立ち止まっている場面を、ただニコニコと静かに見守るシモーネ。彼は何だってわかっているんです。この、樹になっている果物をただギュッと絞って、最小限の量のきび砂糖を溶かし瓶ごと煮沸しただけというジュースが一般の人々にどれほどの衝撃を与える味わいであるかを。その未知の液体を前に飲料のプロフェッショナルともいえるソムリエたちが「こ、これなんなんですか?無茶苦茶美味しいんですけど」と慌てふためく姿も。全部想定内なのです。チョコレートの原材料、カカオも、そして時にはカカオと同じほどの量も使われている砂糖も、ともに農産物であるという大切な、けれどもまだ誰もフォーカスしていなかった事実をわたしたちに気付かせてくれたサバディのチョコレート。初めて食べた時の衝撃は今でも忘れられません。でも、その時とまったく同じ驚きをこのジュースが与えてくれたのです。果汁に砂糖を足して、炭酸水で割っただけのノンアルコール飲料が!彼は口に入れるどんな食物も厳選しているはずなのですが、そのセレクト基準のもっともゆるいガイドラインが「身体に良い」なのです。「身体に悪くない」という理由だけを根拠に売られている無添加のビオ・コーラやビオなんちゃらジュースとの決定的な違いはそこなのです。その違いの、なんと大きいことでしょう…。だから彼のジュースは、どんなに鮮烈な味わいで果実味がとてつもなく濃厚であっても、飲んだ後喉が乾くということがない。サバディのすべてのチョコレートが、一枚食べきったとしても胸焼けなどすることがないように。カカオに限らず栄養素を損なわないよう可能な限り最低限の加工に留めるという行為はつまりそのまま、風味を損なわないということでもあるです。風味を損なわない…って、美味しい完熟果実の?出来すぎ君シモーネが、そんなレベルで満足できると思いますか?彼が再現しようという味は、自宅のキッチンで朝搾りたての柑橘で作る、あの、幸福な瞬間そのものなのです。美しいモディカの町並みを見下ろすテラスで、今送っている自分の人生はヴァカンスそのものだと満足げにデッキチェアで脚を組む、その瞬間にグラスの中にあるべき飲み物の味わいなのです。彼が愛してやまないシチリアという、人間がまだ人間らしく暮らしている最後の楽園。その楽園に広がる柑橘畑の中に立ち、樹から直接もぎ取って齧るレモンやオレンジそのままの鮮烈な風味を、瓶に閉じ込めようというのです。

「世の中に自分が満足できる品質のものがなかったら、作るしかないだろう?」自宅でいつも自分が飲んでいたような、搾りたての柑橘ジュース。その日の気分や体調で、炭酸の強さも好みに調整できて。こうまで徹底して風味にこだわるのなら最後まで仕上げて瓶詰してしまえばいいと思うでしょうが、薄めるということは酸度が下がり保存性が低くなるということです。炭酸飲料として商品化するためには、添加物が必要になってしまう。「それにさ」シモーネはまた、微笑みながら付け加えるのです。「自分で作るってところがイイと思うんだよね。自分でピッチャーかなんかに作ってさ、それをこうシュワ~ってグラスに注いでる感じとかさ、なんか良くない?」…なんか良くない、じゃないよ~もう。なんかママろば、無駄に怒ってばっかり(笑)。でもほんと、癪なんです。レストランの人たちの間でも取り合いになっちゃって、入荷前に予約入れておいたのにも関わらずあんまり分けてもらえなくなっちゃったし!そうやって、次々に注目集めてばかりで、次は何をやろうって言うの?本当に、本当にコカ・〇ーラに代わる(という言葉は適切ではないにせよ、一応)飲み物まで作ってみちゃう気でいるらしいよ、だなんて話も聞こえてきているし…。

皆さんも、シモーネが次はどこへゆくのか、何をやらかそうとしているのか、楽しみになってきちゃうでしょう?ワタクシままろばなんで、若干ストーカーか?と自分でも情けなくなるくらい彼の言動が気になってしまって…。まあとにかくは、今回入ってきたオレンジスカッシュの素(その商品にこうまでそぐわないチャチな名前もあるものか、と悲しくなるけど他にいい日本語がないので)で、またもややられちゃってください。手始めに、これまた出来すぎな『How to make Aranciata Madre』という『オレンジスカッシュの作り方(笑)』ビデオをご覧ください。サバディのHPに掲載されているものです。今すぐ飲みたくなったら、負けってことです。ワタクシはあっさり負けてしまいましたけどね。またしてもシモーネの勝ち、かあ…。

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