バターナイフを使うというシアワセ。左利きのひとにも快適さを。

バターナイフ、お持ちですか?え?そもそもパンにバターを塗る習慣がないので使わない?パテやスプレッドなど塩味のものも食べない?え?スプーンで代用できるからいい?

バターナイフを愛用する方ならわかると思いますが”スプーンでパンにバターを塗る”という行為と”バターナイフでパンにバターを塗る”という行為の間には、スプーンとナイフの形状的差異から想像する違いをはるかに上回る、大きな隔たりがあるのです。スプーンの裏側を使ってもバターがくっついて離れず、パンくずがまとわりついたバターがパンの上を転がるだけで一向にパンの方にくっついてくれない、あの不快感。些細なことのようですが、バターナイフを使い慣れた人がいくつもナイフを集めてしまう気持ち、よくわかります。

似たような関係に、マドラー、という存在があります。マドラーを使う行為とスプーンの柄などで代用する行為の間にある、マットレスくらいの分厚い隔たり。あれ?大した隔たりに思えない?確かにね、スプーンの柄でも問題なく混ぜられるのですが、案外氷が動かなかったりして思うようには混ざらないものです。あの、抵抗の少ないマドラー、端っこにマルぽっちがついているだけであとはただの棒にしか見えないような、あのマドラーという存在と、バターナイフという存在が持つ快適さには、共通するものがあると思うのですがいかがでしょうか?

それはもう、便利、不便という実用の問題ではありません。どちらかといえば心の問題、気持ちがよいかよくないか。まあ言ってしまえば、気の持ちよう。つまり、気にしないひとにはどうでもいい違い。ほんとのほんとのところ、なくても何ら不便なく暮らせる程度の差なのかもしれません。それでも、バターナイフでバターを塗るという行為が象徴する優雅さは、一度体験してしまうとスプーンで代用してしまうなんて野暮なことができなくなってしまう優越感を与えてくれます。

同じようにこれは優雅だなあと悦に入れる道具としては、ペーパーナイフという代物があります。ただ、ペーパーナイフでレターの封を切るという行為と、ベリベリッと手で無理矢理封筒を破ってしまう、野暮というよりすでに野蛮な行為との間に横たわる、足がすくむほど深い断崖絶壁の底で轟く濁流に比べたら、バターナイフとスプーンの間の隔たりなんて一歳児でも水遊びできる小川くらいのもんだ、という気すらしてきます。手の届くところに見当たらなければ、まあ、ワタシもスプーンの裏側で代用してしまったりするわけですから、はい。せめて、封書はハサミで切りましょうね。大事な請求書とか、一緒に破れたりしちゃいますからね。

バターナイフの持つ優雅性について語っていたら、とても宮下敬史さんのバターナイフの魅力にまでたどり着けないのでこのあたりにしておいて、さっさとナイフにうつりましょう。またまた進化した、新しいカタチのバターナイフが登場です。宮下さんはよく、ブラッシュアップという言葉を使います。あの定番展でおしゃもじについて語った時の「これが定番と決めてしまわず改良を繰り返すのが僕の定番です」という名言通り、納品されるたびに少しずつ形が変化しているのです。

ただ、今回の進化はブラッシュアップとは違いますよ。新プロトタイプが生まれたのです。両きき用バターナイフ。つまり、左利きでも使いやすい形のナイフが生まれました。下の画像、左がナイフ部分だけがわずかにコンパクトなSサイズタイプ。右がSサイズよりナイフ部分が少し大きいタイプに、今回新しく加わった両きき用タイプ。Sサイズも従来タイプもナイフの刃の部分の厚みを両側から均等に削って薄さを出しているため、塗る際にナイフの両面で往復できる、という意味で左利きでも使えました。けれどナイフのカーブや形状的にはやはり右利きの人の方が使いやすい。右の新しく出たタイプはナイフの刃の厚みの中心が柄の中心線の延長上にあるため、どちらの手で持っても使いやすい構造になっています。かといって、右利きのひとが使いにくいかというとそんなことはなく、それゆえ両きき用として作っているのです。Sサイズタイプのデザインはナイフ部分と柄の部分で段差がある構造になっているため、グッと力を入れた時ナイフがその力を受けやすい形です。パテなどバターより密度のあるものを塗りたい時には、やはり頼りになる形、という感覚があります。

バターナイフだけではなく、スプーンやおしゃもじなど宮下さんのカトラリーは、この数年見させていただいている短い年月の間に一足とびに洗練を極めている印象があり、毎回手に取らせていただく度、使ってみるのがとても楽しみです。

バターナイフは一番最初に手創り市で購入させて頂いた思い出の作品でもあり、使い込んでずいぶん艶がでてきました。バターに使っていると油分が自然に浸み込んでゆくので、特別お手入れをする必要がありません。下の画像のナイフ2本は同じ山桜の材ですが、右のものは3年以上使い込んで色も濃くなり、艶も出てきました。ナイフについたバターをペーパーなどで拭ってから洗っているのですが、その際エイッと柄の部分までバターを伸ばしてしまいます。鈍い艶を放つようになるまで毎日使い込んで、自分だけのバターナイフを育ててください。

つるつると滑らかな木肌の、自分の手にしっくりなじむナイフで焼きたてのトーストにバターをこんもりと塗る、この満足感をシアワセと呼ばずして何と呼ぼうか。

宮下敬史さんのバターナイフ2種を『Pane felice シアワセのパン』Online ページに掲載いたしました。


 

 

 

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