沼田智也さんの静かで温かな世界を。

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 茨城の南仏、高萩市に沼田智也さんを訪ねて
第1話「捕ったで~~~~!!」

こんにちは。ろばの家のママろばです。

先週のお休みに、茨城の南仏、高萩に行ってきました。この「茨城の南仏」というフレーズは今後も幾度となく登場することになりますが、そう呼んでいるのはうちのパパろばだけです。すいません。高速から望む海と山の風景が、南仏を思わせたのだそうで。。。。(笑)内輪ではすっかり高萩の枕詞のようになってしまい、なんと沼田さん自身もときどき使ってくださっているほどですが。

さて、沼田智也さん、です。

 高萩市へは、沼田さんの工房を訪問してきました。とてもとても素敵な訪問となりました。工房で直接お話ししながら選ばせていただいた器たちが入荷したのですが、今日はそのうつわたちについてではなく、沼田さんという人のご紹介になってしまいました。

うつわ自体は、どれもスタンダードな形ばかりで、Theそばちょこ、The小皿、The飯椀、的ニュートラルな、けれども普遍的に使いやすい、時間の洗礼を受けて徐々に枝葉を取り払われ、たどり着いた先であるとでも言いたげなシンプルさなのですが、そこに生彩を放っているのは、明らかに彼の筆であり、彼の筆を通して描かれているのは、彼が世界をどうみているか、に他ならず。。。

彼のうつわを使う人は、きっと彼のその世界観に引き込まれている、もしくは徐々に引き込まれていくような気がしてならないのです。わたしが、彼と話していて感じたその世界を見る目の優しさや親しさを、彼のうつわを使う人にも知っていただきたくて。。。ちょっと思い入れが激しすぎて、ご紹介文が長くなってしまったのですが、どうか最後までお付き合いくださいね!

茨城の南仏、高萩に沼田智也さんを訪ねて。。。

第一話:「捕ったで~~~~!」

「これ、下書きなしで彫るんですか?直接、えいやって?」
思わず声が大きくなってしまいました。

鷹なのか鷲なのか、羽を広げた鳥の大陸的な絵柄や、後光が差しているような光の動きを感じさせる大輪の花。鉢の中から、いくつものお話が飛び出してくるような気がしてしまうのは、メインのモチーフを取り囲むようにして隙間を埋めている、細かい装飾のひとつひとつが生き生きとした筆の勢いを残しているから、なのかな。でもこれ、筆で描かれているのではなく、彫り模様なんです。かき落としという技法で、白い化粧土をかけてから掘りをほどこし、下地の赤土と残った部分の白とのコントラストが模様となって浮かび上がる。とても時間がかかるので、展覧会などで予定がつまっている時にはできない仕事なのだそう。今まで見せてもらっていた染付のうつわに描かれた精緻な模様も、すべてフリーハンドと聞いてはいたのだけれど、この彫り模様まで一発勝負ときいて、誰もがするであろう質問をお約束のように…。

「じゃ、失敗したらどうなるんですか?」

「終了です。」

「ええ~~~??修正液のようにちょいちょいと化粧土で隠して掘り直したりできないんですか?」

「ダメですね。一度乾いてしまうと後から足した部分とは収縮率も変わるので、焼きあがると必ずわかってしまいます」

ううう~~~ん。

「だからもう、こういう仕事にかかる時は、アスリート的な集中力です。究極まで研ぎ澄ませてます」

古い蔵を自分で改装した工房。ろくろや削りに使っているこのスペースは、最近完成したばかり。蔵なのでもともと窓はなかったところを、小さな明かりとりの窓をあけ、昔のくぐもったガラスがはめ込まれています。

「あまり直射日光もよくないのだけれど、ずっとこもって仕事をしているとさすがに刑務所みたいに息苦しくなりそうで。。。」

 hp-numatasan-koubou壁や棚も全て手作り。見事な古い湾曲した梁などはそのまま残し、墨を混ぜた漆喰で塗った黒い壁にライトがひとつ。吊された花器をぼうっと浮かび上がらせて、工房とは言ってもギャラリーのような雰囲気です。ろくろで成形した後は、乾燥との戦い。湿度をどう調整するかで、削りの作業までの時間を短縮したり、逆に引き延ばしたり。棚はぴったりとカーテンで覆えるように設計して、その調整が劇的に楽になった、と教えてくれました。自分で作った工房は、物理的にも、精神的な面からも作業効率を上げているんだろうなあ。

 

「静かですね~。確かにこれは集中できそう」
パパろばが、羨ましそ~うにキョロキョロ工房を見回します。

「僕には、ちょうどいいんです。こういう何にもない田舎で、一人作業に没頭して、気が向けば東京まで出ていくこともできて。益子や笠間のように作家さん同士の交流はないけれど、逆にしがらみもないし。誰かに会いたくなったら、自分が出ていけばいい。」
静かに笑う沼田さん。

高萩市。茨城県北部の、福島よりの海辺の町。初めて訪れましたが、海がとても美しく、わたしもパパろばもテンション上がりまくりです。パパろばなど、高速で高萩に入ってすぐ現れた光景に「南仏みたいだあ」を連発。工房のある場所は高速を降りてすぐの山寄りの場所。町の中心地はもっと海の近くです。海岸まで下るのに車で10分程度。美味しいお魚を食べにお昼に中心地の食堂まで出かけ、その近さにびっくり。海と山との距離が近く、工房まで戻ると潮の香りは消えて、空気もすうっと一段冷たいのです。

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「海、見ていきます?」

多分、高萩を訪れる人みんなに見せているんでしょう?と聞くとにっこりうなずいて、引き潮の砂浜をどんどん歩いていく。「よくこの上から波を眺めてました。」という岩山に登り、ざぶんと岩に砕ける波しぶきや、遠くに見える海岸線、絶壁に点々とはりつく「鵜」などを指さし、あれこれ教えてくれました。

鮎も上がるほどの澄んだ川では、手づかみで魚を捕えていたこと。捕ったその場で焼いて食べる魚の美味しさ。大きな鮭を捕えて自慢げに家に持って帰ったらおこられて、川に戻してあげたこと。毎日毎日、自転車で海や川に通い、魚やウニを捕るのにもぐって遊んでいたこと。

「むっちゃ美味しいんですよ。」

ニコニコと嬉しそうに語るその姿が、真っ黒に日焼けした、沼田少年の姿に重なります。「捕ったで~~~!!」と、大きな鮭を両手に抱え、大慌てで駈けてくる、沼田少年。キラキラしていて、想像するだけで目を細めてしまう。海で、山で、高萩の大自然の中で毎日手に触れ、臭いを吸いこみ、慣れ親しんだ草花や動物たち。沼田さんの原風景的モチーフになっているのかな、なんて勝手に想像が膨らみます。

自然の中の、すべての動植物が、生き生きと魅力的なモチーフになりえるんじゃないか。黙ってスケッチしていただけでは表現しきれない、自然物への慈しみというか愛着というか、沼田さんには、その小さな存在たちのすべてがキラキラ輝いて見えているんじゃないだろうか。あの静かな薄藍の絵付けを眺めていただけでは感じられなかった憧憬が、高萩の海辺で笑う沼田さんを前にして、一気に押し寄せてきました。

小皿の中の蟹が、笑います。群れをなした鳥が、羽ばたいていきます。そうした模様のすべてが、この、沼田少年の手から生み出されたと思うと、やっぱりとても、羨ましい。

「捕ったで~~~~~!!!!」

真っ黒な沼田少年に魅了されて、すっかり文章が長くなってしまい、本題にまでは入れませんでした。まあ、この部分もわたしにとっては本題みたいなものなのですが。。。次回、この続きの

第2話「空気のように自然な文様でありたい」

をお届けします!!お楽しみに~~~~(してくださる方がいるといいな。。。)。

 

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